17話 ダーツ大会
山桜高校とフェイリス女学院の区間内で遊べる場所という条件で探した結果、駅前にアミューズメント施設があるココが選ばれたそうだ。地元なら大輔も安心だろうし、予定もカラオケで2時間遊んで解散なら帰りが遅くなる事もないだろう。
「俺達が先に到着みたいだな。じゃあ今のうちにサイン教えるぜ!」
「サインって、合コン中に意思疎通するアレ?」
「YES! 相手に悟られずに数々のサインを出し、ターゲット情報や作戦共有する高等テクニックだぜ!」
俺達はミッション遂行中の軍隊かよ。
「藤田、お前以外は合コン初心者な俺達がサインを操るのは難易度高いのでは? 因みにそのサイン、何通りあるんだよ」
「50通りだ! 頑張って作ったんだぜ!」
「多過ぎる! 今から全部覚えて使いこなすのは無理だって!」
しかも確認したらどのサインも動きがあからさまで全然隠れてないんですけど!
なのでサインは『攻めろ:背中を叩く』『引け:肩に手を添える』の2つだけに変更、とにかく盛り上げて不穏な空気になったら全員でフォローという方針にしておきました。それからも藤田が合コンについて色々語ってきたけど、それを適当にスルーしながら不安げな様子の大輔を励ましていた所で、フェイリス女学院の4人が到着する。
そこから軽い挨拶をした後、即効で駅前アミューズメント施設のカラオケに直行となる。
藤田曰く、ココで長々と自己紹介をしても移動中に男女別々に固まって微妙な空気になり、盛り下がるリスクがあるらしい。あと合コンは遊ぶ場所に直接集合が鉄則らしいのだが、今回は女子全員がココに来た事がないので、駅前集合後に即カラオケ突入という段取りになったそうだ。
合コンって奥が深いなーと感心しながら目的地に到着すると。
「ふぁっ! 満席っ!?」
「はい。今からだと1時間待ちになります」
カラオケの受付店員にこう宣告され、我らが幹事の膝が崩れ落ちちゃいました。
「おい藤田、何で予約しなかった?」
「だってこの時間なら普通空いてるだろ! 前の合コンは急な変更あったから、今回は臨機応変に動ける様にあえて予約しなかったんだよ!」
そんな言い訳をしながら藤田が横にある〝カラオケ半額キャンペーン開催中‼〟のポスターを親の仇の如く睨み付けている。
「どうかしたの?」
後ろの女子達に尋ねられて、咄嗟に藤田の背中を叩いた。(攻めろ)
「ごめん、手違いで予約時間を間違えちゃって。そうだよな藤田!」
「お、おう! その通りだ市ヶ谷っ! 俺もお店もうっかりミスっちゃってさ!」
ここは格好悪くても、予約してなかったという醜態は隠したい。カラオケ店員に失笑されながらの退場になっちゃったけど、バレバレでもいいから押し切らないと。
「とにかく予定変更! みんなでゲーセンコーナー行く? あと屋上にはバッティングセンターがあるから一緒に特大ホームラン打っちゃったりする?」
駄目だこりゃ。
予定が狂ったせいで藤田はテンパってるし、大輔・下野は静観、女子達は愛想笑いという最悪な構図になっている。なので藤田の肩に手を添えて(引け)から、近くにあった施設パンフレットを女子達に渡して頭を下げる。
「手際が悪くてごめん。カラオケは駄目だったけど、やりたいゲームある? 他にはボーリング・ビリヤード等があるけど」
今更施設を出て、ウロウロ移動しながらの場所探しはグダグダになるから避けたいのだが、ボーリングはスカートなので遠慮したいと言われ、ビリヤードは経験者が誰もいなかったから無理。打開策はないのかとパンフレットを隅々まで確認して、万策尽きたかと感じかけた所で最後の希望が見つかり、笑顔で提案してみた。
「ダーツ、やってみない?」
◇ ◇ ◇
ダーツは人数に関係なく遊べて、結構盛り上がれる遊びだ。
それに経験者が俺以外にもう1人いて、他の皆も〝やってみたいかも〟という空気だったので押し切らせてもらった。幸いにもダーツ会場は空いていたので90分(ワンドリンク付き)の初心者コースを選択、奥の2テーブルを4・4で陣取る形にした所で、改めて自己紹介となる。
