第7話 能力(スキル)って何ですか?
帰ってきました。
6千文字は辛かったです……。
「やらんぞ!」
「そこを何とか!」
「駄目じゃ、そもそも身分が違うじゃろ!」
「身分の事でごちゃごちゃ言うような者、この国にはおりません。それに先生の子と言うなら身分の問題など関係ありますまい」
「駄目じゃ!お主も自分の立場を考えて発言せい!」
そんなふうに言い争いをしているのは私のお爺ちゃんことアーノルド・ノーデール、そしてもう1人は豪華な装飾がされた服を着た、ダンディだが雰囲気は柔らかい40歳くらいのオジサンだった。
「いい加減諦めんか!」
「そんな事言わずに、この娘の未来も考えると悪い話ではないはずです!」
「儂が生きとる限りこの娘に不自由はさせんわ!そもそもお主の息子も会ったこともないのに勝手に決められてはかなわんじゃろうて」
「いえ、これ程可愛い娘など何処を探してもいないです。着飾ってもいないのに貴族の娘達が霞んでしまうほどの美貌、まるで女神様の子供のような可愛らしさ、きっと息子も一目で惚れてしまうでしょう」
「どんなに褒めてもやらんもんはやらん」
あまりにも的を射た事を言うので一瞬ドキッと心臓が跳ねる。
まるでではなくて本当に女神の娘なんですよね…。
最も、自分から女神の娘です!などと言っても信じてもらえるわけもないのだけど。
しかし、本当にどうしてこうなった。
断固として断るお爺ちゃん。しかし諦めずに食い下がるダンディなオジサン。この不毛なやり取りはいつ終わるのやら。
私もいい加減2人のやり取りにうんざりしていた。
「リーシュちゃんだってきっと幸せになれるはず!」
「リーシュの幸せはお主が決める事ではないわ!」
「きっと幸せになれるはずです!ですから───」
うん、さっきっから2人で言い争って、本人の意思は無視ですかね。
私は本が読みたかっただけなのに………。
「ですから是非、リーシュちゃんを息子の妃に!」
本当にどうしてこうなった。
□■□
時は少し遡る。
部屋の中に朝日が射し込む。
今まで暮らしていた場所よりも広い部屋だったが、疲労のおかげか私はぐっすりと眠れていた。
「朝……」
そう呟きながら気を抜くとまたすぐに閉じてしまいそうな瞼を擦りながら起き上がる。
「ふぁ………ねむ」
眠い、本当に久しぶりのふかふかベットだっただけあって思わず二度寝したくなってしまう……………。
ボフッ
そんな柔らかい音と共に倒れた身体をベッドが受け止める。
「………ハッ!」
危ない危ない!一瞬意識が跳んでた!今日こそは魔導書を読むのだ、無駄にしている時間は無い。
目的を思い出すとまた眠らない内にベッドから跳ね起きる。
部屋に備え付けてあった姿見で寝癖を整え、お爺ちゃんの部屋の前まで移動して扉を叩く。昨日は着替えずそのまま寝てしまったので着替えをする必要はなかった。
「お爺ちゃん、起きてるー?」
そうして少し経つと中から貞子状態になった老人が出てくる。
「うわぁ!?」
「ぬォ!?なんじゃいきなり大きな声を出して」
「い、いや、お化けが出てきたのかと思って」
「お化け?幽霊や悪霊とかかの?」
「え?あ、うん」
(あ、本当にいるんだ。幽霊)
「安心せい、霊系の魔物は結界があるからこの建物には入って来れんよ」
「えっと、そんな事より!魔導書!魔導書は何処にあるの?」
「そんな事って、結構凄いことなんじゃが」
「魔導書!」
「わかった、わかった。少し支度をするから待っておれ」
そう言うとお爺ちゃんは再び部屋に入っていく。
そうしてソファーに座りながら10分程待っていると昨日と同じような姿になったお爺ちゃんが出てくる。
「さて、魔導書を見せる前に行く所がある」
「……え"?」
「わかり易く嫌そうな顔をするでない、儂もこの国ではそれなりの立場にある。なので娘ができたと国王に知らせなければならんのじゃ」
「それ私もついて行く必要ある?」
「ある」
ガックリ
そう肩を落とし、仕方なしとお爺ちゃんについて行く。
はぁぁぁぁ……。
そうして魔方陣で転移して連れてこられたのが全面が大理石のようなもので造られていて正面の扉と床に置かれた魔方陣が描かれている石板(その板の上に乗っている)以外何も無い部屋だった。
「えっと、ここは?」
「王城にある転移専用の部屋じゃよ。基本儂しか使わんがの」
