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シモンと閉じこもった魔法使い

 それはシモンがロザリンドと付き合い始めた頃に遡る。あれから二人はいわゆるお付き合いを始めたわけだが。

 放課後、二人は授業を終えて一緒に帰っていた。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・。良い天気だね」

 シモンは堪らず声を上げる。

「そうね」

 ロザリンドは自分の指を絡めながら、淡々とそう言った。

 もうこんな日が数日ほど続いていた。放課後、とりあえず一緒に帰って沈黙が続き、たまらずシモンが何かを言ってロザリンドがそれに軽く答えるというパターンが固まりつつあった。付き合いだす前とのロザリンドのテンションの違いにシモンは驚いていた。シモンの告白した時のロザリンドはもっとしゃべる印象があったからだ。

 こんな現実に嫌気がさしていたのはシモンというより、後をつけていたエミリーとガロアとボクであった。



 次の日の放課後。何人かの生徒が教室から出ていく中、ガロアがロザリンドのクラスに入っていった。

「ロザリンドさん、今日シモンのやつ借りてっていいか」

 ガロアがエミリーと同じクラスのロザリンドに声を掛けた。

「・・・・ええ、いいわ」

 ロザリンドは少し考えた後、そう言った。

「よっしゃ」

 ガロアはそう言って急いでシモンのクラスに戻っていった。

「と言うわけで俺んちに集合な」

「どういうわけなんだよ」

 シモンはガロアに急かされるまま、ガロアの家(ヴェルナ―宅)に向かった。



 ヴェルナ―宅に到着し、いつもの執事とメイド達の挨拶を受けてガロアの部屋についたシモンを待っていたのはエミリーとボクだった。

「ボクにエミリー?」

 シモンはまだ状況が飲み込めないようでみんなの様子をうかがっていた。

「まあ、とりあえずそこに座りなさい、シモン」

 エミリーはシモンに着席を促す。

「ん、うん」

 シモンはそれに従った。

「ではシモン君、あなたのこの数日間のロザリンドさんとやったことを言ってください」

 エミリーがシモンの方をしっかりと見てそう言った。

「ん・・・。えっ」

 シモンの動揺は広がっていく。

「被告人は証言を」

 ガロアが追い打ちをかける。

「え、被告人」

「ここは被告人に変わって検察官の私ガロアが説明いたします。被告人はロザリンドさんと最近、放課後一緒に帰ってますが話した事は天気が良い事と夕陽の綺麗さだけです」

 ガロアはそういうとあり得ないなと言いたげな表情でシモンを見る。

「はいはい、死刑ですね」

「はい、死刑です」

 それにエミリーとボクも同意する。

「ちょっとせめて弁護させてよ」

 ようやく状況が飲み込めたシモンが反撃を開始する。

「では弁護人、ボクさんお願いします」

 エミリーがボクの方を向いてそう言った。

「シモンさんは他にも、ロザリンドさんの黒髪をほめたりしていましたよ」

 ボクの発言にシモンは恥ずかしそうに赤面した。

「ガロアさん」

「エミリーさん」

 ガロアとエミリーは向かい合って互いの名前を言い合う。

「これはセクハラですね」

「セクハラ死刑ですね」

 そして二人でシモンを見ながら騒ぎ立てるようにそう言った。

「いや、彼女のいい所ほめて何が悪いんだよ」

「まあ、とりあえず死刑なので話を進めましょうか」

(スルー)

「このままでは二人の仲が正常な恋人同士になるまでに何年かかるか分からない」

「というか、このまま変化ないなんてつまんねえ」

「それが本音でしょ」

 シモンは呆れたように声を出す。

「もちろん、しかしこのままでいいとも思ってないでしょ」

「まあ、正直彼女のことで知ってる情報、エミリーの情報だけだから」

「悲しい現状ね。まあ、そこでシモンにはデートをお勧めするわ」

「デートって、まだまともに喋れてもいないのに」

「だからこそよ。このデートを通して共通の話題を作るのよ」

「なるほど」

「そこでガロアとボクと私がプランを考えてみました」

 エミリーがそう言い終わるとシモンの周りから拍手が起こる。

「まずは俺からな。ええと俺のプランは無難な映画館だ。会話も必要ないし、終わった後は映画の内容を語り合えばいいからな」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「えっ、あれ」

