第5話 王都の大図書館
詰め込みすぎた感があります。
「ここが…お爺ちゃんの家?」
馬車を降りた私の目の前に広がったのはとてつもなく大きな建物だった。
入口だけで10m近くあり、教会のような博物館のような小さな城のような………それらが混ざり合ったような見た目をしていた。
「家兼職場、と言った所かのぅ」
「この建物って一体何なの?いろんな人が出入りしてるけど」
そうなのだ。この建物に入っていく人にはあまり統一性が無く、ローブを被った魔法使い風の人や、白衣を着た学者風の人、高そうなな装飾品で身を飾った人など、一体何の建物だか予想がつかなかった。
「ここはな、この国の様々な資料を保管している大図書館なのじゃ」
「大図書館?」
「うむ、実際に入ってみた方が分かるじゃろ」
そう言ってノーデールは建物の中に脚を進める。
「あ、待って!」
それを追いかけるように私も脚を進める。
そして扉(というか門)を潜る、すると何やら膜を通ったかのような変な感覚がした。
「ん?今なんか変な感じが」
「おお、気づいたか。実はこの図書館には魔法による結界が張られていてな、室内の温度を保ったり虫が入ったりしないようになっとる」
「おぉ!結界!」
新たな単語に胸を踊らせながら更に奥へと歩を進める。
結構な長さの廊下?と言っていいんだろうか、を進むと、急に視界が開ける。
「わぁ……」
それはまさに大図書館と言った風景だった。
左右の本棚の列が奥まで果てしなく続いており、吹き抜けになっているため下の階層と上の階層が見えるのだが、どちらもこの階と同じ様にビッシリと本棚が並んでいる。
「凄いですね……奥まで本棚がビッシリですよ……左右も終わりが見えませんし」
「ハハハッ!そうじゃろ、この図書館は広過ぎるので至る所に転移の魔法陣が設置されておる。中には自分が何処にいるのか分からなくなったという者もおるくらいじゃ」
「すごい…本当にすごい……世の中にはこんなに本があったんだ」
「まぁここには料理の本から物語、個人が書いた小説、国の重要記録や魔導書まで何でも揃っておるからな」
「おぉ!」
魔導書!そう魔導書!早く読みたい!
「じゃがまぁ当然一般公開されてないものも多い、国の資料が読み放題では国が滅びてしまうからな」
「え?じゃあ魔導書なんかは?」
「その事も含めて歩きながら話すとしよう」
そう言って歩き出したお爺ちゃんを私は急いで追いかけた。
「そうじゃな、まずはあまり説明していなかった私の事を話すとしようかの、儂はアーノルド・ノーデール、この図書館で館長兼魔導書管理責任者をしとる」
へぇ、館長………って館長!?お爺ちゃんここで1番偉いの!?それに魔術書管理責任者って………そんなに偉い人だったんだ。
「まぁオヌシは儂の養子になるわけじゃから……名前はリーシュ・ノーデールという事になるかのう」
「は、はぁ」
えぇっと、混乱してて話についていけてないな。
このお爺ちゃんはこの図書館の1番偉い人で凄い魔法使いで…その養子、つまり子供に私がなるわけで………マジでか。
「そして家兼職場といったが……まぁ儂はここに住んどるんじゃよ」
「どうゆう事ですか?」
「うむ、この図書館はな"ある一定以上の役職に就いたもの達はこの図書館に住む権利を与える"というものがあるんじゃ」
「えっと?図書館の中に家があるんですか?」
「部屋がある、と言った方がいいのじゃがまぁ広いので正直普通の家とも変わらん」
なるほど、まぁこんなに広いんだし部屋くらいは用意されてても不思議じゃない?かな。
てか家と変わらない部屋って……。
にしても本当に何冊あるんだろ………一生かけても絶対読み終わんないよなぁ、これ。
「この図書館って一体何冊の本があるんですか?」
「分からぬ」
「・・・え?」
「多すぎて分からないのじゃ、流石に自分の管轄である魔導書の冊数くらいなら分かるが………ことの図書館全体となると恐らく誰にも分からぬ」
えぇ……それって良いのか?責任者として……。
「じゃあ魔導書は?」
「そうじゃな、一般公開されている魔導書の蔵書数は約3000冊と言ったところじゃな」
「さ、さんぜ!?」
「まぁ、この国の魔導書なら殆どここにあるからのぅ」
なんと!こうしてはいられない!
バッ!
