次の目標
「またしても、君に解かれてしまうとはね」
朝霧は少し悔しそうに言った。
「じゃあ約束通り、ゴールドパスを渡してもらいますね」
「……ああ。後日郵送するよ。そんなに欲しかったの?」
「いえ、俺は使いませんよ」
「……そうか」
朝霧は席から立ち上がり、
「今回は私の完敗だ。けど、いつかまたリベンジしたいと思っているよ。そのときは、また勝負してくれるかな」
と言った。
「……ええ。俺もどんなマジックが見れるのか楽しみです」
式は言葉を返した。
「これで次の目標ができた。君との勝負も楽しみだが、それ以上にお客さんを喜ばせられるマジックを思いつかなければいけないな。では、また会おう」
朝霧は机に代金を置き、去って行った。
「このお金、私たちの分までありますよ」
「まあ、ここはお言葉に甘えておごってもらおうよ」
「……そうですね」
式たちはコーヒーを飲み干した後、喫茶店を出て行った。
数日後、式が学校に登校すると、榊に景品について尋ねられた。
「式くん、ゴールドパスは届いたのですか?」
「うん。これがそうだよ」
と、式は榊に送られてきたゴールドパスを見せた。
「これがゴールドパスですか。私もほしいです」
「なら、あげるよ」
「え?」
「どうせ俺がもっていても使わないだろうし。だったら、使う可能性のある榊さんがもっていた方がいいでしょ」
「しかし、いくら何でもタダでもらうのは……」
「だったら、俺に何かおごってよ。それでいいよ」
式は譲るといってきかない。このままでは埒が明かないので、榊は折れることにした。
「……わかりました。これは有難く頂戴します。それでは今日の放課後にまた大型スーパーに行きましょう」
「うん。ありがとうね」
プレゼントをくれた式がお礼を言うのは少し変だな、と榊は思った。
「では、放課後忘れないでくださいね」
「うん。わかってるよ」
式は席につき、机の引き出しから教科書を取り出そうとした。
しかし、そこに何かが入っていることに気が付き、取り出した。それは、一枚の手紙だった。差出人名を見てみると、朝霧からだった。
「どうして俺の学校を知ってるんだろうか。というか席まで」
訝しげに思いながらも手紙を開けると、そこには挑戦状が入っていた。
挑戦状には次の勝負の日付や場所などが書かれていた。
「もう新しいマジックを思いついたのか。すごいな」
式は内心感心しながらも、次の勝負を楽しみにしていた。
「次はどんなマジックを見せてくれるのか、楽しみだな」
朝霧との勝負を楽しみにしつつ、式はいつも通りの日常を楽しむのだった。