18話 駆け引き
「あー超やべー、ダーツ超盛り上がったぜ!」
「それは何よりだが、藤田は騒ぎ過ぎだ。投げ方も毎回変だったし」
目隠し・股下・走り幅跳びっぽく助走して投げたりで本当に騒がしい奴だった。肩に手を添えても(引け)全然止まらなかったからなぁ。
「悪ぃ悪ぃ。けど悔しいぜ! 七瀬さんのスコア超えたらメアド交換だったのに!」
「そんな条件交わしたんですか?」
片付け中の七瀬さんに尋ねたら、さもありなんといった表情が返ってくる。
「勝負は賭けた方が面白いじゃないか。もし私のスコアを超えたら、お姉さんの秘密を隅から隅まで教えてあげたのだが……、残念だったな」
「くぁーーーーー、ちくしょーーめ!」
「いや、お前は最初から最後まで変な投げ方だっただろ」
1時間半でカウント・アップが3回行われ、結果は七瀬さんの圧勝、藤田は断トツの最下位に終わっている。俺は総合3位に終わったけど、初心者なのにポンポン高得点を出しまくった大輔に負けたのが地味に悔しい。
「それと市ヶ谷君だったな。君との勝負は面白かった。どちらも私の圧勝だったがな」
「やっぱり2戦目からクリケット感覚でやってたんですね」
「ずっと独走は味気ないからな。君が私の意図に気付いてオープンさせた番号をクローズしてきた時は、ついニヤけてしまったよ」
クリケットは15~20・ブルのみがターゲットの陣取りゲームで、コントロールがなければゲームが成り立たない上級者向けのルールである。この意図に気付いて乱入してみたのだが、俺の命中率は50%・七瀬さんは90%を超えていたので、惨敗でした。
ダーツの腕もだけど、底が見えない人だなぁ。
「んっ? クリケット? ヨーロッパの野球か?」
「みんなが楽しめて良かったって事だ。撤収準備も終わったし、延長料金を取られる前に会計を済ませよう。藤田は幹事なんだから先導先導」
「お、おう! みんな俺に続けっ!」
知っている人にしか伝わらない会話を続けるのは御法度なので、話を打ち切ってから受付で会計も終わったので、これで合コン終了だ。大輔はずっと田中・中田さんに絡まれてタジタジだったけど、ちゃんと盛り上がっていたし上々の結果だろう。
「すまない、飲み物を買うからちょっと待っていてくれ」
「あっ、私も買う」
七瀬さん意見に神岸さんが賛同して2人が自販機に向かい、それを見た大輔も続いて500円を自販機に入れてからこちらを向いて。
「真守はどれがいい? 田中さん、中田さんも選んでいいよ」
「えっ? いいのか…
「佐藤君優しい!」「すっごい嬉しい!」
おおう、俺の台詞が遮断されて2人が大輔に超接近だ!
「その、真守がずっと進行してくれたお蔭で楽しめたから、そのお礼に。それに僕達のチームがスコア上だったし、ご褒美という事で」
「ありがとう佐藤君! やっぱりイケメンって最高!」
「もしかして本気? 本気なの?」
「えっ? ええっ!?」
すげぇ、俺に奢るついでに田中・中田さんにもって言葉だったのに、イケメンは目の前で起こった事実すら捻じ曲げてしまうのか。最早どの選択肢を選ぼうが必ずトゥルーエンド直行のヌルゲー状態だ。俺達は1つでも間違えれば即バッドエンドの糞ゲー設定なのに。
「ふっ、2人ともくっ付き過ぎだよ。あっ、あたってるから」
「そんな事ないです。それに田中じゃなくて奏多って呼んで下さい」
「私も高菜でいいよ。あと、何があたってるの? 教えて教えて~」
もう嫉妬するのも馬鹿らしいレベルのラブラブっぷりだ。
俺も女の子に奢ったらこうなるのか?
いやでもこれが俗に言う〝ただしイケメンに限る〟という事象と結論付けていたら、藤田が七瀬さん達の方へ向かっていき。
「うぉっほん! 2人の健闘を称えて、俺も奢りますよ」(ドヤ顔)
そんな二番煎じな行為に、七瀬さんと神岸さんは。
「すまない。気持ちは嬉しいが、私達はもう買ってしまったから」
「ご、ごめんなさい」
申し訳なさそうに謝られてしまい、すぐ横で大輔がイチャイチャしている光景を見てから、明後日の方向に視線を移して。
「ちくしょーーめーーーーーーーーーーっっっ!」
悲しいなぁ。
◇ ◇ ◇
それから女子全員がお手洗いに行ってしまったので、ついでに俺も済まそうとしたら、神妙な顔付きになった藤田が腕を掴んできた。
「むこうは作戦会議みたいだし、こっちもしようぜ」
「えっ? ……あー、これが噂の女子トイレ会議か。本当にやってるんだ」
「ああ、俺達男子には知る由がないが、服装や年収がどうとか、きっと無慈悲でドロドロな格付けをしているに違いないぜ!」
いや、学校帰りだからみんな制服だし、年収も学生だから全員0円では?
