読書/武者小路実篤 『愛と死』
いま、雪が降っています。むかし、シャンソンを和訳して唄っていた時代があり、「雪は降る、あなたはこない~」というのがありました。あるいは、山下達郎が、「きっときみはこない一人きりのクリスマスソング……」というのも似たセンス、雪は春を待つもの、チョコとかけるのもよし♫
さて。
先日、会津の喜多方市を散策していたところ、かの武者小路実篤の常宿だったという温泉の前を通りました。セレブの御曹司だったからか稼ぎがよかったのか、けっこういい宿の様子でした。そこで、この文豪文豪様の作品・『愛と死』から。いましがた手にとって、たまたま開いた本の頁を抜き出してみましょう。
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翌日午後野々村のところにでかけた。野々村は留守で奈津子がでてきた。
「よくいらっしゃいました。今日はきてくださるかと思っていました」
「野々村さんは」
「どこへいきましたか。このごろよく留守で、嫂は気にしています。どうも兄はよくないのです」
「そんなことはないでしょう」
「あてになりませんわ、男の方は」
「それは手きびしいのですね」
「だって私の父も、私の叔父も、それから私の知っている人は十人のうち七人までは信用できないのです」
「十人のうち九人はと言いたいところです。ほんとうに信用のおける夫は」
「それじゃブルジョアの話で、勤労生活をしている人はそんなことはありません」
「だって私の知っている人はばかな話を平気でしていますよ。母も叔母もそれはしかたがないこととと思っているのですよ。また男の人にはそういうことをするのに都合がよく世の中はできているのですわね。だから私の兄だけが悪いとは思いませんが、しかし私、嫂のことを思うと兄が憎くなるのよ、だって嫂はそれはいい人ですからね」
「野々村さんは大丈夫とおもいますがね」
「あてになるものですか。……」
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所見/この女は駄目だ……。この男はプロレタリアは不能者だというのか……。なんだかキモイ。しかし楽しそうな男女二人の会話だ。まぜてくれ~(本音)。ぶつぶつ呟き宿舎のレオパレス三階から降りてゆくと、隣室の美女とすれ違ったのであります。ぽっ。
了
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ノート20140207/校正20160517




