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第4話 野郎に告白されても…

ちょっとした小話。


 門を潜った先は、中世ヨーロッパのような街並みだった。

 大通りに人が行き交い、露店からは嗅いだことのないような香ばしい香りが漂ってくる。


「これが王都!」

「これ、あまり馬車から顔を出すでない」

「王都って活気があるんですね、私の故郷と全然違いますよ!」

「顔を出すなと言うとるに、馬車から落ちてしまうぞ」


 心配性な爺ちゃんだなぁ、そんな簡単に落ちるわけ……


 ガタン!


 次の瞬間、道の段差で馬車が大きく跳ね、私は転落した。


「………」


 ・・・マジか。



 ■ □ ■



「お決まり過ぎるでしょ………」


 いや、まさか本当に落ちるとは思わなかった。

 まったく、爺ちゃんもちゃんと注意してくれればいいのに……え?注意してた?

 ・ ・ ・。

 いや、まぁ落ちてしまったものは仕方ないよね!さっさと、馬車に戻るとします……か。


「え"……」


 起き上がってみると気づいた、周りは360°人の脚しか見えない事に。


 うん、そうだよね。この身体って6歳児のものだったよね。

 しかし、まさかこの歳(周りからは6歳にしか見えない)にもなって迷子?になるとは………。


「こんな時は動かないのが1番だな。お爺ちゃんがきっと来てくれるさ」


 自分で言っときながら、なんとも人任せな事である。

 しっかし、これでお爺ちゃん来てくれなかったらどうしよ?金もないしなー。

 ん?何だ、あれ?路地に何やら子供達が入って行く………つけるか。


 3秒前の自分の言葉もすっかり頭から抜け落ち、私は子供達が入っていった路地の前まで移動する。


 あの子供達、路地なんかに入って一体何をしようとしているのか。

 いや、子供達とか言っても恐らく私より(外見年齢は)歳上だけどさ……。


「……ンだよお前!」

「…達の……が……ないってのか?」


 む?揉めているのか?


 私は建物の影に隠れ、声がした方を覗き込む。


「お前!あそこの屋台から食べ物取ってこいって言っただろ!」

「そうだ!お前俺達の言うことが聞けないってのか?」

「で、でも……お金を払わないで取ってくるのはいけないことだって……」

「何だと!?弱虫トールのクセに生意気な!」

「ヒィッ!」


 う〜む、これはどうしたものか。どうやらトールとかいう少年が悪ガキ3人組にイジメられてるように見えるけど。

 しゃあない。可哀想だし、助けてやるかぁ。


「あ〜、君達。弱いものいじめはそこまでにしといたらどうかな」

「あぁ?んだと!」

「なんだお前……は」

「………」


 ん?なんか反応おかしくね?なんで全員黙ってこっち見てるんだ?


「かわいい………」


 と、イジメられてた子が爆弾発言をする。


 • • • • • はぁ!?


「へ、へへっ。誰かと思ったら女かよ……お前、これ以上首突っ込まないってなら俺の彼女にしてやってもいいぜ?」

「いや、俺の彼女になるよな?」

「いやいやいや、俺だろ」


 うん?コイツらは何を言ってるんだ!?初対面の相手に何の脈絡もなしに彼女にしてやるぞ?頭オカシイんじゃねえの!?

 うぉぅ………さぶいぼが止まらぬ………前世でもこんな嫌悪感を抱いた事は無かったぞ。

 出来るならこのまま回れ右して何も聞かなかったことにして帰りたい……いや、行くとこないけどさ。

 とりあえずコイツらは絞めよう。


「……とりあえずその子をイジメるのを止めなさい」

「コイツの事なんてどうでもいいだろ?とりあえずあっち行こうぜ?」


 そう言って悪ガキの1人が私の方に触れようとしてくる。

 瞬間、


「さわるな」


 ゴキッ!


