~ 血の通った 人間であれ ~
医師と 医者 は 違うぞ !
こずえ …
医師 に等 成らんくていい!
医者であれ
こずえ …
「此は … 夢 ? 」
祖父の声が 聴こえる …
祖父は 何時も 私に そう聴かせた …
師 等 に なってはならんぞ !
ふんずり返って 人の痛みが解るものか!
血の通った 人でなくては ならん !
医者とは !
死ぬ迄 医学を学び続ける者の事を言うのだ !
良いな こずえ …
医者であった祖父は
医師連 の 中で 変わり者と言われていた …
年に数回の 学会に出席する度に
凄い剣幕で帰って来ては
私に そう聴かせた …
人の 心の痛み …
血の通った 人間であれ …
医師達から 変わり者と言われた 祖父だけど …
私には 優しくて 温かかった …
お爺ちゃん …
まだ 駄目みたい …
私 怖い …
犯人は捕まっていないし …
まだ 立てないよ …
首もとに走る 冷たさに
こずえ は ハッ と 瞼を開けた …
首もとを 走る冷たさは
こずえ の 涙 …
どうやら こずえ は
泣き疲れて 眠ってしまったらしい …
夕食の時刻となったのか
配膳車の音が ガラガラと響く …
こずえ の 元にも 先程の看護師が 夕食を運んで来た
「有り難う 米本さん … 」
こずえ は ニッコリ 微笑んだ
「いっ… いぇ~ そんな … 医師 …」
と 米本看護師 は 照れ笑いを浮かべた
そうよね …
ナースにとって 医師は …
何時も 偉そうに
振る舞うと 思われてしまう ものよね …
こずえ は そんな事を考えながら
気の すすまない
夕食を 少しだけ 口にした …
夕食を済ませ 下膳が終わり
軈て 消灯の時刻となった …
患者として 入院し…
毎日 毎日 過ぎて行く 時の中で …
こずえ の 怪我も
少しずつ 完治へと 近づいて行った …
額の中心から 前頭にかけての
縦傷が 残りはするが …
犯人 は 未だに 捕まっていない …
命に別状なく 躰の傷が癒えても
心の傷は 簡単に癒せはしない …
況してや 犯人は
野放しのままなのだから…
事件から 1ヶ月 が過ぎ …
警察は マンションの
防犯カメラに映された 犯人の映像を 公開した …
然し 上手く行かないもので …
警察に 寄せられる情報は 乏しかった …
犯人が 捕まる事の無いまま
事件から3ヶ月が過ぎた頃 …
こずえ は 大学病院に 復帰したが
抑えられては いるものの …
患者を前にして 躰が震え出したり
息苦しくなり
呂律が回らなくなる 等 …
心因性のものから成る
それらの 症状に悩まされていた …
夜は 決まって 悪夢に魘される …
悩みの淵で
もがき 苦しみながら …
こずえ は 大学病院 を 辞めた …
勿論 …
医長始め 医師達は 皆 止めたのだが…
こずえ の 意思は 固かった …
事件発生から 9ヶ月後の事である …




