掌編小説/妄想探偵事務所 『誤報の憶測』
高速道路・東関東自動車道・千葉県富里インターチェンジ付近にはベイシアとかショッピングモールがある。学校卒業後、吹けば飛ぶような中小企業に就職し、ローンを組んで、都心から遠く離れた千葉県でも、「田舎だ」といわれているこの地に、ようやくマイホームを手にいれたのが、私・奄美である。
私には平凡なサラリーマンの顔とは別な面がある。それは、自称「探偵」だということだ。(←だからなんだよ!)
中学生の娘・美咲と、リビングの長椅子に並んで座わりアルゼンチン・ブエノスアイレスIOC総会会場の2020年オリンピック開催国のプレゼンテーションの中継をみていた。2013年9月7日総会プレゼンテイターは、佐藤 真海 (パラリンピアン)、竹田 恆和(招致委員会理事長)、水野 正人 (招致委員会副理事長/専務理事)、猪瀬 直樹 (東京都知事/招致委員会会長)、滝川 クリステル (招致“Cool Tokyo”アンバサダー)、太田 雄貴 (オリンピアン/招致アンバサダー)といった顔ぶれ。
滝川クリステル・アナウンサーの顔が、テレビ画面に映しだされる。
「お・も・て・な・し……」
「なにデュエットしてんの、パパ?」
「さりげなくチェックしている」迂闊だった。
けっきょく、発表は五時となる。
東京オリンピック開催に関しては、石原慎太郎がいいだしたことだが、はじめ、誰もがそっぽをむいていたような気がする。しかし、今回は、本気をみせた。東日本大震災とかあって、明るいイベントが必要だったのだと思う。
なんだかんだと、朝の五時。いよいよ各国の投票結果が伝えられる。
オリンピック招致のニュースをみていたら、誤報をやらかした
日本の朝日新聞社がツイッターで8日午前4時ごろ、「東京、落選しました。第1回の投票で最少得票。決選投票に進めませんでした」と速報した。数分後に誤りに気付き、「失礼しました。東京が最多得票でした。決選投票へ進みます」と訂正し、書き込みを削除した。
国営新華社通信や中国中央テレビ(CCTV)が「東京落選」を伝えた。
これらの誤報を訊いて、私は素朴な疑問がわいた。
「ここで問題です。誤報が重なったのはなぜ?」
隣の美咲が眼鏡をずりあげた。
「朝日新聞はサヨクだから、政府が関わることはなんでも反対なのね。中国は、伝統的にいろいろあって、日本に喧嘩を売るのが趣味みたいだから……」
「両方ともそれぞれの国で権威のある報道機関だ。会社自体がどういう思想をもっていたとしても、誤報をやらかしたら格が下がってしまう。日本政府が嫌いだからという理由だけで、あえてやるほどのことか?」
「じゃあ、いったい、なんで三社が同時に誤報をやらかしたわけ?」
私は煙草に火をつけた。
「つまりだ。ことは単純で、委員会の人が開票を読み上げたとき、癖のある喋り方で、日本が○○しましたと判りづらく報告した。あとは記者さんの悲観論とか願望憶測が入る……どうだ! パパの推理ってすごいだろ!」
「ふつうじゃん」
東京の朝、オフィスビルの合間からみえる空には虹がでていた。
千葉県富里市の朝。奄美家の屋根の上は、ふつうに曇り空だった。
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推理の結果は、後日ウエブのニュースをみて確認した。
朝日新聞はウェブ版の「朝日新聞デジタル」上で総会の様子をAP通信から配信を受けて生中継。英語などでのやりとりを補うため、公式ツイッターの一つで内容を発信した。「1回目の投票結果が発表された8日午前4時5分ごろ、得票数で並んだイスタンブールとマドリードで最下位を決める再投票が行われることになったのに、公式ツイッターである『朝日新聞オリンピックニュース』で『東京、落選しました。第1回の投票で最少得票。決選投票に進めませんでした』と誤って発信した。/司会のロゲ・IOC会長から東京が決選投票に進んだとの明確な説明がなく、会場のモニターから東京だけが消えたため、イスタンブールとマドリードが決選投票に進んだと勘違いした。同6分ごろに東京が勝ち残ったことがわかり、誤ったツイートを削除した上で、『【訂正】失礼しました。東京が最多得票でした。決選投票へ進みます』と発信した。/朝日新聞デジタル上ではこうした内容の記事配信はせず、同8分に『東京、1回目投票でトップ イスタンブールと決選投票』との記事を配信した。」(朝日新聞社コメント)
「環球時報は社説で2008年の北京五輪の際、日本の多くの人が祝賀や支持を表明し、中日関係は今より良かった。中国人にとって東京五輪なら時差もほとんどなく、行くのも便利だ。(五輪開催で)東アジア地域が安定した7年になることは中国人も望む」(毎日新聞社09月09日)
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やっぱりIOC委員長の喋り方が、誤解を招きやすい言い回しだったのだ。
奄美パパ、大ピンポン♫
美咲(ちぇっ)
了
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ノート20130913