「田中奏多です。藤田とは同中の誼でメンバーを集めてみました!」
「中田高菜です。今日は思いっ切り楽しみましょうね!」
2人とも親しみ易い印象で、髪型が共にボブヘアーで一見同じだけど、身長は中田さんの方が若干高くて、田中さんの方が僅かに痩せている。あと田中さんがハイソックス・中田さんがニーソックスという具体だ。
「神岸藍といいます。合コン初体験ですが、よろしくお願いします」
深々とお辞儀をされたので、男子全員でお辞儀を返しておいた。おさげメガネという控えめな印象だけど、清楚で礼儀正しい人柄だ。
「七瀬都だ。私も他校の男の子と遊ぶのは初めてでドキドキしている。よろしく」
台詞とは裏腹に全く緊張していない感じで、不敵な笑みを七瀬さんが振り撒いてきた。俺より少し低いだけという女子にしては長身でスタイルも良く、長い髪と落ち着いた物腰・上から目線の言動なのに嫌味な感じがしないという姉御キャラである。
そんな女子達の紹介が終わってから男子も紹介(省略)をした後、大輔へのアタックが始まった。
「佐藤君って背が高いんだね。私の手の平、頭に届かないかも」
何気なく田中さんが大輔の頭に手を伸ばしてきたけど、今にも体が当たっちゃいそうな接近具合で、大輔がタジタジ状態になっている。
偶然か?
いやでも自然な動きに見えて、実は計算かもしれない。そんな勘繰りをしていたら、横から中田さんが大輔の体をペタペタと触りはじめた。
「体すっごいね。中学は何部だったの?」
「ええっと、帰宅部です。体がこうなのは、多分ジムで鍛えているせいで」
「本格的だ! ねぇねぇ、どのくらい鍛えてるの? 期間は? ジムってどんな所?」
「ま、真守~」
いきなり助けを求めるなよ。
やっぱり大輔に合コンは早かったみたいだけど、もう後の祭りで頑張ってもらわないと。
「大輔、ゆっくりでいいから1つずつ答えていけば大丈夫だ。田中さん・中田さん、大輔は見た目に反して気弱で緊張しやすい奴なので、お手柔らかに頼みます」
「「はーい」」
「えええええぇぇぇえええ、そんなぁ!」
「俺はこれからダーツ進行で忙しくなる。だから大輔も頑張ってくれ」
牽制も入れておいたし、俺は言い出しっぺの法則(発案者が実行すべきという理念)に従って、ダーツ台の設定をしないと。
「えーっと、まずは4人設定にして、ゲームは……」
「カウント・アップでいいかな?」
七瀬さんが隣台の設定をし始めてくれた。
因みに彼女が名乗り出たもう1人のダーツ経験者である。
「ですね。俺も最初はカウント・アップで練習しましたから。俺はこっちのフォローをするので、七瀬さんは隣をお願いできますか?」
「了解した。因みに君のハイスコアは幾つかな?」
「一度だけ700超えた事ありますけど、大体600弱です。それにダーツは1年ぶりなので訛っちゃってますよ」
「ほほぅ。まぁ去年は受験だったからな。因みにカードは?」
「ありますけど、無料会員なうえに今日は持ってきてないです」
「ふむ、それは残念だ」
そう言って七瀬さんがダーツ台にマイカードを差し込んできた所で、後ろから忍び寄ってきた藤田が俺の首を右腕で絞めてくる。
「おいおい市ヶ谷ぁ、もう抜け駆けかぁ?」
「七瀬さんと台設定してるだけだって。それに経験者が固まる訳にいかないだろ」
「残念ながらそういう事だ。チーム分けはどうする?」
「はいはーい! 俺は七瀬さんと一緒で!」
「僕は真守と一緒がいい」
「わ、私は七瀬と一緒の方が……」
藤田と神岸さんが七瀬さんチーム、大輔が俺のチームを希望したので、そのまま田中・中田さんが俺のチーム、下野が七瀬さんチームという割当となった。
