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掌編小説/中世物語 『水車小屋の親爺』

 ――祟りじゃあ。水車小屋の祟りじゃ~。

 ドイツの片田舎、荘園屋敷の周りには荘園集落がある。さらにそこから離れたところに石造りの水車小屋があった。御領主様がつくったものだ。

 パンを焼く都合で農奴やら自由農民は麦穂をもってそこにやってくる。順番待ちだ。

 ある年、親爺のゲッツが十三番めの客を迎えたとき、粉ひき臼から馬糞がでてきたのだそうだ。

「悪魔だ。水車小屋には悪魔が棲んでおる」荘園の衆は噂しあった。

 翌年、旅の若い職人エルンストがやってきた。

「なるほど、そんなことが。私がなんとかしてきましょう」

 エルンストが水車小屋の親爺と一緒に十三番目の粉をひくときに立ち会う。

 悪童わるがきの丁稚が粉袋に孔をあけ、のぞいていた。

 職人が問うた。

「石臼をひいているのは誰だ?」

「ひくのは儂だ~」

 悪魔のようだ。

「小屋のなかにあるものはすべてやろう。だがなかには誰もいない。人の魂はやれぬぞ」

 すると、悪魔が姿を現し、丁稚が潜んでいる粉袋を小脇に抱え、勝ち誇ったように水車小屋からでていった。

 職人は丁稚が粉袋に隠れていることを悟り。しまった、という顔で悪魔を追いかけ、やはり小屋をでてゆく。

 親爺が職人と丁稚を探したのだがみつけようもない。

 荘園屋敷の姫様ジークルーンは推理した。

「話はすべてでっち上げ。親方が粉を着服するために仕組んだ狂言です。職人ははじめからいない。丁稚は年季が明けて故郷に帰っただけ」

 屈強な徒士二人を派遣して、親爺を締め上げる。姫様のいうとおりだった。

 親爺がはじめから小麦粉をくすねるために、そのようなデマを流し、着服していたのだ。

 裁判が言い渡された。 

 糞溜めの刑!

.   

 水車小屋は領主の直接支配下に置かれていた。親爺はよく粉を誤魔化した。水車小屋の親爺は半分農民で水車小屋職人を兼ねていたのだが、いつのまにやら賤民化してゆく。集落から離れていたため売春宿としても使われていたらしい。

     了

.

引用・参考文献

阿部謹也 『中世を旅する人びと』 平凡社 1978年

.

ノート20130814

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