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第8話 魔導書とスキルと

お金の金額はあくまでこの世界独自の価値観になります。


 場所は図書館。現在リーシュはアーノルドの後ろを歩き、一般に解放されている魔導書が蔵書されている場所に案内されていた。


「はぁ……思い出したら憂鬱になってきた」


 何故リーシュがこんなにもテンションが低いかというと、当然先程の件が原因である。

 リーシュを断固として嫁になどやらぬアーノルドと、見目麗しく才能に溢れた者を逃す手はないと食い下がる国王。

 そのやり取りは実に1時間程続いていた。

 リーシュにしてみれば何でそんなことで1時間も言い争う事が出来るのか不思議であり、そもそも本人の意見を聴かずに進めるのもどうなんだ?と、憂鬱になるのも仕方ないことであった。

 結局は国王が諦めてその話は片付いた。

 その後本来の用件に戻り少し話をしてから謎解決の報酬を貰ったのだが……。


「報酬が白金貨5枚って………」


 この世界の貨幣は一般的に屑貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、小金貨、金貨、白金貨に分かれている。

 これらを日本円に換算してみると


 白金貨=約100万円

 金貨=約10万円

 小金貨=約1万円

 大銀貨=約5000円

 銀貨=約1000円

 大銅貨=約500円

 銅貨=約100円

 屑貨=約1円


 このようになる。

 言ってしまうと白金貨で貰っても両替出来ないので出店などでは使えず、正直現状使い道が無いと言ってもいい。

 この世界の中流階級家庭の月収は小金貨5枚程度、農村になると金貨を見ること無く一生を終える人もいるくらいなので仕方ないだろう。


「貰っても使い道が無いんじゃなー」

「元々リーシュに支払う事が前提で用意されたものでもないからの」


(正直それだけじゃなくて覚えを良くしておきたいって思惑もありそうな気もするけど)


「まぁ無いよりは良いかな?」


 そう言って空間魔法で収納を作りその中に入れる。


「使いこなしておるのう」

「使える物は使う主義なので」

「そうじゃのう、これかはお金を使うこともあるじゃろうし………うむ、小遣いをやろう!」


 アーノルドは自分の収納に手を入れて袋を取り出すと、それをリーシュに渡す。


「えっと、中身が入ってるようには見えないんだけど……」

「それはマジックアイテムじゃからの、容量もそれなりに大きい優れものじゃ」


 中身が入っているように見えない袋を開け、手を入れるとジャラジャラという感覚がする。


「これどのくらい入ってるの?」

「幾らじゃったかの?袋を持って意識すれば分かるはずじゃが」


 そう言われたので意識してみる。

 すると中に入っている金額が頭の中に表示される。


 白金貨 10枚

 金貨  153枚

 小金貨 520枚

 銀貨  1300枚

 銅貨  2000枚


 日本円にして約3200万円。

 この世界なら人生を遊んで過ごしても余るほどの金額である。他にも屑貨などもかなりあったのだが割愛。


「ブフッ!?」

「ど、どうしたのじゃリーシュ!?」

「お、お爺ちゃん、これお小遣いってレベルじゃないよ……」

「そうかの?」

「そうだよ!?お爺ちゃんのお金が無くなっちゃうよね?」

「いや、金などあまり使わんからの、まだまだ余っておるのじゃ」


 アーノルドの言葉に嘘はなく、150年近く生きる中で論文の評価やら給与やら利権やら、冒険者の真似事なんかもしたので有り余っていると言っていいほどに貯蓄はあった。

 アーノルド自身も然程使わないので貯まる一方なのである。


「でも……」

「いいから持っておきなさい。儂が持っていても使わぬからの」

「う〜ん、じゃあ貰うことにする。ありがとうお爺ちゃん」


 礼を言って貰った袋を収納にしまう。


「ぐうぅ……」


 そうしてお爺ちゃんの方を見てみると後ろを向いて悶絶していた。

 何!?いきなりどうしたの!寿命?