「なんで他の人は使わないの?便利なのに…」
「いくつか理由はあるが、1番は単純な魔力不足じゃな」
「じゃあ図書館の魔方陣も?」
「いや、図書館の魔方陣は図書館が龍脈のエネルギーを魔力として使っているので転移者の消費魔力も少なくて済む。職員や関係者以外は使用禁止じゃが」
「なるほど……他には?」
「この魔方陣は古代の遺産と呼ばれる物でな、本来は対になっているものなので自由に移動できる物ではないのじゃ」
「え?お爺ちゃん結構自由に移動してるよね」
「それは転移先の魔方陣の構成を解読してそれを他の魔方陣に書き写ししているのじゃ。これを出来る者が少なくてのう………儂でも5年程かかってしまった」
(・・・ん?)
「更に、じゃ、魔方陣をトレースした後に魔力を送る際、とても精密な操作をしなくてはならん。幸い、年の功のおかげか儂は数度でできたが………出来ぬものは年単位かかるやもしれぬ」
「へ、へぇ〜」
マ ジ デ ス カ
一発どころか一瞬で出来ちゃったんだけど…………書き写しはまだだけど結構簡単に思えたんだけど。
お爺ちゃんでも5年て…………そんなに難しい事だったの?
と若干混乱しているリーシュの耳にドタドタと何かが走ってくるような音が聞こえてくる。
その音は扉の前で止まり、1拍間を開け、バン!という音と共に扉を開け中に入ってくる。
「ノーデール先生、お待ちしてました!」
「オルタスよ、別にお主が走ってくる必要は無いと思うのじゃが?」
「いえ、恩師が来て下ったのですから迎えに上がるのは当然のことです」
「恩師というほど多くの事を教えたつもりはないのじゃがのう」
「何を仰られるのですか!先生から教えていただいた事は今でも憶えております!例えば……」
「その辺で良い、何も昔話をしに来た訳では無いのでな」
「そうでした、養子をとったという話でしたな。して、その娘が?」
「そうじゃ、儂の娘でリーシュという」
「それは……なんとまぁ見目麗しい」
なんだこのおじさんは………人の事をジロジロと、ロリコンか?
とはいえ、自己紹介はしておいた方が良いな、流れ的に。
「初めまして、リーシュ・ノーデールです」
「これはご丁寧に、私はオルタス・ウォン・デルタミス、親戚のおじさんとでも思って接してくれると嬉しいかな」
「何を言っとるか、国王が親戚のおじさんな訳なかろう」
あ、やっぱりこの人王様だったんだ………。
なんか豪華な服着てるし、そうじゃないかとは思ったけど………貫禄がなぁ。
「ところで先生、折り入って相談があるのですが………ここではなんです、移動しましょう」
国王が急に真面目な顔になってそう言う。
それから私達は豪華な応接室の様な場所に案内された。
「それでなんじゃ、言うてみよ」
「この国は他の国と比べて魔法使いが多いことで有名ですよね?」
「そうじゃな、他の国とは溜め込んでいる情報の量が違う。それに魔法に適性が高い子供が産まれやすい。まだ正確な理由は特定されてはおらんがの」
「はい、現在も調べているのですがなかなか判明しません」
「それがどうしたと言うんじゃ?」
「こちらも理由は不明なのですが……近年魔法に適性を持つ子供の出生率が減っているのです」
「別に不思議な事でもあるまい、何処に、どのくらい、どれだけの才能を持つ者が産まれるかなど神のみぞ知るじゃ。この地は偶然その期間が長かったというだけかもしれん」
「そうなのですが……偶然と言うにはあまりにも長い期間優秀な魔法使いが産まれてきました。国としては何か原因があるなら知っておきたいのです」
「つまり、それを儂に調べて欲しいと?」
「そうなります」
「儂はこれでもそれなりに忙しい身なのじゃが?」
「見合った報酬は用意しますのでお願いする事は出来ませんでしょうか?未だに謎に包まれているこの謎を解明できるのは稀代の魔法使いである先生以外に無いと思うのです」
「今のところ金には困っておらんしのう……お抱えの王宮魔導師達はどうなんじゃ?」
「お恥ずかしい話になのですが、調べさせているものの一向に進まず……」
「うむぅ………」
・・・これ私来る意味あった?国絡みの大人の話を聞いていても面白くないし、聞く意味も無いと思うのだけど。
というかお爺ちゃんってそんなに忙しい?何日も図書館空けて私の所まで来てたから暇なんじゃ?