 っと致命的な音が鳴り、触ろうとしたやつが吹っ飛んだ。


 いや、私が裏拳で殴り飛ばしたんだけどね?

 でも仕方ないじゃん?前世が男なのに野郎に告白されても………いや、女に告白されても複雑だけどさ。

 てか私ってこんなに力強かったっけ?


「て、テメェ!」

「何しやがる!」

「うるせーよ、触ろうとしたから吹っ飛ばしただけだろ」

「コイツ!」


 そう言って残りの2人が掴みかかってくる。

 吹っ飛ばしたやつは………あ、伸びてるわ。

 ……ん?死んでないよね?そんな強く殴ったつもり無かったんだけど、吹っ飛ばしたけどさ。

 っと、危ない危ない。


 そう言いながらも組みつこうとしてきた2人を軽々と回避する。

 いや、遅すぎ。こんなんじゃ絶対捕まんないわ。

 私が避けたからか、その場で転倒する2人。


「て、テメェ!何をしやがった!?」

「いや、普通に避けただけだけど」

「チッ!おい!挟み撃ちだ!」


 そう言って私の前後に回る悪ガキ達。

 そして同時に殴りかかって来る。


「はぁ……めんどくさい……なっと!」


 私は前方の悪ガキを下段の水平蹴りで転ばせ、その勢いを殺さずに後ろ回し蹴りで後方のやつの鳩尾を蹴り飛ばす。さらに前方のやつが立ち上がったところで懐に入り、背負い投げの要領で投げ飛ばす。


「はい、いっちょ上がり」


 うむ、悪は滅びた。

 少しやり過ぎな気もしたがコイツらにはいい薬だろう。何より私がスッキリした。


「あ、あの」

「ん?あぁ、大丈夫だった?」

「うん」

「それは良かった、じゃあ私はこれで」


 コイツも私の事を可愛いとかなんとか言ってたからな、面倒な事になる前に離れようそうしよう。


「あ、ありがとう。ごめんね、巻き込んじゃって」

「いや、私がムカついたから吹っ飛ばしただけだし、じゃあ私はこr「あ、あの!」


 なんだこいつ……何でこんなに話を続けようとすんだ。

 私は早く立ち去りたいんだが。


「名前!名前聞いてもいいかな?」

「・・・リーシュ」

「そっか、リーシュ……」


 なんか惚けてるし、今のうちに立ち去るか。

 早いところお爺ちゃんを見つけなければ。

 そうして路地を出た所でお爺ちゃんが私を探しているのが見えた。


「おーい、ここ、ここー」

「おお、リーシュ!あまり心配させんでくれ、誰かに連れ去られたかと思ったぞ」

「あ、ごめんなさい」

「いや、無事ならよい。さぁ馬車に戻ろう」

「うん」


 そう言って馬車に乗り込む。

 王都に来て早々揉め事に巻き込まれるとは……先行きが不安になってくる。





 □ ■ □





「はっ!あれ?あの子は!?」


 そう言ってトールは急いで路地から出る。

 しかし、そこにあの少女……リーシュはいなかった。


「あの子、かっこよかったなぁ……」


 それに比べてどれ程自分が情けない事か。

 それを思うと途端に自分が情けなくなる。同年代のいじめっ子には強く言い返せず、その上歳下の女の子に助けてとは……。


「うぅ……本当に情けないなぁ」


 気が弱い事が恨めしい。それに比べ彼女は歳上相手にも堂々と立ち向かって……。


「僕もいつかあの子みたいに……」


 リーシュがいじめっ子相手に戦っていたのを思い出す。


 僕もあの子みたいに強くなりたい!そしていつかあの子に………。


「よし!」


 そう決意すると少年は走り出しす。

 彼が弱い自分と決別することを決めた瞬間だった。


「ぅう、痛ってて……一体何が……」


 その声を聞いて更にスピードを上げる。

 道のりは長い。

 

 


 

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