~ 日本酒 の ワンカップ ? ~
駅前通りから 歩いて7分 …
裏野ハイツ の 前迄 歩くと
「あらっ? 貴女 引っ越して来た人?」
70代くらいだろうか …
小柄 で 感じの良い女性が
こずえ に 声を掛けた
「はっ はい … 瀬川です … 宜しくお願いします … あの これ … 引っ越しの ご挨拶にと思いまして … 」
こずえ は 二枚一組に 包んで貰った
キッチン布巾 を 差し出した …
「あらぁ ~ こんな事しなくていいのよ~何だか悪いわね … でも 折角だから 有り難く頂戴するわね 有り難うね~ あっ !私はね 201号室に住んで居ます 三上 正子ですぅ~ 覚え易い名前でしょ ? アハハハハ !何か 解らない事があったら 聞いて下さいね ! あっそうそう ! ゴミステーションはあそこね 月・水 ・金 は 一般ゴミと生ゴミ … 木 は プラと缶ね 火は 特殊ゴミ …特殊って何 ?って 話しよねぇ ~ アハハハハ! 」
201号室に住む 三上 正子は
其の後も 弾丸トークを繰り返し
こずえ が やっと 解放されたのは
電気屋の配達員が 裏野ハイツに 訪れてからの事だった …
冷蔵庫 と 洗濯機 は 程無く 設置された
丁度 電気屋の配達員 と 入れ換わりで
家具屋の配達員が 訪れた …
小さめの ダイニング テーブル も 置かれた
早速 ダイニング テーブル を 拭き
「少し早めの夕食」
と 買って来た お弁当を 食べ始めた …
こずえ は 中々 美味しい味付けの お弁当を 食べながら …
此処に 越してくる時からかな …
何だか …
善い事が 続いているような …
そんな 気がする …
少し 嬉しいな …
一人 微笑みを浮かべ
食べ終わった お弁当のケースに
「ご馳走様でした ! 美味しかったです」
と お礼を言い ゴミ箱へと 入れた …
其から 明日 裏野 ハイツの 住人達に
引っ越しの 挨拶回りを する為に購入した
キッチン 布巾の 入っている 袋を
何とは無しに 覗いた …
「えっ ?」
袋の中には 何処で紛れ込んでしまったのか …
日本酒 の ワンカップ が 1本 入っていた
「電気屋さんにも 家具屋さんにも … お酒なんて 置いて居なかったのに … 雑貨屋さんにも … お弁当屋さんには 缶ビール は 置いていたけど … 」
こずえ は お弁当屋に 電話を掛けてはみたが …
やはり 手元にある 日本酒の ワンカップは 扱っていないと言われた …
「変だな … 私は 日本酒 飲めないけれど … 誰かが 飲みたくて 買った物なら 可哀想だな … 」
と 悲しそうに 呟いた …
そんな事があった 夕食 の 後 …
こずえ は 段ボールを 開き
備え付けの クローゼット や 押し入れに 衣類の収納を始めた …
あっという間に 時間は 過ぎてしまい …
時計が 深夜を回った 頃 …
眠気に堪えられず 眠りについた …
ザワザワ ~ ザワザワ ~
何処か 遠くで 大樹が 葉を揺らす 音が聴こえた …
時計 が 2時を指すと …
こずえ の 躰は ムックリ と 起き上がり …
料理にでも使おうかと 冷蔵庫に入れたワンカップ を 取り出した …
ルームウェア姿 で 家を出て 階段を下り…
裏野ハイツ の 横にある 卵形の石へと向かった …
本人 は 無意識 と 言うよりも …
完全に 眠っている …
卵形の石の前に立ち 一礼すると …
プシュッ !
と ワンカップ の 蓋を開け …
卵形の石の上から 日本酒を 掛け始めた …
1/3 程 掛け終えると …
今度は 石 に 日本酒を掛けながら
右周りに 石の周りを 歩き始めた …
日本酒 は 丁度 石の周りを
一周する頃に 全て 無くなり …
こずえ は 初めと 同じように 一礼 すると …
203号室へと 帰って行った …
其から 起き上がる 前と同じように
再び ベッドで 眠った …
夢の中 …
ザワザワ と 大樹の葉が
揺れる音が聴こえた …
ア リ ガ ト ウ …
と 言う 何かの 声と 共に …




