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やめて下さい、死んでしまいます!  作者: 雲雀 蓮
青年期(高校生~)
32/40

まだ見つめあってお話しできません




いつかそのうち何とかなると思っていた。

でもそんなことあるはずもなく、日々は流れていった。


誰かの助けがあれば何とかなるというものじゃない。

確かに社会的な補助は必要だろう。

社会で生きて行くためには。


生きているとは、どういうものだろうか。

そう考えてしまうと息苦しくて仕方ない。






「はぁ・・・」



ため息とともに悲しみを吐きだせたらいいなと思う。

暑い、とつぶやくことで気分を紛らわせたらいいなぁ。

向日葵ちゃんみたいに。



「あーつーいーよー!誰かなんとかしてぇー!」

「うるっさい!お前が暑い暑い言うからなお暑いわ!!」

「瑠佳うるさーい!暑いもんは暑いのー!あたしの所為じゃないー!」



「あいつら仲いいな」

「・・・・うん」



余りの暑さに頭がぼぅっとする。

やばいと感じて鞄から水筒を出した。これは本気で暑い。


ニュースでも言っていたけれど、年々暑くなっている気がする。

これでは人は生きていけないのではないか?

いつか別の惑星とかに避難しなければいずれ破滅するんじゃないかなって思う。

それくらいには暑いと思う。


そう言えばすごく遠くに地球に似たような惑星が見つかったって話もあったなぁ。




「とりあえず、扇風機じゃなくてクーラーが欲しいよねぇ」

「それは同感だ」




暑いと言って机に突っ伏する二人。

腰から真っ直ぐまがっているように見えて少し笑ってしまった。

・・・エビみたい。



「つーか、この後炎天下でサッカーするとなるとなぁ」

「そーだよ。瑠佳はさ、そう言うの耐性があるかもだけどあたしはないのー」

「なにおー」

「なによー」



二人ともだんだん元気がなくなってきている。

言い争う声が徐々に消えていく。

そしてとうとう声も聞こえなくなった時授業が始まった。



キーンコーンカーンコーン!



「こんにちは、午後の授業を・・・って。え!?」



机に倒れている二人を見て先生は驚きの声をあげる。

石垣先生だった。どうやら本気で倒れていると思ったらしい。

細身の腕で二人を抱き起す。

勢いそのままに脈まではかる。



「・・・なんだ、驚かせないでくださいよぉ」



二人ともうっすらと目を開けて体を起こした。

それを見届けてから先生は教卓に立った。



「さて、今日は教科書の~」



授業中みんなの仰ぐ音が止まることはなかった。

漸く肌身に夏がしみ込んできたように連日暑い。

なぜかそれが、さみしくてたまらなかった。










「ふぅ・・・こうも暑いとなぁ」



シャツの中に少しでも風を入れようとする小田先輩を見つつペンを走らせる。

しゃっしゃという音と、シャツと肌の衝突音が完全に一致していく。



「相原さん、大丈夫?顔真っ赤だよ?」

「だ、大丈夫です」



とは言ったものの、やはり暑いことには変わりない。

顔も依然として赤いだろう。先輩の心配そうな視線が刺さる。


でも、なんとなく平気な気がするのだ。

食欲はあるし、水分だってとっている。何も問題はないはずだ。

しかし小田先輩はそうは思わなかったらしい。



「今日はここまでにしておこうか」

「でも、」

「体調崩したら元も子もないよ」

「・・・・ぅ」

「なんだか今日は特に相原さんが無理しそうだからね」



そう言って先輩は帰り支度を始めた。

それに倣うように急いで片付けた。


なんでだろう。

なんで、先輩にばれたのかな。

私ってそんなに分かりやすいのかな。






私の生きている意味ってなに。

そう考えただけで足元がぐらぐらしだす。



今日はそんな日だった。

だから、一生懸命になっていたのだ。

自分の意味を確立したくて。誰かに認めてほしくて。

生きていていいんだって思いたくて。




でも、やっぱり不安で仕方なかった。


私は誰にも必要とされていない。

どうあったってそう思えてしまうから。

私そのものに価値あるものが、一つもないから。


誰かに必要と思われるような要素が一つもないから。








先輩と一緒に部室を出て、職員室に向かう。

部室の鍵を返却しに行くのだ。

鍵は部員であれば貸し出してもらえる。

その代り返し忘れたり、戸締りを忘れたりすると当分借りれなくなる。

ついでにお説教も頂けるらしい。向日葵ちゃんが言っていた。

(向日葵ちゃんが先輩から聞いた模様)