と背を翻した途端、
「待て、何処へ行くつもりじゃ」
「いや、ちょっと魔導書の所まで」
「後にせい、この建物の説明がおわってからじゃ」
「えぇ!?魔導書!まどうしょ〜!」
抵抗虚しくお爺ちゃんに引きずられていく私。
うぅ、仕方ない、魔導書は説明が終わった後にするか………。
そうして、しばらく歩いたところで大きな十字路(真ん中は当然吹き抜け)のような所にたどり着く。
「ここがこの図書館の真ん中ですか?」
「いや、この先にこれと同じものが5つほどある」
いやいや、でかいなんてレベルじゃないでしょう。
だってここまで来るのに老人と子供の脚とはいえ10分位かかったんだけど!?それにそんなに長かったら王都の3分の1位図書館で埋まるぞ!?
「それってどんだけ大きいんですか……よくこんな建物作れましたね」
「あぁ、この建物の中はな、空間魔法にて空間拡張がされておるのじゃ。だから外見よりも何倍も大きいんじゃよ」
なるほど、それもそうか。
こんなでっかい建物あるわけ「まぁ1キロ平方メートル位はあるがな」ブフッ!?
「はぁぁぁぁぁぁぁ!?大きすぎじゃないですか!?」
「空間拡張にも限度はあるからのぅ、それに図書館とは言いつつも他の施設も入っとるし」
「それって館長意外にも責任者がいっぱいいるってことですか?」
「いや、この建物の1番上の役職が館長じゃからのぅ、図書館、役職、司法機関、一部の貴族の家、それらを全部まとめているのが儂」
や、ヤベェ………。
感想が薄いけどそれしか出てこないわ……。
「疑問なんですけど、建物が壊れたり劣化したりした時どうするんですか?」
「この建物には古代魔法がかかっておってな、例え大規模破壊魔法が当たっても傷ひとつつかんよ」
「なんでもありですね……」
「いや、欠点も多いぞ?本の管理が大変じゃし」
そんな話をしていると、3つ目の十字路にたどり着く。
ここは吹き抜けにはなっていなく、円形の受付のようになっていた。
「受付ご苦労さん、職員用魔法陣を使わせてもらうぞぃ」
「あ、館長!分かりました、そちらのお嬢さんは?」
「儂の娘じゃ」
「…はえ?」
「それではの、行くぞリーシュ」
「はい」
「………え?館長に娘さんなんていたの!?」
受付の内側に入り、職員以外立ち入り禁止の扉を抜けると、小さな部屋に出た。
その部屋の真ん中には青白く光る魔法陣が書かれている。
「これが、転移魔法陣?」
「そうじゃ、長旅じゃったし疲れたじゃろ。今日の所は休むといい、では儂の部屋の近くに転移するぞ」
爺ちゃんがそう言うと、元からあった魔法陣の周りを囲うようにもうひと回り大きな魔法陣が現れる。
「これは?」
「元からある魔法陣に色々と書き込んで儂の部屋の近くの魔法陣へと転移できるようにしているのじゃよ。もっとも儂しか出来んがな」
「他の人はどうやって移動するんですか?」
「いろんな所を経由するか正規の入口から行くしかないのぅ、経由すると時間がかかるし正規の入口までは遠い、年寄りには辛いのでこうして移動しておるんじゃよ」
「なるほど」
あれ?これって私も覚えた方が良いよね?"爺ちゃんの養子=私もここに住む"って事だろうし、歩き回るのも面倒臭いし。
ちょっと試しに術式を把握してっと……。
「それでは転移するぞ」
爺ちゃんがそういった瞬間、一瞬で周りの景色が変わる。
転移した先は図書館と言うよりお城の中といった感じだった。
「では行くぞ」
そう言って歩き出した爺ちゃんと共に真っ直ぐ一本に延びた道を進む。
うわ、あれシャンデリアじゃん。なんで廊下なんかにあんの?
外の景色は……高っ!?この建物、普通に高層ビル並の高さなんじゃないだろうか。
そういった事に驚いていると道の終わりが見えた。
一見ただの行き止まりに見えるが違う。下に魔法陣が書かれている。
これって魔法陣が壊れたりした時って行き来する手段がなくなるんじゃ………。
「さぁ行くぞ」
そう言ってもう一度転移する。
転移した先は半径4m程のホールのようになっていてどこを観ても階段などはない。
そして目の前に3m程の扉が見える。
「この部屋がとりあえず儂の家じゃよ」
重さを感じないような手つきで扉を開け、中に入っていく爺ちゃんに続く。
中に入って私は驚愕した……中は空間拡張のおかげなのか天井が高く、片方の壁には本棚が所狭しと並んでいて、部屋の右側には大きなソファーとテーブル、冷蔵庫っぽいものまであった。ガラス張りになっている窓側には豪華な椅子と装飾されたテーブルが。更にはバルコニーまであって、そこには様々な植物が植えてあり、王都中を眺められる絶景だった。
開いた口が塞がらないって言葉があるけど……こういう事を言うんだね。
実はお爺ちゃんは超がつくほど偉い人。その割にフリーダム。