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マガツカミ ―忘却の英雄は異世界で目覚める―  作者: アイザワ


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ランクアップ試験

 遺跡から戻って数日。

 俺たちは相変わらず、様々な依頼をこなしていた。

 だが、俺の中で何かが変わっていた。

 記憶が戻ったことで、戦い方がより洗練され、力のコントロールも上達した。

「レン先輩、今日もすごかったです!」

 依頼を終えてギルドに戻る道中、リンが興奮気味に言った。

「あのオーガ、一瞬でしたね!」

「お前たちの援護があったからだ」

「謙遜しなくていいのよ」

 エリスが微笑む。

「あなた、明らかに前より強くなってるわ」

「……そうか?」

「ええ。遺跡から戻ってから、特に」

 エリスの観察眼は鋭い。

 確かに、力は増している。記憶と共に、前世の技術も蘇りつつある。

「それにしても」

 リンがギルドカードを見ながら言った。

「私たち、そろそろランクアップできるんじゃないですか?」

「ランクアップ?」

「はい! もうE級の依頼じゃ物足りないですし!」

「確かに……」

 エリスも頷く。

「私たち、かなりの実績を積んだわ。D級に上がってもおかしくないと思う」

「D級か……」

 ランクが上がれば、より高難度の依頼を受けられる。報酬も増える。

 そして――より強い敵と戦える。

「ギルドで聞いてみよう」


 ギルドに着くと、ミラがいつものように笑顔で迎えてくれた。

「お帰りなさい、三人とも。今日の依頼も完璧だったみたいね」

「ミラさん、相談があるんです」

 リンが前に出た。

「私たち、ランクアップしたいんですけど……」

「あら、ついに?」

 ミラは嬉しそうに笑った。

「実は、私もそろそろだと思ってたの」

「本当ですか!?」

「ええ。三人とも、E級としては十分すぎる実績よ」

 ミラは資料を取り出した。

「神代レン。登録から二週間で、E級依頼完了数三十二件。うち、D級推奨の依頼も五件達成」

「そんなにやってたのか……」

「エリス・ルミナス。E級依頼完了数四十五件。戦闘系依頼の成功率百パーセント」

「当然よ」

 エリスが胸を張る。

「リン・シャオメイ。登録から一週間で、E級依頼完了数二十件。うち、単独での失敗ゼロ」

「えへへ……」

 リンが照れくさそうに笑う。

「三人とも、文句なしにD級の資格があるわ」

「じゃあ、すぐに昇格できるんですか?」

「それが……」

 ミラは少し困った顔をした。

「D級以上になるには、試験を受ける必要があるの」

「試験?」

「ええ。実力を証明するための、ランクアップ試験」

 ミラは掲示板を指差した。

「ちょうど来週、試験が開催されるわ。興味ある?」

「もちろんです!」

 リンが即答する。

「私も受けるわ」

 エリスも頷く。

 俺も――

「俺も受ける」

「決まりね。じゃあ、三人とも登録しておくわ」

 ミラが書類を用意する。

「試験は来週の月曜日。場所はエクリプス大闘技場」

「大闘技場……!」

「ええ。街で一番大きな闘技場よ。そこで、実技試験が行われるの」

「実技試験って、何をするんですか?」

「魔物との戦闘、そして……」

 ミラは意味深に笑った。

「他の受験者との模擬戦よ」


 試験まで一週間。

 俺たちは、準備に時間を費やした。

「レン先輩、もう一度!」

 街の外れの訓練場で、リンが符札を投げてくる。

 俺はそれを避けながら、接近する。

「速い!」

 リンが驚く。

 だが、俺の剣はリンの首元で止まった。

「……今ので、三秒」

「はやっ! さすがです!」

「でも、お前の符札の精度も上がってる」

「本当ですか?」

「ああ。最初の頃より、確実に当てづらくなった」

 リンが嬉しそうに笑う。

「次、私の番ね」

 エリスが前に出る。

「本気で来るわよ、レン」

「ああ、頼む」

 エリスが剣を構える。

 そして――一瞬で間合いを詰めてきた。

「光剣舞・一の型!」

 連続突きが飛んでくる。

