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やめて下さい、死んでしまいます!  作者: 雲雀 蓮
幼少期(幼児~中学生)
15/40

変わりたいと強く願いました




その後から、彼らに絡まれることはなかった。


よほど俊哉君が怖いのか。

それとも次の機会を狙っているのか。

それはまだわからない。



それよりも、私は俊哉君の変化の方が気にかかっていた。



陸上を続けているはずの彼。

でもそれにしては体つきも、手も、身のこなしも、がらりと変わった。

まるで別人のようだ。


「とーしーやー」

「何だ、鎌田?」

「俺とクラス交換しねぇ?」

「無理だろ」

「うーあーあーあー」

「鎌田、うるさい」


瑠佳くんに絡まれて嫌そうな、でも楽しそうな顔をする。

そんな彼の大きな変化は、皆知っていたのだろう。

私だけが知らずにいたのだ。

引きこもっていたから。

というか、瑠佳くんはクラスが違うのでは。

そろそろ戻らないとお昼休み終わるよ?







「ね、ね。天音ちゃん」

「・・・・な、ななに?」

「瑠佳くんのこと、そんなに見つめるほど好き?」

「えええええ?」

「だってさっきからずっと見てるよね?」


誤解されてしまった。

見ていたのは俊哉君だと、言おうとしたけれど。

言えなかったのはもちろん、さらなる誤解を生みそうだと感じた。



「瑠佳くんてば、中学になってからも告白されまくってるのに、全部断るんだよね」



なんでだろう、と言った顔をして見せる向日葵ちゃん。

きっと私と瑠佳くんが何かしら特別な関係であることを話してほしいのだろう。

でも答えることはできない。

あれは一方的な約束であり、果たされることはないのだから。




そのことを早く、気づいて欲しい。

そして私から離れていってほしい。




どうあがいても叶わないことだけれど。




「そういえば、この間は大丈夫だった?」

「・・・?」

「俊哉君に聞いたよー。がらの悪い奴らに虐められそうだったって」


「あ、・・・・うん」


見事に心の傷が露わになる。

少しだけ胸の少し下が痛む。

ここで腹痛でも起こして保健室にでも行きたい。

しかし、そうする前に向日葵ちゃんは言った。



「よかったね、俊哉君居て。最近柔道だか空手だか始めたみたいだし」



心の中は大混乱だ。

「え、え」と声が出ていたのかもしれない。

その声に応えるように向日葵ちゃんは言った。



「あんなにやってた陸上やめて、そう言うの始めたんだって聞いたよ」



完全に首を傾げた彼女。

私もそれに倣って傾げようとしたが、体が動かなかった。


俊哉君が、陸上をやめた?

あんなにも、一生懸命練習していて、彼なりに結果も残していただろうに。

なぜ。


そこまで考えていても立ってもいられなかった。


背中の方から冷たい風が吹き込むような、地面がぐらぐらと揺れているような。

そんな言いようもない不安が、体を巡ったのだ。



彼に直接聞く勇気もない。

こんな今の私では、彼に起こった異変の真実を知ることは不可能だろう。


私はただ、一人でこうして不安に苛まれることしかできない。


涙が出そうになって漸く、席を立った。

向日葵ちゃんに保健室へ行くことを告げ、教室から逃げた。

あの場所が悪いわけではないと知っている。

移動したって、何も変わらない事も知っている。

それでも、そのままではいられなかった。






助けて、という声が出そうにもならない。


誰も、信用できない。

誰も、本当に助けてくれることはない。


だから、口が裂けても言えない。

救いの手は、破壊の手と同じ。

そう知ってしまったから。



「あー、天音―」



瑠佳くんの声が聞こえた。

でも私は振り向かない。

振り向ける余裕がないから。


彼はしつこいから。


こんな風に泣いていたらきっと。

うるさく付きまとってくる。

私なんかに時間をたっぷり割いてしまう。

だから、「来ないで」と念じて走った。









「んー、また来ちゃったのね」

「す、す、すみません」

「仕方ないわね、どうする?帰る?」

「・・・・・(こくり)」

「じゃぁ、誰かに鞄を・・・」



そう言って保健室の先生は内線電話を取る。

鞄を持ってきてくれるのは、きっと向日葵ちゃん。

ごめんね、と思いつつ目を閉じた。



何分かして、思った通りの人物が訪れる。


「今日は元気なかったもんね」

「ぅ・・・ごめん」

「ううん、今日の分のノート来週でいい?」

「あ、ありがとぅ」


来週といわれて、今日が金曜日だということを思い出す。


ますます申し訳ない気持ちが湧いてくる。

こうやって早退してしまうから、日付感覚も鈍る。



「気を付けて帰ってね」



あの絵よりもずっときれいな笑いかたをするようになった向日葵ちゃん。

私とは違って彼女はずっと、進んで行っている。

だからとても焦ってしまう。


何時まで経っても、変われない私。

みんなはもう、あの小学生だった時とは違う。





変わらなくては。

前以上に優れた人間にならなくては。









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