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世界の終わりが始まった日  作者: 黒い猫
18/50

18 復帰

忌引き特休と残ってた有給をほぼ使い切ってたので、そろそろ仕事に復帰しなければいけない。

 

気持ちを切り替えて、これから私が一家の大黒柱になるのだから。


 


有給の間にできるだけ、用事を済ませる。


主人の銀行関係、クレジットカード、公共料金等々 手続きは沢山。


自動車保険の更新もあって、その辺の名義変更も確認する。


役場にも何度も行く。


 


しなきゃいけないことをしていると、動ける自分が居てた。


 


職場復帰は大丈夫だとおもってた。


 


久しぶりの職場。各部所に挨拶にまわる。

皆が事情を知っているので、普段あまり話さない人もそばに寄ってくる。

言葉は悪いが、興味深々と。

知りたいのだろう。事故で愛する人を亡くした遺族のことが。


主人の話が出そうになるたびに遮る。


「ごめん、泣いて仕事にならないと思うから、言わないで。」 と。


そうはっきりと断ると、それを圧してまで聞いて来ようとする人は……一人しかいなかった。

 


仕事は途中まで順調だった。


新人さんも入ってて、色々教えながら、これなら大丈夫だな…と、自分でも思ってた。


 


職場はお年寄りの患者さんが多かった。


 


ふと…なんで、こんな年寄りになるまで生きてる人が沢山いてるのに、まだ若い主人だけ死ななきゃいけなかったんだろう???

とゆう思いが出てしまった。




そう思う自分に気が付いてしまうと、もうダメだった。


 


お年寄りが憎くて憎くて、こいつらが死ねば良かったんだ…と、本気で思ってしまう自分が居てた。


 


同僚に声を掛け、席を外した。医局に薬をもらいに行くために。




「精神安定剤とかなんか…もらえませんか?」 


「どうしたの?辛い?ここに座って」


主任が優しく声をかけてくれる。


涙がポロポロでてくる。


「自分が情けなくて…沢山のお年寄りが生きてるのに…うちの主人はまだ若いのに亡くなって…なんでコイツ等生きてるんだ??主人の代わりに死ねば良かったんだ…って思っちゃって…自分が情けなくて…」


「そうか。辛いね。復帰はまだ早かったんだよ…」


「…」


「ちゃんと泣いてる?我慢しちゃだめだよ。頑張らなくて良いんだからね」




こんな醜い感情が渦巻いてる私にとても優しく声をかけてくれて…申し訳ないのと、悲しいのと、そして、無関係な患者さんに対する失礼な思いが情けないのとで…


ますます、涙が止まらなかった。




上の人がきて、「現場は大丈夫だから、今日はもう帰りなさい。少し休んで。無理しなくて良いから」と言ってくださった。

 

職場を早退して…でも涙が止まらなくて、家に帰るのは少し落ち着いてから…と思い、家のそばのコンビニの駐車場で車の中でしばらく過ごした。


 


翌日、これでは駄目だ…と思って、心療内科を探した。

田舎で、病院が少なくて、通える範囲で…と、探して、見つけて診察を受けた。


重度の鬱で、3か月の治療が必要と。


 


沢山の薬がでた。


 


復帰早々に、傷病休暇をもらうことになった。



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