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やめて下さい、死んでしまいます!  作者: 雲雀 蓮
幼少期(幼児~中学生)
17/40

魔法が使えるようになりました




変われない、そう断言された。


でもそんなに焦りが加速しないのはきっと。

その後に言われた、「私が私自身を嫌わないでほしい」という言葉だ。



自分のことを嫌ったのは何時だって周りの人だって思っていた。

思い込んでいた。思わずにはいられなかった。





だってこんなにも面倒な人間はそういないから。




でもいつからだっただろうか。


いなくなってしまえばいい、と思いだしてきたのは。

この世からいなくなるのが正しいことなのだ、と考えるようになったのは。








ふっと、目を覚ました。


まだ周りは暗い。

夜にはない、薄ぼんやりとした暗さ。



朝というには早すぎる、そんな時間。




喉の渇きを覚えて台所へと移動する。

階段のギシギシという音を立てて、家族の誰かを起こさないように慎重に降りる。


冷蔵庫を開けると麦茶があったので、コップに少しだけいれて飲む。

すっかり冷えているそれは喉をすっと通り抜けて、体中にその冷たさが広がる。



おいしい。

素直にそう感じる。



もし、死んでしまったら。

こんな感覚もなくなってしまうのだろうか。


あの日のような、地獄のような世界にたった一人取り残されるのだろうか。

でも死んでしまえば、楽になれるようにも思う。

どちらだろうか、私にはわからない。





痛い思いをしたくはない。

苦しい思いはしたくない。



一人ぼっちで抱える恐怖は、こんなにも重い。



今までの人生は、あとどれだけ”続いてしまう”のだろうか。



そう考えると、不安の風が体中を巡る。

足元が不確かになって、涙が出る。

ここに居られないほどの恐怖が、私を襲うのだ。



生きていることへの不信感。

食べ物を胃に流すことへの不快感。


どうしたって、長く生きられる状態じゃない。


だったら、今急いで死ぬことはない。

そう語る誰かが、頭の中にいる。

だから私はまだ生きている。




シーンと静まり返った家の中。

私は一人で静かに泣いた。

声も出さずに、不安からくる涙を流していた。






私は変われない。それは正しい。

こんな状態がずっと続いてきたのだ。

今すぐに変われない。

誰にも治せなかったのだ。

仕方ないのだ。


でも、私は変わりたい。




今の私自身がなによりも嫌いだから。





そんな思いを見透かされた。

あからさまに、そう言う態度をしていたのだ。



ふっと気づくと明るくなってきている。

時刻は午前5時過ぎ。



こんな風にすぐ変われたらなぁって思って笑ってしまう。

できたら苦労はしないじゃん、とまた声がする。




(・・・変わらなくたって、誰も嫌ったりしてなかったなぁ)




誰もが変わりだしていた。

私だけ、何も変わらず生きている。



でも、誰も私への好意が変わらなかった。

今まで通り、それ以上に優しくしてくれた。


お姉さんに気付かされて漸く分かった。

私は、急いで変わる必要はないのだ。












また前みたいに少しずつ、頑張っていけばいい。


前の分を崩されてしまったけれど、また積み直せばいい。

ペースなんて気にする必要なんてなかったんだ。



本当に大事なことは、もっと別なことだろうから。



眠くて下がってくる瞼を押し上げて、部屋を見る。

戻ろう。

もう少しだけ横になって、休日だからお昼まで眠ろう。

お姉さんが言っていた。

あんまり安定しない日は、眠るか泣いちゃった方がいいと。

その方がましになるだろうから。

それでもだめだったら来て。


お姉さんは辛そうな顔で言った。

自分の意見を大事にしてほしいと。

私の調子は、私にしかわからないのだから、と。




「だいじょぶ、だいじょぶ」



だいじょぶ、と三回小さな声で唱える。

すっと心が軽くなったように思える。

本当に魔法使いだったのは、実はお姉さんだったのかもしれない。

そう思ってくすっと笑えた。







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