表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やめて下さい、死んでしまいます!  作者: 雲雀 蓮
青年期(高校生~)
24/40

信じてみたいと思いました



入った教室には、知った顔が半分もいなかった。

というか知らない顔の方が圧倒的に多い。



「セーフっぽいね」

「う、うん」



ぼそりと耳元で囁いてくる向日葵ちゃん。

それに同じくぼそりと応答。

教室の中にすでにいた人の何人かがこちらを向いた。

どうやら先生はまだ来ていない。


名簿代わりの座席表を見て席を確認する。

何とか名前番号順でうまく隣同士になれた。

よく見ると男女混合の並びになっている。


「うーん、瑠佳の言葉ももっともかもしれない」


そう向日葵ちゃんが呟くほどには強運だと思う。



席を確認し終わって、自分の席につく。

ガタガタとそこそこ大きな音が教室に響いた。

ほとんど誰もしゃべらないこの緊張感は何とも怖い。

喋っている人は何人かいるんだけれど、黙っている人が多いのだ。

多分、出身校が一緒の人がいるか、居ないかの違いだろう。

向日葵ちゃんにはその恐怖感がないようだったけれど。


「それにしたって、急がなくってもよかったじゃん」

「う、そうかな?」

「あんなに下駄箱のとこで急げ―とかっていうからさー急いだのに」


口をとがらせて向日葵ちゃんは文句を並べていく。

やれ下駄箱の位置が低いだの、やれ話が長いだのと続けている間に扉が再度開いた。



「みんなさんそろっていますか?お待たせして、すみません」



教卓に先生と思しき人がたどり着くまでに、うろうろしていた人たちが席についた。

それを見届けて、先生は静かに黒い本(出席簿だった)を教卓においてから言った。



「僕がこのクラスの担任になる石垣です」



見た感じ若々しい先生だ。

多分、30代前半から真ん中くらい。

あのカウンセラーのお兄さんと同じくらいだからそれくらいだろう。

目元や口元の皺や影が少ないし、表情が柔らかい。


今日の予定や、動きなどを説明し始めて数分。

とんとん、と肩を隣の向日葵ちゃんに叩かれる。

びっくりした。


どうしたんだろうと、目を彼女の顔に向かわせる。


「(あの先生かっこよくない?)」


口パクでこんなことを問いかけてきた。

話を聞こうと言ってみたものの、彼女は話そっちのけで先生に熱視線。

こりゃダメだ、と言うこともできないので放っておく。



(別にそこまでじゃないじゃないか)と思って、はっと気づく。

何でもできる向日葵ちゃんと同じ思考回路にしちゃダメだ。

話きちんと聞いておかないと、後で誰かに迷惑をかけてしまう。





でもやはり、そういう感覚が失せてきているのだろうか。

あの日から大人の男性に対して必要以上におびえるようになった。

勿論他の老若男女問わず、人が苦手にはなったのだけれど。

とびぬけて、成人男性が苦手になった。

あの男と同じ体系の人が、特に。



その体型と言うのが中肉中背。

つまり平均的な体型と言える。

だから私やカウンセラーの人たちは困ってしまったのだ。


どうあがいたって恐怖の対象から逃げられはしないのだから。




机の下で握りこぶしを作って下唇をかんだ。

怖くてしょうがない。

後ろと、ななめ右後ろ。見知らぬ男の子が座っている。

それ以外は女の子だけれど、見るからに性格のきつそうな子もいる。

恐怖で体が震える。

もうだめかもしれない。帰りたい。


誰も私を見ていないと思うけれど、見えない視線が体に刺さる。

そんな気がしてたまらない。



「じゃぁ、これから一年よろしくお願いします」



石垣先生の自己紹介と、今日の予定が告げられた後。

恒例の、自己紹介の時間が始まってしまった。

しかも私の紹介は後半組だった。

声が上手く出る保証もない。というか、立ち上がれる気がしない。



前半の人の紹介をテンプレートして、自分に使うんだ。

それだけ、それだけでいい。

最低でも名前くらいは、言おう。

出身学校、名前これでいい。

趣味とか、特技とか言えなくても大丈夫。問題ない。



ガタン、と前の席の人が座ってから、立ち上がる。



「あ、え、っと」



声が震える。

足ががくがくして、今にも倒れそうになる。

一度閊えてしまった言葉は続かなかった。


みんながざわつく、そう感じた瞬間、


がたんと、誰かが立ちあがる音がした。

音のした方を見たら、向日葵ちゃんだった。



「この子は、天音って言います。私は向日葵です。

 二人とも同じ学校出身で、今でも親友です。これからもずっとそうです


 天音はとってもシャイな子なだけで、悪い子じゃないです

 そして私もちょっと軽いだけで、悪い子じゃないです。以上です」



冗談交じりに向日葵ちゃんが助けてくれた。


「自分で悪くないって言うのはどうなんでしょうか?」


先生も苦笑いしている。

その笑い声も何のその。



「先生が私の内申には”真面目でいい子”って書くのを忘れないように言ったんですよ」



なんて冗談をクラスみんなの前で披露して見せた。

向日葵ちゃん、つわものすぎる。

私の方を一瞬見てウインクしてきたのを見て、別の意味で頬が紅潮する。

これは、やばい。恥ずかしい。


終わってから、向日葵ちゃんにはお礼を言った。

すると、彼女は笑って「先生へのいいこアピールだよ」って言ってくれた。

本心じゃないといいな、と思いつつ、疑ってしまう自分が悲しかった。



でも、そうだなぁ・・・あの自己紹介も、嘘じゃないと、嬉しい。












「瑠佳ー、なんて顔してんのー」

「うーあー、お前になんかわかんねーよ」

「これで連続何年何だろうねー?」

「小学校一年位じゃないか?一緒だったの」

「うーるーさーいー」

「神様に嫌われてるんじゃないのー?」

「・・・・・・・はぁ」

「あ、」

「やめとけ、本気で参っているみたいだからな」

「・・・・・・・・・ふーん?」










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