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やめて下さい、死んでしまいます!  作者: 雲雀 蓮
青年期(高校生~)
28/40

初めてこんなに長考しました、多分



部活、どうしよう。



私がそう悩み始めて、一週間。

向日葵ちゃんはやはり美術部に入るようだ。

あの後勝手に一人で帰ったことをひどく怒られた。

勿論次の日は気分が沈んだままだったので、授業の内容すら覚えていない。

自分に非があるのにそんなだったので、本当に申し訳なく思う。


「・・・・はぁ」

「ため息はダメだよ、幸せ逃げちゃう」

「・・・・ぅ。うん」


困った。


みんな決まってきて、見学をさせてくれる部活よりも、体験の方が多くなってきた。

つまり否応なしに人と触れ合わなくてはいけない状態になってきたのだ。

そうなれば、決められないどころではない。

そもそもどういう部活か知ることもできない。


まぁ、最終的に何も入らないということもできる。

それが一番だ。

でも向日葵ちゃんが一緒に回ってくれるので、なんとか決めて安心させたい。

(彼女のは決まったけれど、私に付き合ってくれている)


なんというか、優しさが、辛い。

でもそれが言えない自分がいけないんだけれど。



・・・・・なんて言っていても仕方ない。

よく考えてみれば、中学もまともに行かなかったし、部活なんてもっての外だ。

だからいい機会かもしれない。

私の初の、部活動!向日葵ちゃんの言ったようなキラキラした高校ってイメージ。

変われる、とまではいかなくても何かきっかけがあるかもしれない。

現状を打破できるような、夢のような、・・・・・ないか。

都合のいいように解釈しても頭のどこかで分かる。

そんなことはない。

きっと、何も変わらない日々が流れていく。


「そう言えば入学して一週間になるのかぁ。ってやば!部活見学そろそろ終わっちゃう!」


私の代わりと言わんばかりにあたふたする向日葵ちゃん。

あぁ、なんだか申し訳なさがメーター振り切っちゃうよ。

ごめん。

どこにも入る気がないのに、一緒に回ったりして。

本当に、ごめん。

目を閉じてみたって彼女の声は授業開始まで聞こえてきた。






お昼休みになって、わざわざ2組から瑠佳くんと俊哉くんが来た。

みんなお母さんがお弁当を作ってくれるので、私と向日葵ちゃんの机で一緒に食べる。

椅子は丁度他の教室に行く人のを借りた。

ちょっと狭いけれど、4人一緒に食べられる。


「そーいえば、瑠佳はサッカーでしょ?俊哉はどうするの?」

「部活なら、まぁ、柔道だ。丁度入っていた道場と重ならない活動だったから」

「ふぅーん?で、結局俺の誘いを断るわけだ?」

「サッカーに興味がない」

「それでも男かよぉー」

「というか兼部しないの?二人とも」

「まぁ、他にめぼしい部活もないからな」

「右に同じー。つーか、ほとんど毎日あるからな。入れないってー」

「・・・・・・」


みんなもう決まっているのか。

話を聞きながら茫然とする。

まぁ、そうだよね。

今までの延長線上の部活を選べば、問題はないもん。


”今まで”が何もない私なんか、決まるわけない。

入れてくれる部活だってあるはずない。

入っても迷惑なだけだ。



だから、やっぱり、やめておこう。




「天音は?」

「・・・・・え?」

「部活、なに入るの?」

「・・・・・・」



さぁ、言わないと。

優しく聞いてくれた瑠佳くんに対してならば言えるかもしれない。

『入らない』と。そう言えば向日葵ちゃんにもわかるはず。

迷惑かけてごめん、と言えるはず。


「俺のおすすめはサッカー部のマネージャー」

「下心見え見えだぞ、鎌田」

「何言ってんだよ。そう言うお前は何部おすすめすんだよ!」

「そうだな、相原は文化系の方が合うと思うぞ」

「じゃぁ、私と一緒に美術部とか?」

「やめとけ、やめとけ。お前と四六時中いたら天音がかわいそうだ」

「ほほぉ?喧嘩売ってんだね?買おうか、言い値で」

「やんのか?」


言えなかった。

言えない内になぜか向日葵ちゃんと瑠佳くんの喧嘩が始まりそうだった。

なぜかな、なぜそうなったの?

