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マガツカミ ―忘却の英雄は異世界で目覚める―  作者: アイザワ


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8/15

遺跡の秘密

 水晶が刻印に吸収された後、しばらく動けなかった。

 頭の中に流れ込んできた記憶の断片。それは鮮明で、痛いほどリアルだった。

「レン、本当に大丈夫?」

 エリスが心配そうに肩を支えてくれる。

「ああ……もう、平気だ」

「無理しないでください」

 リンも不安そうな顔をしている。

「大丈夫だ。それより、先に進もう」

「そうじゃな……」

 アルベルト博士が広間の奥を指差した。

「どうやら、この先に本当の調査場所がありそうじゃ」

 広間の奥には、下へ続く階段があった。

「行きましょう。でも、気をつけて」

 俺が先頭に立ち、階段を降りていく。

 石段は古く、一歩ごとにギシギシと音を立てる。壁には相変わらず古代文字が刻まれている。

「博士、この文字は何て書いてあるんですか?」

 リンが訊く。

「えーと……『ここに眠るは、世界を救いし者たちの記憶』……そして、『封印を守りし、七つの魂』……」

「七つの魂……」

 俺は呟いた。

 さっきの七体の石像。あれは、七人の英雄を模したものなのか。

 そして、俺の記憶に出てくる七人と――

「関係が、あるのか……?」

「何か言った?」

「いや、何でも」

 階段を降りきると、さらに広い空間に出た。

 そこは円形の大広間だった。天井は高く、中央には巨大な祭壇がある。

 そして、祭壇の周りには――

「魔法陣……!」

 エリスが驚きの声を上げた。

 床一面に、複雑な魔法陣が描かれている。

「これは……見事じゃ!」

 アルベルトが興奮して、魔法陣を調べ始めた。

「この陣は……西洋魔法と東洋術式の融合じゃ!」

「融合?」

「ああ。本来、両者は別々の体系のはず。それが、ここでは完璧に融合している……こんなもの、現代では作れん!」

 融合――

 俺の使う、融合術式と同じ。

「博士、これは何のための魔法陣なんですか?」

「おそらく……封印のためじゃ」

「封印?」

「ああ。何か強大な力を、ここに封じ込めるための陣じゃろう」

 その時、祭壇の上で何かが光った。

「あれは……」

 近づくと、祭壇の上には黒い球体が浮かんでいた。

 前に、ゴブリンの巣で見たものと同じ。

「これ……!」

「おお! これは一体……?」

 アルベルトが目を輝かせる。

「触らない方がいいぞ」

 俺が制止しようとした――その瞬間。

 球体が突然、激しく光り始めた。

「!?」

『――封印を解く者よ』

 声が響く。

『――汝、刻印の継承者なり』

「また、この声……!」

『――三つ目の試練を与えん』

「試練?」

『――汝の覚悟を示せ。さすれば、次なる記憶を授けよう』

 球体の光が増し――

 魔法陣が発動した。

「みんな、離れろ!」

 だが、遅かった。

 魔法陣から光の柱が立ち上り、広間全体を包み込む。

「きゃあ!」

「うわっ!」

 エリスとリンが悲鳴を上げる。

 そして――

 光が収まった時、俺たちは別の場所にいた。


「ここは……?」

 辺り一面、白い空間。

 床も壁も天井も、全てが真っ白。

「幻術……いえ、これは……」

 リンが周囲を見回している。

「精神空間のようなものね」

 エリスが剣を構える。

「博士たちは?」

「いない……私たち三人だけのようだ」

 その時、前方に人影が現れた。

 いや、七つの人影。

「!」

 それは、さっき見た石像と同じ姿だった。

 剣、双剣、扇、短剣、錫杖、大剣、そして刀。

 七人の戦士が、こちらを見ている。

 だが、顔は光に包まれて見えない。

『――試練を始める』

 声が響く。

『――汝ら三人で、我らを超えてみせよ』

「超える……って、戦えってことか!?」

『――然り。我らを倒せば、次の記憶を授けよう』

 七人の戦士が、一斉に武器を構えた。

