11話 安全な帰宅
「それじゃあ大月さんの件、よろしく頼むわ」
「待て美緒、家まで送る」
ファミレス近くにあったベンチに座り、カバンとケーキ箱3つを渡された途端に立ち去ろうとしたので慌てて呼び止める。どうにか回復できたし、暗い夜道を女の子を1人で帰らせる訳にはいかない。
「遠回りになるけど明るい道を選んで帰るから大丈夫よ。仮に襲われたとしてもスポーツジムで護身術を習っているし、防犯グッズもあるわ。そもそも荷物とダメージがある貴方がいても足手纏い。第一、遠回りになるでしょう?」
「ぐっ……、それでも送らせてくれ。俺の我が儘だと思ってくれていいから」
散々な言われ様で、そもそも負傷は美緒のせいなのだが、それでもこういう場面では譲りたくない。美緒は絶対俺よりも強いだろうけど、それでも女の子だから。
「つまり、私が安全に帰れればいいの?」
「ああ、鬱陶しいなら離れて歩くから我慢してほしい」
「分かった。あと離れて歩かれる方が鬱陶しいから、傍でいいわ」
渋々だけど、どうにか了承が貰えた。そうして駅前に戻り、佐藤家がある西口方向に行こうとしたら、美緒はあろう事かタクシー乗り場に直行、タクシーに乗り込んじゃいました。
「これなら安全で時間効率もいい。異論はある?」
「…………………………ないです」
お金って、ほんと便利だなぁ。
高校生という身分でタクシーに躊躇なく乗るとは、こっちは想像すらできなかったよ。だけどこうなった以上、不本意でも笑顔で見送るしかない。だけどせめて、
「じゃあこれ受け取って。運転手さんドア閉めて下さい」
流れる様にドアを閉めてタクシーが発信しようとした時、美緒がドアを開けようとして、それを阻止すべく外側から押して出られない様にする。そんな運転手としては迷惑この上ない攻防をしていたら、開かれたドア窓から美緒が睨んでくる。
「これはどういう事?」
「ケーキ3箱は多いから、1箱プレゼントさせてもらう。家族3人で食べてくれ」
「気遣い無用って言ったわよね?」
「捨てるなり何なりしていいとも言ったよね? だったら受け取ってほしい」
この言葉で美緒の抵抗が止んだが、苦虫を噛み潰したかの様な表情を浮かべてくる。
マズい、これ以上留まるのはよろしくない。
「じゃあな美緒! 大月さんの件はちゃんとやるからまた明日!」
それからケーキ箱を落とさない様に走り、逃げ帰る事には成功した。
したんだけど、さっきからなりっぱなしの携帯、どうしようかなぁ?




