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掌編小説/チョコレートティー
チョコレートを食べると、脳からなにか特別な物質がでてきて、恋をしたときと同じ反応があるのだそうだ。ケトルで湯を沸かし、葉をいれたティーポットに熱湯を注ぐ。砂時計をひっくり返して、二分ばかり待つ。
パンの耳に砂糖をシロップで揚げたものを御茶うけにしてテーブルの上に置く。ティーカップは先日、公園でやっていたフリーマケットで買ったものだ。百円だったがイタリア製、ただし値打物でないことだけは確かだ。白磁製で苺が絵付けされている。ソーサーもそうだ。
カップ二つに紅茶を注ぐ。湯気がたって、甘いカカオの香りが漂った。
窓の外は雨。
窓下の紫陽花が映えている。
二人だけのティーパーティー。
「どうぞ」
「いただきます」その人は十字を切った。
「どうだい?」
「美味しい!」
「それは何よりだ」
欲をいえば、愛矢じゃなくて、綺麗な女の子がテーブルのむこうにいれば、なお素敵なことだと思う。大学近くのアパートである。六月も終わりかけた午後三時、ふとそんなふうに思う僕・恋太郎だった。
了
ノート20130830




