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王なのに何でかオークに見間違われた!

「まてー! コラー!」


 ワシはひのきの棒を振り回しゴブリンを追いかけている。ワシ、肉体労働に向いてないのに……。


「ゴブゴ……ブヒ」


 ゴブリンにバカにされた気がする。それにしても足が早い(普通より遅いです)ワシの俊足が追いつけないとは……。


「ゴ……ゴブ(泣)」


 なんか憐れに思われている? 近寄られて、肩をポンポンされて走り去った。あれ? 目から汗が……。


 その後、突っ伏したのは、足がガクガクしたからではない!


「ワシ、王様なのに……」


 王様なのにひのきの棒を持ってゴブリン追い回すとかいろいろと間違ってんだろ! 誰だよ勇者召喚しようって言ったの!


「……ワシだった」


 さらに落ち込むワシの脳裏に勇者召喚を行おうとした光景がよみがえる。


 あの時は、書類を片付けて一息入れているときだったな。


「ビーフシチューとカツ丼と中華丼持ってこい!」

「それおやつに食べる量じゃない」


 宰相の戯言は聞き流して、机にのせられたそれらを食べ始める。


「宰相、面白い話はないか?」

「最近、さらにお腹回りが危なくなった方に気付かれないようにしてお腹回りを計ってやるのが城内で流行っていますね」

「そんなのどこが楽しいの?」

「楽しいらしいですよ。扉をわざとギリギリで開けて出にくそうにしているのを見たり、兵士が両側から近寄って背後で剣を横にして計ったり」

「それってワシの事じゃないよな! 最近、メイドがドアに挟もうとしたり、兵士が暑苦しく寄ってくるんだが!」

「さあ? あくまで流行りですから」

「やってるかやってないかは答えてないよね!」

「さしあたってお腹回りにだけ威厳を集中させるのは止めた方がよろしいかと……」

「うぬぬぬ……」


 ワシは八つ当たりのように目の前にある食い物をかっこんだ。その時にふと思い付いた。


「たしかこの城に魔方陣があったよな」

「古い文献に勇者召喚の魔方陣とありましたな」

「よし、勇者を呼ぼう」

「……はい?」

「勇者を呼んだ王! これで威厳は鰻登りだ」

「おい、待てや豚王!」

「宰相! お前言うに事欠いて豚王って言ったか!?」

「王よ、いいですか? 今、世界は魔族と呼ばれ敵対していた者達と和解して平和な世界になっているのですよ」

「……たしか4代前に調印式を行って魔族の土地ーー魔王領との貿易が始まったのもその頃だったな」

「今、そのような事をすれば世界に喧嘩を売ることとなります!」

「え~! いいじゃん。勇者見たいし~!」

「国王!」

「国王としての命令じゃ! 勇者召喚を実行しろ!」


 こうして勇者召喚が行われた。



「そうだよな~。あんな事言わなければこんな事には……ん?」


 回想から戻ると目の前に白銀の鎧を着た少女がこっちを見ていた。しゃがんで首をかしげて見ている。……どっかで見たような?


「お嬢ちゃんどうsーー」

「えい!」

「いてぇぇぇぇっ!」


 いつの間にか抜いたレイピアで額を突かれた! 何で? ワシは怪我がないように筆頭魔術師に結界かけてもらったよな! 鼻くそほじりだったけど。それ貫いてくるって、何で?


「何すんだガキ!」

「……オーク」

「指差すな! オークじゃない! 王!」

「オークキング?」


 誰がオークキングだ! 捕まえてこめかみグリグリしてやりたいが、レイピア持ってるので近づけない。


「そのレイピア……」

「家にあった」


 よく見ればあれ魔法銀ミスリル製じゃないか? 結界貫いたのも頷けるわ。


 そのまま睨み合っているとワシの隣に人影が一瞬で現れた。


「王様、今日は何グラム痩せました?」


 この不敬な奴は筆頭魔術師。前にドンタ〇スって叫んでた奴だ。そいつが少女の方を見るとその前にひざまづいた。


「これは公爵家のお嬢様。こんなところで何を?」

「オーク」


 こっちを指差すな!


「このオークは狩らないでください」

「お前までオーク扱いかよ!」


 筆頭魔術師はこっちを無視して少女に話しかけた。


「王宮に跳びますのでお掴まりください。お姉さまもおりますよ」

「わかった」


 そう言って出した手を恭しく取る筆頭魔術師。


「よし、早く戻るぞ!」


 ワシも筆頭魔術師にのローブを掴む。


「ブーーー! 重量オーバーにより魔術が発動しません!」

「は? 何いってんの?」

「王様、大変失礼ですが、王様の体重って私の魔術で運べる重量のギリギリなんですよ!」

「は? 始めて聞いたぞ?」

「なので、離せ!」


 ワシの手を叩き落として魔術を発動しやがった!


「後で来ますね!」

「ね! じゃねえよ!」


 それから迎えに着たのは1時間後だった。


「いやー、すっかり忘れてました」


 ざけんなぁぁぁー!


「オーク!」

「違いますよ! お義兄様よ」


 公爵家の少女は王妃の膝の上に座って指差した。見たことあると思ったら王妃の末の妹だった。それにオーク呼ばわりって……泣いていい?



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