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掌編小説/もぐらがいの殺人

 なんで宿題というものをだすんだろう?

 教えてくれるから学校にゆくのではないか。教師が怠慢だから、子供たちに観察研究うるチャンスをやるという理由で、課題図書をやっているのだと思うようになったのは、ひねくれているからなのだろうか?

 学校にゆけばそれなりに、まわりにあわせているから、イジメとかにもあわないでいるんだが、休みになると実質的に引きこもりになる。もちろん買い物とかにはゆく。ただ自分の用というわけではなく、ママウエのつかいで、あれ買ってきてといわれて、判った、と答えミッションを忠実に果たすのみだった。

 夏休みどまんなかの登校日、ガチャガチャのいいやつがあるだとか、アーケードゲームのなにが面白いとか、右耳から左耳にきき流していた。

 ジージにいわれて、蔵の断舎利をやった。

「どうせガラクタばっかりなんだが、大人がやると、埒が明かんからオマエがやれ」

 そういわれて、いざ入ってみると、案外捨てられないものだ。

 黒いドイツ製ミシン、スキー板、練習用銃剣……どれも戦前のものばかり。ふと壁際に目をやると、ガラス扉のついた本棚があり何気なく開く。すると昭和二十年代・三十年代の本が並んであった。そこにそれがあるのは判っていたのだが、関心がなかったのだ。

 いろいろ本が並んである。うちの何冊かの背表紙をみると、学校図書館の整理番号が書いてあるではないか。誰が借りたままにしているのだろう。図書カードの貸出日から、たぶん末のオジちゃんだと思う。開いてみる。

 ホコリ臭いしシミまである。きちゃない。

 やたらに台詞が多いし、外国地名とか名前で感情移入できない。

 もぐるがい……の殺人。いや、『モルグ街の殺人』だったな。いっそのこと、もぐるかいの殺人はどうだろう? 海水浴場で大きな貝が、泳いでいる子の脚を、ぱくっ、て咬んで、深海に引きずり込んでゆくのだ。ぎょえぇ~っ、怖すぎ。ホラーだあ!

 また原本を読み返してみる。巻頭の粗筋と目次、粗筋、それから、ざっくり、目次に眼を通した。ふむふむ。世界初のミステリ小説。探偵と相棒がいて、相棒からの視点で主人公と事件をみる。近代戦争というものを人類がしたということで、未知のスタイルが発明されたのだ~。

 凄い。凄すぎ~!

 で、著者ポーは大金持ちになったさ、めでたしめでたし……。

 え、ならならい? 三十前で親戚の十三だか十四の女の子を奥さんにして、四十前に貧乏から奥さんを餓死させてしまう。それで酒に溺れて衰弱死。なんじゃこりゃ~。ミステリーだ~。ちがう、ホラ~だあ。こんなこと、あっていいのかあ~!

 また読み返す。だいぶ物語のアウトラインがつかめてきた。でも僕の妄想が、まだアナログテレビのノイズのように、名文を汚していた。もぐらがいの殺人なんていうのはどうだろう?

 たくさんのモグラが棲んでいる町があって、そこで母娘おやこモグラが殺される。町の住人であるモグラたちは、猫に殺された、犬に殺され、あるいは蛇に殺されたといいあうのだが、決め手がない。そこで名探偵モグラが登場する。いろいろ調べてゆき、警察の捜査方法が、やれ、アングルが上から目線で決めつけている、違うアングルでみてみろよ、と嫌味を交えたアドバイスを助手役にもらす。けっきょく、人間の、百姓オヤジがモグラ害対策用のガスバーナーで巣を焼き払ったという結果でしめくくられる。

 ああ、そんなことはどうでもいい。

 ともかく、末のオジちゃんが借りたままにしている書籍を学校に返さなくてはならない。オジちゃんは二十年前に僕と同じ小学校を卒業した。

 珍しくプールにゆくことしてみた。そのついでに学校図書室に行ってみる。夏休み期間も当番で図書係をしている上級生のおねえさんがいた。最近急に綺麗になってきた人だ。

 どぎどき、しながら、カウンターに『モルグ街の殺人』を置いた。おねえさんは司書のセンセイを職員室から呼んできた。センセイもやせた美人さん……ということにしておこう。センセイは、表にしたり裏にしたり、ひっくり返さしたりしていた。やがてカウンターにいた僕に、「時効だからやるよ」といって笑った。

 ありがと。テレ♫

     了

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