「まずい……七人相手は……!」

「でも、やるしかないわ!」

 エリスが前に出る。

「レン先輩、私も戦います!」

「ああ……三人で、勝つぞ!」


 戦いが始まった。

 最初に襲いかかってきたのは、双剣を持つ戦士。

「速い!」

 超高速で接近してくる。

 俺は剣で受ける――が、衝撃で弾かれる。

「ぐっ!」

「レン!」

 エリスが援護に入る。

「光剣舞・一の型!」

 連続突きが双剣の戦士を襲う。

 だが、戦士は全て回避した。

「嘘……全部避けられた!?」

 そこに、扇を持つ戦士が攻撃してくる。

 扇を一振り――

 幻覚が展開された。

「きゃっ!」

 エリスが混乱する。

「火符爆裂!」

 リンが符札を投げる。

 炎が扇の戦士を襲う――が、戦士は幻影を残して消えた。

「幻術!?」

「こっちだ!」

 俺は背後からの気配を感じ、振り向きざまに斬る。

 扇の戦士が姿を現し、攻撃を受け止めた。

「やはり、実体はある!」

 だが、他の戦士たちも動き出す。

 大剣の戦士が突進してくる。

「うわっ!」

 リンが狙われた。

「させるか!」

 俺が割って入り、大剣を受け止める。

 だが、力が――

「く、くそ……重い!」

 押し負けそうになる。

「レン先輩!」

 リンが風符を投げる。

 風が巻き起こり、大剣の戦士の動きが鈍る。

「今だ!」

 俺は体勢を立て直し、反撃する。

 だが――

 短剣の戦士が影から現れ、俺の脇腹を狙う。

「!?」

 ギリギリで避ける。だが、服が裂け、浅い傷ができた。

「レン!」

「大丈夫だ! 気をつけろ、影から攻撃してくる!」

「分かったわ!」

 エリスが周囲を警戒する。

 だが、七人を相手に、俺たち三人では――

「このままじゃ、負ける……!」

 その時、俺の頭の中に声が響いた。

『――思い出せ、ミコト』

「!?」

『――お前は一人じゃない。仲間がいる』

「仲間……」

『――信じろ。そして、繋がれ』

 声が消える。

 だが、その言葉で――何かが分かった気がした。

「エリス、リン!」

「何!?」

「連携するぞ! 俺の動きに合わせてくれ!」

「分かったわ!」

「はい!」

 俺は深呼吸をして――

 目を閉じた。

 意識を研ぎ澄ます。

 エリスの気配。リンの気配。そして、敵の気配。

 全てが、分かる。

「……行くぞ!」

 目を開き、駆ける。

 双剣の戦士に向かって突進。

 戦士が反応する――その瞬間。

「エリス、右!」

「はい!」

 エリスが右から攻撃する。

 戦士が防御に回る――そこに。

「リン、封印!」

「了解です! 封印札!」

 リンの符札が戦士の動きを止める。

「今だ!」

 俺の剣が、戦士の胴を貫いた。

 戦士が光になって消える。

「一人……!」

「やったわ!」

「続けます!」

 同じ要領で、次々と戦士を倒していく。

 扇の戦士には、リンの幻術破りの符で対処。

 大剣の戦士には、エリスの連続攻撃で隙を作る。

 短剣の戦士には、俺が気配で先読みして迎撃。

 連携が、完璧に決まる。

 まるで、何度も一緒に戦ってきたかのように。

「あと三人!」

 残るは、剣、錫杖、そして刀を持つ戦士。

 三人が同時に攻撃してくる。

「くっ……!」

 数が多すぎる。

 その時――

 俺の左肩が、激しく光り始めた。

「!?」

『――解放、第三階層』

 声が響く。

 刻印から、膨大な力が溢れ出す。

「これは……!」

 視界が鮮明になる。思考速度が上がる。

 そして――

 記憶が、蘇る。

 この三人と、戦ったことがある。

 いや、違う――

 この三人と、共に戦ったことがある。

「お前たちは……俺の……!」

 剣の戦士に向かって突進する。

 戦士の動きが、全て読める。

「せりゃああ!」

 攻撃を全て避けながら、カウンターを決める。

 剣の戦士が光になって消えた。

「レン先輩、すごい……!」

「集中しろ! あと二人!」

 錫杖の戦士が、治癒と防御の術を展開する。

「厄介だ……あれを崩さないと」

「私に任せて!」