「どうしたの!お爺ちゃ…」

「おぉ…これが親子のコミュニケーション、リーシュが笑顔でありがとうと……」


 今までの人生で縁がなかった親子……娘とのコミュニケーションというやつに感動していただけであった。

 そして何やらボソボソ言っているのに気づいたリーシュは、これ以上悪化させて遅れるのも嫌だったので触らぬ神に祟りなしと放っておく事にしたのだった。




        □ ■ □




「おお、この扉の向こうに私の魔導書達が!」


 あれから落ち着くのに少し時間がかかった。

 時間はかかったが無事に魔導書が蔵書されている部屋の前までやって来ることが出来たのでリーシュのテンションは元に戻って……いや、テンションがハイになっていた。


「落ち着くのじゃリーシュ。魔導書は国のものじゃ」

「あ、うん。ちょっと興奮しちゃって」

「いや、儂もすまんかったの。案内するのが遅れてしまって」

「いいから!早く扉開けて!」


 そう急かすとアーノルドは急いだように扉を開ける。お爺ちゃんもこれ以上娘を待たせて嫌われるのは嫌なのだ。


 扉を開けると、最初に乾いた風が押し寄せる。次いで感じたのは古い本の匂い。

 目に入ったのは本、本、本。その部屋はパッと見で床から天井までが10m程、横と奥行は本棚に隠れて見えないがそれなりの広さがあることが分かる。

 1階と2階に別れており、床に設置してある本棚の他に、空中に浮かんでいる本棚まであった。その光景はまさに魔法の世界といったようなものだ。


「おぉ……おお!」

「どうじゃ?ここにある書物全てが魔導書、あるいは魔法に関する巻物(スクロール)じゃ」

「すごい!凄いよ!お爺ちゃん」


 リーシュは最初唖然としていたが、直ぐに弾かれたように叫ぶ。その光景はリーシュが想像していたよりも数倍は凄い場所であった。


「(あぁ……ここが私の理想郷(ユートピア) )」


 そんな風にリーシュが感動に浸っていると、横からアーノルドの声がかかる。


「あー、リーシュよ。感動に浸っている所悪いんじゃが儂は仕事があってじゃな、ここにある物は自由に読んで良いからここにいてくれるかのう?」

「仕事?」

「うむ、7日程この国を離れておったからの……少し、ほんのすこーし仕事が溜まってての」

「それって……私のせいで?」

「ははは、仕事が溜まるのはいつもの事じゃ気にせんで良い」

「……はい」

「夕刻の鐘がなる頃には迎えに来るからの」

「分かりました」

「うむ……それとな、リーシュよ」

「?……はい」

「儂とお主はもう家族なんじゃ、そんなに畏まらなくて良い。もう少しくだけた言葉で話してくれんかの?」

「はい、分かりし……ううん、分かった!」

「うむ、ではの」


 そう言ってアーノルドは仕事へ向かった。


「さて、と」


 リーシュは本達に向き直ると、嬉々とした笑顔を向け……


「どれから読もうかな?」


 本棚へと歩を進めるのだった………早歩きで。





         ■ □ ■





 それから早3時間、リーシュは周りが引くような集中力で魔導書を読んでいた。

 既に分厚い魔導書を2冊程読み終わっており、現在は火系統の魔法について書かれている魔導書を読んでいた。


 そしてこの図書館の仕組みについて分かったことが2つある。


 1つ目は、浮いている本棚についてだ。この本棚、2階へ上がり、手を向けてこっちに来いと念じるだけで移動して手の届く場所まで移動してくるのだ。この時リーシュは「ああ、素晴らしきかな魔法技術!」と感動していて気づいていなかったのだが、凄く目立っていた。顔つきが整っているだけ余計に。


 2つ目だが、この場所から無断で本を持ち出そうとすると軽い電撃が走り、それで麻痺したところを職員に連れていかれる。何故分かったかというと、リーシュが本を選んでいる時に本を持ち出そうとした奴がいたからだった。隠蔽魔法をかけていたようだったが無効化され床に這いつくばっていた。図書館から本を盗み出そうとするのは結構重い罪で、取り調べにも何人か専用の職員がいるらしい。それでも持ち出そうとする者は後を絶たない様だが。


 ちなみに先程隠蔽魔法を使った者を連れていった職員だが、筋肉質な約190cmの巨漢で連れていく時に「ウホッ、いい男」と呟いていた。


 ……みなまで言うまい、連れて行かれた男の冥福を祈り十字を切る。アーメン。


 そこから先は考えたくなかったので思考を切り替え本を読み続けた。

 あと1時間程で夕刻の鐘が鳴る、そんな時にふとある事を思い出す。


「そう言えば私の能力(スキル)って…」


 そう、あるのが分かったはいいが能力の概要を確認していなかったのである。


「気になるし……確認してみようかな」


 そう言い、スキルを確認する。



名前: リーシュ・ノーデール

種族: 人族

称号: 幼き魔法使い

技能: 固有能力 《イラストレーター》

    固有能力 《悠久の図書館》

    固有能力 《????》

    能力《万能才能》《状態異常軽減》《身体能力強化》《気配感知》《気配隠蔽》



 うん、さっきのままだ。それで概要は……っと、


固有能力 《イラストレーター》


・ 表現具現化

・ 表現魔力消費減少


固有能力《悠久の図書館》


・ 万能知能

・ 思考加速

・ 並列思考

・ 鑑定

・ 能力看破

・ 万有習得

・ 異次元収納


能力《万能才能》・・・あらゆる事の腕前が上がりやすくなる。常時発動。

  《状態異常軽減》・・・すべての状態異常を軽減する。常時発動。

  《身体能力強化》・・・自分の身体能力を強化する。任意発動。

  《気配感知》・・・半径100mの気配を感知できる。常時発動。

  《気配隠蔽》・・・自分の気配を隠蔽する。任意発動。



 なんと言うか……めちゃくちゃだ。


 《イラストレーター》は、まぁ恐らく前世が影響しているんだろう。しかし《悠久の図書館》は……多分女神様だろうなぁ。この能力だけで女神様の過保護さが分かる。はっきり言ってチートだ。

 ちなみに正体不明の能力《????》はいくら頑張っても分からなかった。

 そして固有能力だけでも十分チートだが、まだ通常のスキルが残っている。

 でもこれだけの能力を持ってるのってただ過保護なだけ?…………あ、すっかり忘れていたけどそう言えば何か女神様が言ってたような気がする。確か滅亡の危機だとかなんとか?

 つまりこのくらいスキル持ってなきゃ危ないって事だよね……せめて詳細くらい教えてくれてもいいと思うのだけど、そこのところ女神様はどうなのか?

 いや、先の事をいくら言っても仕方ない。とりあえず今はスキルだな。


 そうしてリーシュは問題を先送りにしてスキルに意識を戻す。


「発動の仕方は何と無く分かるし……とりあえず固有能力だけ発動してみようかな」


 そう言ってリーシュは固有能力を発動する。すると次の瞬間………


《……スキルノ発動ヲ、確認。状況ノ…確認ヲ開始………確認完了。ご主人様(マスター)ヲ認識シマシタ》


 そう無機質な機械音の様な声が響いた。



 ・ ・ ・ ・ はい?



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