Page03 † 犠牲
学「待てよ!!桃!!
おまえが行ってどうする?オヤジなら大丈夫だよ。」
そう言って学は桃を連れ戻す。
桃「でも…」
学「アレが危険なものならなおさら桃はここにいた方がいい。
今の俺たちは何もできな…」
その時身も凍るような出来事が起こった。
?「キャ―――――――――――――――――!!!!!!!!!!!!!」
駐車場の方から女の人の悲鳴が聞こえた。
人々は一斉に駐車場が見える高台へと集まり状況を理解しようとする。
私も高台へと向かった。
そして私は衝撃の光景を見てしまった…。
駐車場で黒いアレが何かに群がっている。
しばらくするとアレは群がるのをやめ、再び空へ上がった。
アレが群がっていた場所には、人間の骨だと思われる残骸が散らばっていた…
綾「嘘でしょ…一瞬で…」
その場に崩れそうになる私を学が支えてくれた。
人々は混乱し逃げまどう。
アレは今度はキャンプ場の方に近づいて来ていた。
学「綾、逃げるぞ。」
綾「うん…でもどこに…」
その時、私は見覚えのある人影とすれ違った。
綾「あの人は…」
私はとっさにその人を呼びとめた。
綾「ちょっと!!!!!待ってください。」
?「はい?」
綾「あなた…さっき駐車場で話してましたよね。
何か知ってるんじゃないですか?アレについて。」
綾は冷たく言い放つ。
綾が呼び止めた人物とは駐車場で話をしていた男の1人だった。
30代半ばで『博士』と呼ばれていた男は「聞かれていたのか…」っとつぶやいた。
男「私は風見という者だ。君たちもああなりたくなければ逃げなさい。」
綾「逃げ場がない。私たちはアレについて何も知らない。
あなたは知っているんでしょう?」
風見「…………。ついて来なさい。」
私と学はお母さん桃、桃のママと合流し、風見についていった。
学「オイ…綾…なんなんだよあいつ。信用できんのかよ?」
小声で私に話しかけてくる。
綾「わからない。けど、私たちには今情報がない。あそこにいたら必ずアレにやられる。
それだったら、少しでも希望がある方に行った方がいいでしょ?」
学は黙り込んでしまった。何か考えるような表情をしている。
しばらく歩くと風見はある建物の前で足を止めた。
綾「あ…れ…???」
学「ここは…」
私たちが連れてこられたのは例の温泉施設だった。
綾「なんでこんな所に?!」
風見「ここの地下室にはシェルターがある。そこにいれば安全だ。」
綾「っ!!なんでこんなところにシェルターなんて物があるの!!
まるでこうなることを予想してたみたいに!!」
風見「……………。」
綾「なんとか言いなさいよ!!!」
学「落ちつけよ、綾…。」
綾「私たちの他にもたくさんの人がここにはいるのに…
すでに犠牲者だって出てるのに…」
私の頬には涙が伝っていた。
そんな私に学は優しく頭をなでてくれる。
風見「行くぞ。」
風見の言葉で私たちは建物の中に入り、エレベーターに乗り込もうとした…。
その時私は気付いてしまったんだ。
いつのまにか桃がいなくなっていたことに…