 リンが符札を連続で投げる。

「火符、雷符、氷符――全属性連撃!」

 多彩な攻撃が、錫杖の戦士の防御を削っていく。

「今よ、エリス!」

「ええ! 光剣舞・奥義!」

 エリスの剣が光を纏い、一閃。

 錫杖の戦士が消えた。

「残るは……」

 中央に立つ、刀を持つ戦士。

 一番若い姿。

 そして――

 一番強い気配。

「……お前が、最後か」

 戦士は無言で刀を構える。

 俺も剣を構える。

 二人の間に、静寂が流れる。

 そして――

 同時に、動いた。

 刀と剣がぶつかり合う。

 ギィィィンと、金属音が響く。

 互角だ。

 戦士が連続攻撃を仕掛けてくる。

 俺もそれに応じる。

 斬撃、突き、薙ぎ払い――

 全ての技が、鏡写しのように同じ。

「お前は……俺なのか?」

 戦士は答えない。

 だが、その動きから――分かる。

 これは、俺自身との戦いだ。

 過去の自分。失われた記憶の中の自分。

「なら……!」

 俺は全力で、剣を振るった。

「俺を超えてみせる!」

 刻印の力を全て解放する。

 融合術式が発動する。

「融合術式・紅蓮氷刃!」

 炎と氷、相反する属性が同時に発動する。

 戦士が驚いたように動きを止めた。

 その隙に――

「はああああっ!」

 全力の一撃を叩き込む。

 刀と剣がぶつかり――

 戦士の刀が、砕け散った。

「……!」

 戦士が膝をつく。

 そして――

 光になって消える前に、戦士が口を開いた。

『――よくやった、ミコト』

 声が聞こえた。

『――お前は、確かに成長した』

「お前は……誰だ?」

『――いずれ分かる。その時が来るまで……』

 戦士が完全に消えた。

 そして――

 白い空間も、崩れ始めた。


 気がつくと、元の祭壇の前に戻っていた。

「……終わったのか?」

「どうやら、そうみたいね」

 エリスが息を整えている。

「すごかったです、レン先輩……」

 リンも疲れた様子だ。

「お前たちのおかげだ」

 本心からそう思う。

 二人がいなければ、勝てなかった。

「おお、戻ってきたか!」

 アルベルトが駆け寄ってくる。

「急に光に包まれて、心配したぞ!」

「すみません。大丈夫です」

 祭壇を見ると、黒い球体が輝いている。

「また……これか」

 手を伸ばすと、球体が俺の左肩に吸い込まれていった。

「っ……!」

 刻印が熱を帯びる。

 そして――

 大量の記憶が、流れ込んできた。


 燃える街。

 崩れ落ちる建物。

 そして――

 七人の仲間たち。

『――ミコト、お前は生き延びろ!』

『――俺たちのことは気にするな!』

『――お前には、未来がある!』

 仲間たちの声。

 そして――

 最後の光景。

『――転生の法、発動!』

 世界が光に包まれ――

 俺は、ここに来た。


「……そうか」

 全てではないが、かなりの記憶が戻った。

 俺の名前は、ミコト。

 前世で、禍ツ神という組織にいた。

 そして、世界を救うために――

 仲間たちと共に、戦った。

「レン?」

 エリスが心配そうに声をかけてくる。

「大丈夫か? 顔色が悪いわよ」

「ああ……大丈夫だ」

 俺は二人を見た。

 エリス。リン。

 大切な仲間。

 そして――

 もしかしたら、前世でも知っていた人たち?

「いや……まだ、分からない」

 でも、いつか――

 全ての真実を、知る日が来る。

「帰ろう」

「ええ」

「はい!」

 三人で、遺跡を後にした。


 その夜、宿で。

 俺は一人、窓の外を見ていた。

 月が綺麗だ。

「ミコト……それが、俺の名前」

 でも、今は神代レン。

 新しい人生を歩んでいる。

「どちらが本当の俺なんだ?」

 答えは出ない。

 でも――

 今は、レンとして生きよう。

 そして、いつか全てを思い出した時――

 その時に、決めればいい。

「俺は、何者なのか」

 呟いた言葉は、夜風に消えていった。

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