「ガロア、君の役割分かってる?君はそういうにんげんじゃないだろう。そんな正論いらなかった」

「ガロア、ボクは悲しい」

「ガロア、そういうプランを私との・・・」

「えっ」

「えっ」



「じゃあ、次は私ね。私は単純に公園とかいいと思うんだけどお金だってそんなないんだし」

「確かに無難かもね。でも、そんな会話を前提とするデートコースは」

「弱虫」

「いくじなし」

 シモンは女子二人からブーイングのあらしを受ける。



「最後にボクは図書館がいいと思います」

 元気よくボクはそう宣言した。

「図書館か好みが分かれそうだけど、彼女には合うかもね」

 シモンはそれに賛成する。

「心配しなくても、本人に聞いたから大丈夫」

「・・・・。えっ本人に聞いたの」

 結局、その後シモンはロザリンドと図書館デートをする事に。



 デート当日、

図書館といっても、MSP内の図書館である。並みの大学レベルの蔵書数を誇るが当然、漫画だったりはない。ロザリンドでなかったら、断られてることうけあいの空間だ。

 そんな図書館前にシモンは立っていた。約束の30分前に来て、図書館近くの時計に何度も目をやっていた。

 そして、そんなシモンの様子を図書館内から当たり前のように監視するガロア、エミリー、ボク。

「正直、シモン上手くいくと思うか」

「デートの事?」

「いや、この先あの二人が上手くいくかってことだよ」

「うーん・・・。シモンには悪いけど、無理な気が」

「だよな」

 二人にはどうしてもシモンとロザリンドが上手くいく未来が見えない。それはなにより自分たちのしている恋愛とシモンとロザリンドのしている恋愛が違いすぎる事が大きい。

「どうして」

 そんな二人の様子にボクは素直に疑問を口にした。

「ボクには分からないか。なんか、ロザリンドさんが心を閉ざしてるんだよな」

「それだけならいいんだけどね。シモンもそれを不満に思ってないように見えんのよ」

「ん、そうか。俺は、シモンが恋人はそう言うもんだと思ってるように見えんだけど」

 エミリーはシモンとロザリンドの関係を閉じ籠っているロザリンドをシモンが見て見ぬふりをしているように見えていた。だからこそ、他の誰よりも強くシモンにもっとロザリンドと関わるように促していた。

 ガロアはシモンとロザリンドの関係を同じく閉じ籠っているロザリンドをシモンが恋愛はそう言うもんだと言う納得をしているように見えていた。だから、ガロアもシモンに考えを変えるように真面目な意見を出したのだ。