喧嘩と言ってもとても楽しそうにしているから、本気ではないだろう。たぶん。


「相原」

「・・・・・ぇ?」

「俺の一番のおすすめは、文芸部だ」

「ぶん、げい?」

「小説とか、詩を書くらしい」


二人が言い争いをしている横でこっそり俊哉くんが教えてくれた。

うーん、その部まだ見たことない。

というか掲示板にあったっけ?思いだせない。

でも部活動一覧って言われて配られたプリントには書いてある。


「人が少ない上に、活動日も少ないから無理なくできるんじゃないかと思って」

「・・・・・かけ、るかな?」

「やってみてから考えてもいいんじゃないか?」

「・・・うん」


そう背中を押され、放課後を迎えた。










掲示板をもう一度見直してみると、三階の空き教室を使っているみたいだ。

丁度水曜日にしか活動していないともかいてあった。

よかった、今日を逃したら見れなかった。

ちなみに向日葵ちゃんは今トイレに行っている。

あの後ふざけすぎてお弁当を食べ切る前に予鈴が鳴った。

急いでかき込んだ結果、今お腹の調子が良くないそうだ。



なんだか、待っているのも置いていくのもかわいそうになってきた。


「うー、天音、先行ってて」

「え、でも」

「・・・・・だ、めかもー」

「・・・・ぅ、わ、わかった・・・・」



彼女は変に繊細だと、いつだったか瑠佳くんが言っていた。

わたしもそう思う。



で、一人で文芸部の前まできた。

明かりがほんの少し点いているから、誰かいるのだろうことは判った。

でも開ける勇気がない。あ、開けなきゃ始まらないんだけれど。


うーうー、と扉に手をかけても引けない私。

先ほどから1ミリも扉は動かない。

もはやただ扉の前に立っているだけの自分が恥ずかしい。

もう向日葵ちゃんのところに戻ろう、と決めた瞬間扉が開いた。



「っわ!」

「え」



黒髪で黒縁眼鏡の男の人が出てきた。

私よりも少しだけ背の高いその人は、片手に文庫本を持っていた。


「あ、ああ、あの」

「・・・・・・・・も、もももしかして、け、見学で、すか?」

「あ、っはい」

「ちょ、ちょっと、待っていてもらって、良いですか?これ返してきたいので」


どうやら持っていた本は図書室で借りたものらしい。

たしかこの間図書館利用方法を教えてもらったなぁと思いだす。

この学校は生徒手帳はなくて、カードが配られる。

名前、所属と言った情報とバーコードが書いてあって、身分証明にも本を借りる際にも使えるのだ。

説明されただけで、やったことはないけれど。


ちょ、ちょっとやってみたいなぁ。

着いて行ったら、見れるかな?



「・・・・ついて、行っても、いいですか?」

「え、あ、いいですよ?」



二人して結構な割合でどもりつつも、何とか会話成立している。

この人もしかして、私と同じで、人見知りかな?

足と手が一緒に動いているし、なんだが表情もぎこちない。



この手の人は、私の周りに一人もいなかった。

みんなしっかりしているし、はきはき喋る。

だから、私一人だけできない子みたいな、雰囲気だったのだ。

逆にどう接したらいいのかわからなくなってきた。

いつも通り、いつも通り。

落ち着いて脈を測りながら、息を吸おう。




・・・・・・・・・あれ?

心拍数がまた上がっていない。

この間の人と同じだった。

穏やかなオーラというか、似た者同士の予感がするというか。

まさか、この人先週ぶつかった人?



じーっと彼の背中を観察する。

それに気付いた様子の彼は私を待つように、ゆっくり歩きだした。

並んで歩く形になってもまだ心拍は変わらない。

うーん。みんなもこんな感じだったらきっと大丈夫なのに。



「そ、そういえば、お名前は?」

「あ、あえと、相原です」

「ぼ僕は、文芸部部長の、小田って言います」



部長さんだったのか。

ということは先輩、当たり前か。

体験入部している感じではなかった。

部長ということは三年生だろうか?

あまり良いとは言えない顔色で小田さんは教えてくれた。


文芸部に入ってくれる人がほとんどいなくて、廃部寸前なのだと。

昨年度までは3人以上(小田さん+2人)居たのだけれど、全員卒業したらしい。

だから今年部員が集まらないと、同好会になってしまう。

一年先輩と一緒に居た部活で、彼自身気にいっている場所だからなくしたくない。

でもどうしようもなくなってしまったのだと、彼は言った。

勿論どもりながら。

どんなに閊えても彼はしゃべるのを止めなかった。

きっと私が止めなかったこともあるけれど、それ以上に彼も一生懸命だったのだろう。


図書館で本を返して、借りるまでずっと話してくれた。

彼の気持ちを推し量るように、私もずっと静かに聞いていた。










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