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覚書/「戦いの火蓋が切られる」のヒブタとは?

 合戦ものやスポーツの試合が始まるとき、決まり文句として、戦いの「火蓋が切られる」という表現がある。

 たまたまそれが火縄銃に関するものだと知ったのは、火縄銃を解説した図鑑を目にしたからだ。そういうわけで、いままであまり関心をもってみなかった、実家に転がっている、複製レプリカの火縄銃二丁を観察してみた。

 火縄銃の引き金の近くには発射装置がある。

「火蓋」という軸のついた薄い金属板カバーを、親指で、ぐい、と押し横に開く。するとそこに「火皿」がでてくる。

 そこで引き金を引く。

 火縄のついた「火挟み」が、かちゃっ、と「火皿」に落ちる仕掛けになっている。

 これで内部の火薬に点火し、ガス爆発を起こす。弾丸が飛び出す。

 そういう仕掛けだ。

 「火蓋」で「火皿」をカバーしておけば、誤作動から「火挟み」が落ち、誤発することがない。いわば安全装置だ。

 戦闘の第一段階である射撃において、狙撃兵は「火蓋」を解除して銃撃戦を開始する。ゆえに「火蓋を切る」となるわけだ。

 だがそこで、私の中には第二の疑問が浮上した。

 複製レプリカ銃二丁の火皿には、銃身内部に点火薬を誘導するような孔がみあたらないではないか!

 たまたま機会あって、本物の火縄銃を手に取らせてもらうことになった。

 大砲の導火線に相当する点火薬を挿入する「火門」が、「火皿」のところに空いていなくてはならない。

 ところが本物の火縄銃の「火皿」のところに、あるはずの「火門」が見当たらない。

 錆びた火縄銃は木製の目釘ボルトが腐ってなくなっていた。

 おかげで難なく銃身を取り出すことができる。

 「備前国……」ボルト用の孔、銃身の根元には製造地・製造者・製造年月日が記載されていた。

 しかし銃身には「火門」の痕跡がなかった。

 発射装置部分である火蓋にも、「火門」がない。

 そこでもう一度、大砲やら火縄銃の図鑑を何冊か読んでみる。

 火縄銃に関して、肝心な部分の解説が甘い。だが大砲の図解の中に、「火門」に関する概念図があった。

 前から火薬と弾丸を挿入する前装式大砲の構造は火縄銃とほとんど同じだ。

 大砲の口から、火薬を包んだ袋を棒で突っ込んで挿入。

 次に弾丸を入れる。「火門」という砲身の砲尾にある横孔よこあなから、錐のついた棒で砲身内部・火薬袋をつっつき、穴を開け、そこに導火線をさしこむ。

 あとは点火すれば砲弾が飛び出るという仕掛けになっている。

 やはり「火皿」に仕掛けがあるはずだ。

 私はそこであることをひらめく。

 楊枝をとってきて、本物の火縄銃の火皿をつっついてみた。

 黒いワタゴミが詰まっていたのだ。

 「火皿」の底から小さな孔・「火門」が出てきた。

 なるほど、ここに点火薬を注ぎこげば、火縄の火だねが触れた途端に、導火線のように火が内部に導かれ、内部に詰められた火薬に引火し、ガス爆発をお越し、弾丸を飛ばせる。

 複製レプリカの火縄銃は「火門」を再現していない。

 ようやく謎が解けた。

 本日の発見!

     了

.

ノート20130803

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