「いやいや、そう思うなら指摘しなさいよ」

「こういうのは本人が気づくのが一番だろ」

「そう?」

「でも、予想なんだよね。二人が上手くいかないと思うのって」

「そうよね、確かに予想だし」

「そうだな、でも不安だな」



 約束の時間少し前にロザリンドが現れた。いつもと違う私服のロザリンドは黒を中心としたファッションをしていた。

「おはよう」

 そう言って、確かにシモンはロザリンドに見惚れていた。

「おはよう。・・・・・」

 ロザリンドはシモンの挨拶に答えた後、また自分の指を絡め始めた。

「じゃあ、図書館に入ろうか」

「・・・・。はい」

 シモンは図書館の壁に描かれている地図に目をやる。

「どこにいこうか」

「・・・・・・」

 ロザリンドは無言で小説のコーナーを指さした。小説と言っても、現代的なものではなく。古典的な小説を中心に置いてあるコーナーだ。

 二人はほとんど無言でそのコーナーまで移動する。

 二人は本を選んで椅子に座った。シモンはなんとなくロザリンドがテンションを下げているように感じていた。



その様子を遠くで見守っていたガロア、エミリー、ボク。

「おい、明らかな沈黙に入ったぞ」

「うん。ただの沈黙ならまだしもシモンもロザリンドさんもどこか落ち着いてないように見える」

「こりゃ、失敗だな」

「でも、二人とも本には夢中みたいだよ」

 不思議そうにボクがエミリーとガロアにそう口にした。

「そうだな、ボク。目の前の恋人を無視してだが」



 デート後、シモンはエミリー主導の反省会をしにヴェルナ―宅に来ていた。

「シモン、とりあえず言い訳を聞こうか」

 そう言ってエミリーはシモンに正座を指示する。

「ええと、本を読み始めた時にロザリンドさんが少し機嫌悪そうに見えて話しかけ難くなって」

 そう言いながらシモンは床に正座した。

「それでずっと無言だったと、本に夢中になったと、そう言う事だな」

 今度はガロアが正座しているシモンを見下ろしながら言った。

「そう言う事です。すいません」

「色々反省すべき点はあるが、はっきり言って俺は上手くいくと思っていない」

「!・どうして」

 驚いてシモンは立ちあがった。

「余りにもロザリンドさんが心を開いてないからだよ」

「心を?」

「ああ、あんだけ何も自分の事を話さないし、お前のことを聞いてこないってのはな」

 残念そうにガロアはシモンにそう言った。

「でも、まだ彼女は緊張してるんじゃ」

「うーん。それでも、多少の反応もないってのはな」

「そうね。少しおかしいわね」


 シモンは少し考えてその状況を改めて飲み込んだ。だがどうしていいかなんて分からなかった。恋愛の先輩と言っていいガロアとエミリーはもう上手くはいかないだろうと言うものだった。


 シモンはガロア、エミリー、ボクと別れるとただ茫然と考えをめぐらしていた。どうすればいいのかを考えているとそこでシモンは珍しく酔っ払った。ヴェルナ―に出会う。

「やあ、ヴェルナ―君。こんなところでどうしたんですか」

「いえ、少し考え事をしていて」

 そういうシモンの顔は何とも言えない表情を見せる。

「何か悩んでいますね、少年」

 そういいながらヴェルナ―はにやにやとシモンの顔を見つめる。

「酔ってますね」

「そうです。友と飲んだのですが大変ですね、家族とは。あれほど強い男が・・」

「トマスで・・は無いですね」

「ええ、さて私のことは良いです。少年、教えてはくれませんか。この酔っ払いに酒の肴を。心配せずとも酔ってますから忘れてしましますよ」

「・・・・・。そうですね。お願いします」



 二人は近くの公園のベンチまで移動した。ヴェルナ―とシモンはそのベンチに腰掛けた。シモンはヴェルナ―に自分とロザリンドの関係の事で悩んでいる事を話した。

「なるほど。なるほど」

「どう思いました」

「むかつきますね」

「やっぱりロザリンドさんとは上手くいきませんか」

「いえ、ロザリンドさんのことではないです。ガロアとエミリーさんの事ですよ。確かにロザリンドさんの態度はいいとは言えませんが。大切なのはあなたがどうしたいかです、シモン君」

「俺がどうしたいか・・ですか」

「ええ、あなたはそんなロザリンドさんの態度を受け入れますか。それとも今のままでは嫌ですか」

「・・・・。できればもっと仲良くしたいです」

「それなら、彼女と話しあいなさい。相手と向かい合う事無くして、相手を理解することなんてできませんよ」

「!・・話し合いですか」

「ええ、それをせずにロザリンドさんの気持ちを理解することは無理でしょうし、まして話しあわない状況でガロアやエミリーさんのようにロザリンドさんのことを決め付けるのは早計です」

「はい・・そうです。・・・そうですよね」

「ええ」


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