……いや、確か馬車で論文らしき紙束とにらめっこしてた様な気がするし……やる事はやってるってやつか。
「手が空いた時に調べるだけじゃから……あまり進まぬかもしれんぞ?」
「それで構いません。こちらからお願いしているので、これ以上傲慢な事は言えません」
「はぁ……あまり老人をこき使わんでくれよ?儂とてもう年なのじゃ」
「ははは!私の物心つく頃から同じ姿では無いですか!」
「え?」
「む?どうしたのじゃリーシュ」
「国王が物心ついた頃からって……お爺ちゃんって何歳!?」
「100超えてからは数えておらんのう」
「確か147と仰っていませんでしたか?」
「そうじゃったかのう」
いやいやいや、おかしいよね?147歳とか冗談でしょ!?
魔法使いにとっては普通とか?国王もさらっと言ってたし………
「あの……」
「なんじゃ?」
「私が知らないだけで魔法使いって皆長生き?」
「いや、儂が特別長生きなだけじゃよ。ちと能力の影響でな」
「先生」
「良い、この場には儂のスキルを知っとるお主とリーシュしかおらん」
「えーっと、スキルってなんですか?」
「……知らんのか?」
そんなものがあるとか聞いたこともないですはい。
家の本には載ってなかったですし、もしかして一般常識?
「フリオールの奴め……こんな一般常識も教えとらんとは、奴らしいというかなんというか」
「それでスキルって?」
「スキルというのはじゃな───」
スキルについての話をまとめるとこういう事らしい。
・能力には先天的な物と後天的な物がある。
・スキルは基本的に固有能力と通常の能力と2つある。
・固有能力とは、基本的に個人唯一の能力である。
・後天的なスキルは己の研磨によって獲得する事が多い。
・固有能力を持つ人間は多くはいない。
・自分の情報を与える事は弱点を探らせる事にもなるので、持っていても他人に教える事は少ない。
そして思った通り、一般常識でした。
「そのスキルとはどうやったら獲得していると分かるんですか?」
「心で念じれば自然と分かるはずじゃ」
なるほど、やってみよう。
スキルは………っと、おお!これか!どれどれ─────
名前: リーシュ・ノーデール
種族: 人族
称号: 幼き魔法使い
技能: 固有能力 《イラストレーター》
固有能力 《悠久の図書館》
固有能力 《????》
能力《万能才能》《状態異常軽減》《身体能力強化》《気配感知》《気配隠蔽》
─────ユニークスキルを持ってる者は……なんだって?
持ってる人が少ないはずのユニークスキルを多数持ってるんですが……。
それとなんだこれ、????って……所持者でも分からないスキルってどういうこと?
それとスキルの表示が《????》《状態異常軽減》《身体強化》以外灰色っぽくなっている。
イメージなので具体的には言えないけれど、なんていうかスイッチをオフにしたときみたいな感じ。なんとなくだけど発動していない事がわかる。
スキルの構成は……多分女神様かなぁ、身を守る系に偏ってるし。ただ…………イラストレーター?