私が返しに行こうとしたら、先輩が「僕が行くよ」といって入っていってしまった。

先に帰るわけにもいかず、廊下で待つことになった。

といっても鍵を返すのなんてすぐ終わるのだけれど。



パタパタ…



誰かの足音がする。

いつもの様に下を向いていた私はその音で顔をあげた。

誰だろう、と興味がひょっこり顔を出したのだ。



「・・・・・」



黒髪のボブヘアーの女の子。

どちらかというと細身でかわいらしい女の子。

その子はじっと私を見つめていた。

興味本位で見ただけの私をじっと見つめ、その眼はまるで──。



「お待たせ、相原さん」



突然かけられた声に驚いて、女の子から目を離す。

小田先輩はにこやかな顔で見つめ返してきた。



「帰ろうか」

「は、はい」



もう一度女の子がいた場所を見たが、そこには誰もいなかった。








「先輩は、家どっちですか?」

「僕はねあの大通りを真っ直ぐ行くんだ。相原さんは?」

「あ、私も真っ直ぐです」

「そっか。もしかして家あっちの方?」

「はい」



住所こそ言わなかったが、先輩の家が割合遠くにあることが分かった。

先輩の通学路が、私の家の近くを通るという確認をした先輩は安心したように笑った。

別にそこまで気を使われなくても、と言ったのだけれどにこやかにスルーされた。



そんな会話の途中でも先ほどの女の子のことが気になった。

同じ年には見えなかったけれど、いくつの人かはわからなかった。

学年を示す部分を一切見なかったからだ。


私の学校では制服の腕章や上履きのラインの色で学年が分かる。

学年ごとに色がループして決まっている。

例えば今一年生は基本的に全て赤。二年生は青、三年生は緑と決まっている。

今の三年生が卒業してしまうと次は一年生が緑となるのだ。


基本的にそれで学年が分かるので先輩かがわかるのだ。

自己紹介しなくてもわかる要素があるとありがたい。




彼女の足音は聞いた。でも上履きは見なかった。

上履きを見たからと言って名前やクラスがわかるわけじゃないけれど。


ただ、あの真っ直ぐ私を見ていた時の視線がどうしても忘れられない。

ずっと前から知っていたかのような、強い意志の籠った視線。


私に対して何か言いたげな、そんな思いのこもったものだった。


何だろうと、声を掛ければよかったのではないだろうか。

もやもやした気持ちがずっと胸のあたりにある心地だ。

今度もし出会えたら、勇気をだしてみよう。

「どうしたの?」ってくらいは言えるようになりたいから。











「あーついー」

「おまえ、いい加減にしろよー」

「だって暑いものはーあついーものー♪」

「歌作ってんじゃねーよ」

「きゃーるかくんこわーい」

「棒読みにもほどがあるだろ」

「あ、俊哉じゃん」

「お前ら、仲いいのはいいが、次体育だぞ」



「「ええーーーーーーー!?!?」」



「さぼりたーい♪」

「さぼりたーい(棒)」


「あの、向日葵ちゃん、一緒にいこ?」

「(ガバッ)うん!!」


パタパタ


「あいつ、ずりーよー」

「・・・お前は俺と一緒に行くぞ」

「うーーー」




今日の体育はマット運動だった。

サウナみたいな体育館で向日葵ちゃんは驚異の身体能力を見せた後、

次の授業でいつも以上にだらけていた。





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