 俺は剣で受け流しながら、後退する。

「まだよ! 二の型!」

 回転斬撃。

 これは避けられない――

「融合術式・風刃」

 風を纏った斬撃で、エリスの攻撃を相殺する。

「!?」

 エリスが驚いて動きを止める。

 その隙に、俺は懐に入った。

「そこまで」

 剣をエリスの喉元に突きつける。

「……参ったわ」

 エリスが苦笑する。

「やっぱり、あなたには勝てないわね」

「いや、今のは危なかった。あと一歩遅れてたら、俺が負けてた」

「本当?」

「ああ。お前の剣技、かなり洗練されてる」

「……ありがとう」

 エリスが嬉しそうに笑う。

「でも、まだまだよ。試験までに、もっと強くなるわ」

「ああ、俺もだ」


 訓練の合間、休憩している時。

 エリスが切り出した。

「ねえ、レン」

「ん?」

「あなた、遺跡から戻ってから……何か変わったわよね」

「……そうか?」

「ええ。強くなったのもそうだけど……それだけじゃない」

 エリスは真剣な目で俺を見た。

「何か、思い出したんじゃない? 記憶を」

「……!」

 図星だった。

「やっぱり」

 エリスは優しく微笑んだ。

「無理に話さなくていいわ。でも……もし辛いことがあったら、私たちに話して」

「私もです!」

 リンも真剣な顔で言った。

「レン先輩が困ってたら、私たち、力になりますから!」

「……ありがとう」

 二人の優しさが、胸に染みる。

「実は……少し、思い出したんだ」

「本当に!?」

「ああ。でも、まだ断片的で……全部じゃない」

「どんなことを?」

 エリスが訊く。

「……俺には、仲間がいた。大切な仲間が」

「仲間……」

「七人で、一つのチームだった。そして……世界を救うために、戦ってた」

「世界を……?」

 リンが驚いた顔をする。

「それって……もしかして」

「ああ。博士が言ってた、禍ツ神……だと思う」

「!」

 二人が息を呑む。

「じゃあ、レンは……伝説の英雄の一人なの?」

「分からない。でも、記憶の中の俺は……確かに、禍ツ神と呼ばれていた」

 沈黙が流れる。

「……信じられる?」

 俺は二人を見た。

「こんな話」

「信じるわ」

 エリスが即答した。

「だって、あなたの強さは本物だもの。それに……」

 エリスは俺の左肩を見た。

「その刻印。普通じゃないわ。きっと、特別な意味があるんでしょう」

「私も信じます」

 リンが頷く。

「だって、私の符が反応したんですもん。運命なんです」

「……ありがとう」

 二人の言葉が、どれだけ嬉しいか。

「でも、今の俺は神代レンだ。過去がどうあれ、今を生きる」

「ええ、そうね」

「はい!」

 三人で笑い合う。

 この仲間がいれば――

 どんな試練も、乗り越えられる気がした。


 そして、試験当日。

 朝早く、エクリプス大闘技場に向かった。

「すごい……!」

 リンが感嘆の声を上げる。

 巨大な円形闘技場。収容人数は一万人を超える。

 既に多くの観客が詰めかけていた。

「ランクアップ試験って、こんなに注目されるのね」

 エリスも驚いている。

「ああ。エクリプスの一大イベントらしい」

 闘技場の入口で、係員が待っていた。

「受験者の方ですね。こちらへ」

 控室に案内される。

 そこには、既に多くの冒険者たちが集まっていた。

 人間、獣人、エルフ、ドワーフ――様々な種族。

 そして、皆一様に鋭い目つきをしている。

「今回の受験者は、全部で五十名」

 係員が説明する。

「まず、予選として魔物との戦闘。これで二十名に絞られます」

「二十名……」

「そして、本選は一対一の模擬戦。勝ち抜いた者がD級に昇格します」

「つまり、二十名全員が昇格できるわけじゃないのね」

 エリスが確認する。

「はい。最終的に昇格できるのは、十名程度です」

「厳しい……」

 リンが緊張した顔をする。

「大丈夫だ。俺たちなら、できる」

「……はい!」

 その時、背後から声がかかった。

「おや、君たちも受験者か」

 振り返ると、見覚えのある顔が。

「シュバルツさん!」

 黒髪の男、シュバルツ・ヴィントだった。

「久しぶりだな、レン」