「どうじゃ?自分の能力は分かったかの?」
「え?……あぁ、はい」
「スキルは持っておったか?」
「えぇ………一応」
「ほう!やはりか、やはり魔法系のスキルじゃったかの?」
これ正直に行ってもいいのかな?まだ効果は知らないし使った事も無いスキルだけど10個近く持ってるとか……1つは私でもどんなスキルか分からないし。
・・・よし、隠そう!面倒事はゴメンだからね!でもあるって言っちゃったから……《状態異常軽減》辺りでいいかな?
「《状態異常軽減》というスキルでした」
「状態異常軽減?むぅ、あれだけの魔法が使えるので魔法系のスキルかと思っていたが……その歳であれだけの魔法をなんのスキルも無しに使えるとな?やはり逸材じゃったか」
あっるぇぇえ?《万能才能》辺りでも言っておけば良かったかな?
「先生、リーシュちゃんはそんなにも魔法を使えるのですか?」
「うむ、齢6歳にして魔力量は儂と同等……才能なら儂すら超えておるやもしれぬ!」
「それはいささか………子贔屓なのでは?」
「いや、この目で見たから間違いはないぞ?この子は天才じゃ」
うぅぅぅ……なんていうか、痒いなぁ………親から言われるよりもむず痒い……。
「話が逸れてた、では片手間にでも調べるとするわい」
「はい、よろしくお願いします」
「それではリーシュも紹介したし、失礼する」
そう言って王様に見送られ応接室を出る。
途中の廊下、ふと疑問に思った事を聞いてみた。
「お爺ちゃん」
「なんじゃ?」
「あの王様の話なんだけど……」
「魔法使いの出生率の話かの?儂は龍脈が原因ではないかと考えておる」
「その事なんだけど……図書館じゃない?原因」
「図書館?どうしてそう思うのじゃ?」
「あの図書館って龍脈の力を使ってるんでしょ?」
「文献に残っている通りならそのはずじゃ」
「つまり龍脈の力を集めて使う力がある、つまり吸収する力があるって事じゃない?」
「そうかもしれぬのう」
「その吸収した力って魔力の事なのかな?」
「いや、龍脈の力は魔力とは似ているが違うものらしい。それを集めて魔力に変換し使っているらしい」
「違う物を魔力に変換している。だけど100%変換できてるわけじゃ無いんじゃないかな?」
「何故そう思うんじゃ?」
「魔法と同じじゃないかな、と。魔法も込めた魔力が100%変換されなくて未熟なほど余剰に消費するでしょ?それと同じで龍脈の力にも余剰なものがあるんじゃないかな、って」
「なるほど………つまりその余剰なものが原因だと……………そうか、そうやもしれん。そうじゃ!何故こんな事にも気づかなかったんじゃ!」
そう言うと踵を返しすごい勢いで応接室に戻る。
少し前王様がしたのと同じ様にバン!という音を立て応接室の扉を開け放つ。
お爺ちゃん……失礼だよ………。
「ブフッ!先生!?」
王様が飲んでいた飲み物を吹き出す。
「オルタス!オルタスよ!分かったやもしれぬぞ!」
「落ち着いて下さい先生!何が分かったと言うのですか?」
「この国の出生率の謎じゃ!」
「応接室から出ていってから何があったんですか!?」
「いや、言われてみれば気づくとはこの事じゃ、まさかこの娘………リーシュが答えを出すとは」
「先生ではなくリーシュちゃんが!?」
「儂もまさかとは思ったのじゃが…そう思った理由を聞いたら成程と納得出来るものじゃった」
「それで一体何が原因だったのですか?」
「うむ、それはじゃな──」
それからお爺ちゃんが王様に説明したらしい。
私?隣のソファで魔力を循環させて魔力操作の練習ですよ。
だって話長いんだもの………。
「なるほど。ところで先生に相談が」
「なんじゃ?報酬か?それならリーシュに」
「いえ。あ、報酬は勿論リーシュちゃんにお支払いします。それとは別にですね………リーシュちゃんを私の息子の妃に………」
ん?私?
「断る!」
「そんな、先生!もう少し考え─」
「駄目じゃ!」
なんか面倒な事になってるなぁ。
そして序盤に戻る。
一体何でこんなことに…………。
アーノルド→解析とコピーに5年
写すのは数度
みたいな感じです。