止病
夜帋
『私玖音に会った事あった?』
沙希
『あたしは知らないわよ』
不思議な人だった。だけど、その玖音はそのまま私達の後をついて来てる。沙希は気づいて無いみたいだけど、私は脳波を探知できるから
そして、沙希につれて来られた場所は、普通のアパート
夜帋
『ここ?』
沙希
『ここよ。さっさと入りましょ』
イヤイヤ、人の家に勝手に入るのはありえないから
夜帋
『インターホンとか無いのかな?』
沙希
『知らないわよ。このボロアパートに付いてるかなんて』
んー、どうしたものか
沙希
『あれ?玖音?』
玖音がそのままついてきて、目の前のアパートの扉を開けて、そのまま入って行った・・・
夜帋
『あれ?玖音の家?』
確かに変わった人だけど?
沙希
『あれー?玖音の家じゃない筈なんだけど?ごめんくださーい』
沙希も入って行っちゃった。大丈夫かな?
夜帋
『お邪魔します』
アパートに入ると、色黒の少年が、椅子に座って、机の上のキーボードに足を乗っけていた。行儀が悪いよ・・・
??
『なんだ?本当に連れてきたのか』
沙希
『そうよ。この子が天才尾是夜帋!』
??
『ふーん』
その少年はまるで興味が無いみたいにキーボードを足で叩いてる。凄く器用ね・・・
沙希
『何よ、その態度』
蝋田
『愛想悪くて悪かったな。蝋田と呼んでくれ、よろしく』
夜帋
『えーと。尾是夜帋です。よろしく』
蝋田はまた足でタイピングを始めてる。よく見ると、両腕が無いんだけど・・・
蝋田
『俺は奇形児で両腕が無い。不便はしてねえから気にするな』
だから足でタイピングしてたんだ・・・納得
夜帋
『それにしても、日本で奇形児が産まれたなんて初めて聞いたわ』
まあ、そもそもあまりそういう事に知識が無いだけだけど
蝋田
『・・・そうだな』
ん?何か違和感。少なくとも蝋田は動揺してる
夜帋
『何を動揺してるの?』
蝋田
『・・・!動揺なんかしてねえよ!』
今度は嘘。何か隠し事でもあるのかしら?
夜帋
『私に嘘は通じないわよ?』
沙希
『流石夜帋ね!』
蝋田
『わかったよ・・・。俺が日本人に見えるかよ』
うん。少し白めの黒人だね。黄色人種には見えないわ
沙希
『蝋田は天才ハッカーよ!更に、天才サッカー!』
蝋田
『天才サッカーってなんだよ!』
沙希
『サッカーが得意な人』
蝋田
『天才サッカーなんて言葉聞いた事ねえよ!』
いやいや、そうじゃないでしょ?
夜帋
『本当にハッカーなの?』
蝋田
『蝋田なんて名前の外人が居ると思うのか?俺の戸籍データを作ってやっただけだ』
沙希
『そんな犯罪者みたいな事しなくてもいいのにね』
夜帋
『それ普通に犯罪だから!グレーゾーン通り越してブラックゾーンだから!』
政府のコンピューターにハックしたって事でしょ?それ既に犯罪じゃない!
蝋田
『色々事情があるんだよ』
おかしい。何か凄く重い話になってる・・・
玖音
『犯罪ナウ』
蝋田
『うわあ!?』
ゴトン!
いつの間にか後ろに居た玖音に驚いて蝋田は椅子から転げ落ちた。その衝撃で玖音のメガネも落ちてたりするけど・・・。実は玖音はずっと蝋田の後ろに居た、まさかとは思ったけど、気づいて無かったんだ
沙希
『プッ・・・。笑えるー!アハハハ!』
もう豪快に笑う沙希、蝋田が怒るわよ・・・
蝋田
『玖音!いつもいつも脅かすな!』
玖音
『フッ・・・。私が天才』
意味がわからない。何で蝋田を脅かすと天才になるんだか
蝋田
『知らねえよ。伊達メガネ落ちてるし』
夜帋
『あれ、伊達メガネなの?』
沙希
『あたしも初めて知った』
玖音
『メガネは・・・天才に見える』
・・・うん、本当にどうでもいいや
蝋田
『そろそろ帰れ。俺はまだやることがあるんだよ。全く、どうして忙しい時にくるかな』
沙希
『今日は帰るわ、またねー』
夜帋
『お邪魔しました』
玖音
『気をつけて帰れ』
蝋田
『玖音!お前もさっさと家に帰れ!』
玖音
『・・・流石私』
蝋田
『外に引きずり出すぞ!』
玖音
『暴力塵野郎』
蝋田
『・・・言いやがったな、この意味不明女!!』
何か蝋田と玖音が喧嘩を始めてる・・・。巻き込まれたくないし、早く家に帰って夕飯の準備をしよっと