因みにダーツとは、高さ173センチに飾られたボードに244センチ離れた位置にあるスローラインからダーツを3本投げてスコアを競うゲームである。ルールはマイナーなのを含めれば100以上あるけど、今回は刺さった位置の得点を加算していき8ラウンドの合計得点を競う最も単純なルールであるカウント・アップを採用。更に今回は初心者が多いのでスローラインより2歩前進、刺さるまで投げ直し可能という事にしておいた。
そしてゲーム開始となる始球式(?)を俺が担うことになったのだが。
「七瀬さん、やりますか?」
「いやいや、発案者でルール説明までした功労者には、見せ場を譲らないとな」
マイダーツまで持参してる人に言われましても。
カラオケ中止から偶然ダーツになったのにフル装備を出してきた以上、普段から道具を持ち歩いているという訳で、絶対上手いに決まっている。
「ビビるな市ヶ谷っ! ここは男らしくズバっと決める所だぜ!」
「ま、真守がんばって!」
「「市ヶ谷君ファイトー」」
藤田に煽られてから大輔、更に田中・中田さんにも励まされ、七瀬さんは不敵な笑みでこちらを見てくる有様で最早逃げ場はなく、せめてボードに刺さってくれと願いながら1本目を投げると。
「「「「「「おおーーー!!!」」」」」」
ど真ん中のブルに命中、モニターに50点が表示される。
残り2本も20・18点の計88点となり、小さくガッツポーズをしてから全員とハイタッチという最高に盛り上がるスタートとなった。
「凄いよ真守! ダーツが上手いなんて知らなかった!」
「前にちょっと齧っただけだ。だけどこのスコアなら抜かれることは」
「「「「「おおおおおーーーーー!!!」」」」」
七瀬さんがブル2つ・20のトリプルで160点を叩き出し、一瞬で倍近く離されちゃいました。
因みにダーツの最高得点は中心の50点ではない。不規則に1から20の数字が円状に並べられており、更にそのボード内に細いラインが2種類あって、外側がダブル(2倍)、内側がトリプル(3倍)で換算されるのだ。
「平均600は謙遜の様なので、こちらも全力を出させてもらおう」
「いえ、さっきのは偶然でレーティング(実力レベル)も下ですけど?」
「ほほぅ、さらっとダーツ用語を出してくる辺り、やはり油断できないな」
ええー、ダーツは本当に齧っただけなのになぁ。
そんな七瀬さんの挑発にたじろいている間に中田さん・下野が投げ終わり、次は大輔・神岸さんの番になり、大輔が構える。
「えーっと、まずは人差し指にダーツを乗せて、水平になる場所を軽く摘んでから、投げやすい姿勢で力まずに……、えいっ!」
俺の教えを忠実に守って投げられたダーツは、見事ど真ん中に突き刺さった。
「やったー、上手くできたー」
「「佐藤君すごーい」」
子供の様にはしゃいでから、田中・中田さんとぎこちないハイタッチを交わす。しかも残り2本もダブル・トリプルに刺さるというイケメン補正により、あっさりと俺のスコアが抜かれちゃいました。これは酷い。
「うう~。全然刺さらない~」
神岸さんはスローラインから2歩前進してもダーツが届く気配すらなく、刺さるまで前進していい事にして、七瀬さんが投げ方をフォローしてようやく3本刺さってくれました。
「よくやったぞ藍。憂い奴め」
「ありがとう都ぉ~」
もう手を伸ばせばボードに届く距離まで前進しちゃったけど、神岸さんには惜しみない拍手が贈られました。
「っしゃー、真打ち登場! いくぜっ、俺の必殺技パート1っ!」
無駄にテンションの高い藤田が登場、指の間にダーツを3本挟んでから一気に。
「フィンガー・フレア・●ムズ!!!」
謎の呪文を唱えながら投げちゃいました。
ボードには1本も刺さらなかったけど、周りは大爆笑だったので本人的には大満足らしい。みんな楽しんでいるし、ダーツを薦めた身としてはホッとしたけど、1ラウンドからこの有様で大丈夫かなぁ。
フィンガー・フレア・●ムズ:漫画『ダイの大冒険』のフレイザードの必殺技。今このネタやっても周りは絶対分からないのでご注意を。
あとダーツカードの件は古い知識なので違っていたらごめんなさいです。