「ここで会うとは思わなかった」

「俺もD級に上がろうと思ってな。最近、E級の依頼じゃ物足りなくて」

 シュバルツは俺の隣にいるエリスとリンを見た。

「ほう、仲間ができたのか」

「ああ。エリス・ルミナスとリン・シャオメイだ」

「初めまして」

「よろしくお願いします!」

「俺はシュバルツ。よろしく」

 シュバルツは不敵に笑った。

「それにしても、レン。お前、また強くなったな」

「……分かるのか?」

「ああ。俺は気配に敏感でね。お前からは、前より遥かに強い気配を感じる」

 シュバルツの目が、鋭く光る。

「もし本選で当たったら……本気でやらせてもらうぞ」

「……望むところだ」

 二人の間に、静かな緊張が走る。

「ふふ、楽しみだ」

 シュバルツは笑って、別の場所へ移動した。

「あの人……すごい気配です」

 リンが小声で言う。

「ええ。只者じゃないわ」

 エリスも警戒している。

「……シュバルツ」

 俺はその名前を呟く。

 なぜか、懐かしい響きだ。

 まるで、どこかで聞いたような――

「いや……」

 首を振る。

 考えすぎだ。


 しばらくして、アナウンスが流れた。

「これより、D級ランクアップ試験を開始します! 受験者は闘技場へ!」

 控室から、闘技場へ出る。

 観客席からは、歓声と拍手が響く。

「すごい人……」

 リンが圧倒されている。

「落ち着いて。いつも通りにやれば大丈夫」

 エリスが励ます。

 闘技場の中央に、試験官が立っていた。

 がっしりとした体格の、ベテラン冒険者風の男だ。

「俺がこの試験の試験官、ガロンだ」

 男の声が、闘技場に響く。

「まずは予選。お前たちには、魔物と戦ってもらう」

 ガロンが手を挙げると――

 闘技場の床が開き、中から魔物たちが現れた。

 オーガ、ホブゴブリン、ワイバーン――

 様々な魔物が、次々と現れる。

「ルールは簡単。魔物を倒せ。時間は十分。それで、お前たちの実力を測る」

「十分で……こんなに!?」

 誰かが叫ぶ。

「できない奴は、帰れ。D級には、実力が必要だ」

 ガロンが冷徹に言い放つ。

「では――開始!」

 笛が鳴る。

 同時に、魔物たちが一斉に動き出した。

「来る!」

 俺は剣を抜いた。

「エリス、リン!」

「分かってる!」

「はい!」

 三人で、魔物の群れに突っ込んだ。


 オーガが俺に向かってくる。

 棍棒を振り下ろす――

 俺は横に避けて、カウンター。

「はっ!」

 剣がオーガの首を斬る。

 オーガが倒れる。

「レン先輩、後ろ!」

 リンの声。

 振り返ると、ホブゴブリンが三体。

「火符連撃!」

 リンの符札が炎を放つ。

 ホブゴブリンたちが怯む。

「今よ!」

 エリスが突進し、三体をまとめて斬り倒す。

「やるわね!」

「当然よ!」

 周りを見ると、他の受験者たちも戦っている。

 シュバルツは双剣で、魔物たちを次々と斬り倒している。

「速い……」

 まるで黒い風のような動き。

「あの人、本当に強いです……」

 リンも感心している。

「俺たちも、負けてられないな」

「ええ!」

 俺たちも、魔物を倒し続ける。

 連携は完璧。

 まるで、何年も一緒に戦ってきたかのように。

 そして――

 十分が経過した。

「時間だ! 戦闘終了!」

 ガロンの声が響く。

 闘技場を見渡すと、生き残った魔物はほとんどいない。

 受験者たちも、全員無事なようだ。

「……ほう」

 ガロンが満足そうに頷いた。

「今年は、レベルが高いな」

 そして、結果が発表される。

「予選通過者、二十名! 名前を呼ばれた者は、本選に進め!」

 次々と名前が呼ばれる。

「神代レン!」

「エリス・ルミナス!」

「リン・シャオメイ!」

 俺たち三人とも、通過だ。

「やった!」

 リンが喜ぶ。

「当然の結果よ」

 エリスも笑顔だ。

「シュバルツ・ヴィント!」

 シュバルツも通過したようだ。

「さあ、本選だ!」

 ガロンが宣言する。

「ここからが、本当の試験だ!」

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