「それに今回の合コン、失敗だったな」
「あれ、みんなダーツ楽しそうだったけど、駄目だった? 大輔はどうだった?」
「とっても面白かったよ」
そんな反応に対して、藤田が溜息交じりに首を振ってくる。
「お前ら勘違いしてないか? これはお遊びじゃなくて合コンだぜ。どんなに盛り上がろうが女子の連絡先をGETできなきゃ負けなんだよ!」
「あー、そういう事ね」
藤田は七瀬さんの連絡先をGETできず、俺はみんながダーツを楽しんでもらう為、フォロー役に徹していたからなぁ。
「そういえば下野はどうだった? というか、何で落ち込んでるの?」
終始ぎこちない様子だったけど、下野は神岸さんと一緒にいる場面が多くて、大人しいキャラ同士で気が合うのかなーと見守っていたんだけど。
「…………………………怒ってない」
「えっ?」
「…………………………笑顔で話した筈なのに『怒ってるの?』って心配された」
おおう、かける言葉が見つからない。多分緊張し過ぎて、顔が強張ってしまったのだろう。現在進行形で今は話し掛けないでくれオーラが駄々漏れだし、そっとしておこう。
「あと佐藤、お前モテモテだったのに連絡先交換してないだろ。何やってんだよ!」
「えっ? 交換ならしたよ」
「そうそう、それじゃイケメンの持ち腐……、ってマジかよ! ダーツ中に交換してる場面なかったけど!」
大輔はずーっと田中・中田さんとベッタリだったけど、同じチームだった俺も連絡先交換をしている様子は確認できなかった。強がりを言う奴じゃないし、一体いつの間に?
「ダーツ中じゃなくて駅前で合流した直後だよ。ここに付くまでの移動中に交換したんだ」
そう言って田中・中田さんの連絡先であろう2枚のメモ用紙を見せられ、藤田の膝が崩れ落ちちゃいました。
「馬鹿な。合コンが始まる前から、勝利していたというのか!」
もはやチートだ。
合コンは本来、短い時間内にあらゆる努力とテクニックを駆使して相手との距離を詰めていくものと聞いていたが、イケメンにそんな小細工は不要らしい。
「てゆーか何でメモ用紙? 通信の方が楽だろ」
「昨日はスマホゲーム中に寝落ちしちゃって、バッテリー切れって言ったらメモをくれて」
「貴様ぁ! 合コンでその失態、給食のカレーを廊下にぶちまけるレベルの失態だぞ! あの罪悪感は半端ねーんだからな!」
「ええっ!? でも僕、今日は合コンする予定じゃなかったし」
「うるせぇ! 俺だって、俺だって頑張ったんだぞ! あの時は死ぬ程謝ったんだぞ!」
「落ち着け藤田っ、気持ちは分かるが納得しろ! 世界は平等にはできてないんだよ! それとカレーの件は忘れろ!」
「ぐっ、あう、……………すまん、つい取り乱して昔のトラウマまで出ちまったぜ。助っ人として呼んだのに悪かった」
「う、ううん。僕の方も、何かごめんね」
戦況を振り返ってみた結果、確かに合コンという視点から見れば藤田の言う通り、俺達は失敗したらしい。(※ただしイケメンは除く)
「とにかく女子が戻ったら駄目元で2次会提案すっぞ! そんで駄目なら撤退な」
「あれ? 意外と謙虚な姿勢だな」
土下座してでも2次会させて下さいって感じになるかと思ったのに。
そんな反応をしたら、悟り顔になった藤田が悲しそうに答えてくる。
「無理矢理は駄目なんだよ。こう、遜り過ぎれば見下されるというか、変な壁ができて、どれだけ攻め続けてもなんの成果も得られませんでした状態になっちまう。そのせいで俺達は傷付き、奴とはリベンジを誓ったのに、ドタキャンされちまった」
どうやら前の合コンでガッツリ貪られたらしい。
「藤田、このまま解散になったら、帰りにラーメン食おうな。駅前にいい店あるから」
「ああ、今日の塩ラーメンは、喉に沁みそうだ」
いや、あの店はとんこつ専門店なのだが……、まあいっか。
そんな俺達の残念な戦況報告の途中で女子達が戻って来たのだが。
「折角だし、これから一緒に食事しない?」
「よっしぁあああああああああ! これで男盛りラーメンとおさらばだぜ!」
まさかの第二ラウンド決定しちゃいました。




