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世界の終わりが始まった日  作者: 黒い猫
17/50

17 虚

どうやって帰ってきたのか…記憶が無い。

いつ、喪服を脱いだのかも…。



 

自宅の祭壇には紫色の箱が祀ってある。



主人が入ってる。


 

お線香を付けて、ぼーーーーっと、箱と主人の写真とを眺めて過ごす。



おかしい…主人はどこに行ったんだろう??




亡くなった…と頭ではわかってるつもりだけど、実感が無い。



あんなに泣いたのに。


なのに実感が無い。


 


実感とゆうか、感情とゆうか…自分の中に大きな穴があいて…からっぽな自分が居てた。


 


夜は二階の寝室で主人のパジャマを抱きしめて横になった。


最初の夜と同じで、眠ってるのか起きてるのか…自分でもよくわからなかった。


 


朝は主人の御膳を用意して、祭壇の前で過ごした。




人が来たら対応はできた。


でもなんか…機械的にしかうごけない。

 


セレモニーの人が、まとめられた香典と帳面とか色々持ってきた。

香典は手提げの袋に入って、受け取ったは良いけど一つの疑問が。


「…これ…葬儀代は主人の会社がお金出したから、香典も会社に渡すんじゃないの???」

ぼーっとした頭でも、これは渡し先がちがうのでは???と聞かなきゃいけないと思った。


「ちがいますよ。香典はご遺族が受け取るものですよ。」

そういって、セレモニー担当者は、鞄を渡してきた。


丈夫そうな不織布で作られた鞄はずっしりとレンガが入ってるかのように重かった。


…こんなん、どないせーっちゅうねん???


扱いがわからずに、取りあえず、その辺にポイっと置いた。

頭が動かず、何をどうしたら良いか…なんて判断できなかった。


かなりの大金が入ったそれを、無造作に放置する私を見た担当者は優しくアドバイスしてくれた。


「…それは全部お金ですから、ちゃんと金庫かなにかに入れて、早めに銀行に預けてくださいね」


…そっか…お金だからどっかに入れて、銀行に預けるのか…

ほんと、頭が動かない。


「銀行ですか?」


「そうしてください」


 


セレモニーの人が言ってくれたから、お金をどうしたらいいのかがわかった。


ほんとうに思考が停止してたとゆうか、自分でものを考えらえてなかった。

その香典はかなり長い間、無造作に放置されることになる…。




お骨になって帰ってきた主人のお世話の方法をプリントを見ながら教えてくれた。


7日毎にお団子を作ることとか、四十九日の打ち合わせとか、色々話をしたけど、ちっとも頭にはいらなくて、理解できなくて


「義妹と相談してから…」と後日にしてもらった。


 


御位牌は義母さんが居たし、義父と同じので良いね?ってことで、同じ大きさの同じのにしてもらった。




旧家で…お位牌が沢山あって、家を建て直してから仏壇が小さくなったので並ばないので段ボールに入ってるのもあるから・・・と、「繰り出し位牌」なるものを義母さんが頼んでいた。


 


なんか…どうでもよくて、しんどくて 義母さんに任せた。


 


生命保険の人も手続きに。


会社で入ってたやつだから、言わなくても来てくれた。

いっぱい0のついた額面は、私にとって単なる数字でしかなかった。


 


会社の人も来た。


退職金がもらえるらしい。

明らかに就業中の事故で、会社有責だからか、定年退職した場合の満額が頂けるそうな。

労働組合からと、業種組合からのもなんか出るらしい。

労災遺族年金ってのと、厚生遺族年金ってのもなんかもらえるらしい。


労災のほうは会社で手続きを。厚生年金のほうは私が自分でしなきゃいけないらしい。


 

なんか…色々説明してくれてたけど、なんかよくわからない。 

札束を山と積まれても、主人が居ないんですよ…。



取りあえず、しんどいから早く横になりたかった。

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