戦いの一幕
爪には牙を 目には目を 化け物にはバケモノを どちらが先に倒れるか 我慢比べをとくとご覧あれ
─チリン
「がぁ゙あっ……あぐぅ゙…………ぐぁぁ゙あ゙ア゙ァ……」
妖華は姿が変わる。黄金色の化け物に。
それに相対するは紫黒色のバケモノ。
妖華は必ず帰るという信念を持ちまた祠のバケモノも自分を取り戻そうと躍起になっている。
「サぁ、やるぞ」
(まずはどうするか、あーゆう不定形なものには物理が効かないのがお約束だが。リーチはこちらの方が短い……なら)
妖華は走りだす。木々の間を跳び、バケモノの背後を目指す。速さは充分。邪魔が入らなければすぐにでも着けるだろう。
だがそれをバケモノが許すはずもなく。
─ビュッ
「ぐっ……」
─ドゴンッ
「がっ……かひゅっゥ……いってぇな!」
(尻尾厄介すぎんだろ! どうする……まじの格上だぞ。だが奴の尻尾が当たるってことは俺の攻撃だって当たるはず)
なかなかこない妖華に痺れを切らしたのかバケモノがこちらに近づいてくる。
「キシャァァァ゙ァア」
声を上げ今にも食って掛かからんとする勢いだ。口の先から舌がチラチラと見える。
─ビュウッ グアッ
「グうっ!」
─ドンッドガッジャァン
「あっぶねぇ……なんで噛みつきであんな岩が崩せるんだよ!」
(回避が間に合わなかったら詰んでたな。だが、とっさに上に跳んだのは偉いぞ、俺! あいつが今、下にいることは好都合!)
─ビュウッ ガギュリッ
妖華は上から落ちるスピードを使いこちらを向いたバケモノの鼻先に爪を立てそのまま引き裂いた。
「ガッハッハ! お前たぶん蛇だろ! 蛇の弱点はなぁ鼻先って決まってんだ! そのまま苦しんどけ!」
(しばらくはピット器官が傷ついて動けんはず。この調子でや『キシャァア゙』
─ビュッ ガッリ゙ュ
だがそれは叶わず、バケモノは突然動き妖華の耳をを食いちぎった。
「なっ……(……意識が……)ぐっぁ゙……ぁ゙……ア゙ァ……ァァ」
その時妖華の目は赤く光りだし動向は大きく開いていった。
我を忘れ目の前の全てを破壊する、もはや今の妖華に自我など残ってはいなかった。
「貴方は壊れかけるたびにここに来るのですか?」
あっ、ちょっと前に来た所だな。ほんとにここはなんだ? 体は……透明って訳では無いんだな。
「はぁ……貴方は最後まで壊れないと一緒に逝けないのですから……ほら、早く還ってくださいね」
この前もいた何かが今回もいる。
俺があたりを見渡すとここは古本屋のようだ。よく分からない骨董品と本棚が所狭しと置いてある。
部屋はそこまで広くなく奥のカウンターの向こうに何かはいる。
「貴方、そんな悠長にしてていいのですか? このままここに来ることになりますよ? まぁ、私としてはそちらの方がありがたいのですが」
そうだ、俺は帰るんだ、絶対に、
「ええ、やはり貴方にはそれが似合う。では転ばぬようにお気をつけてくださいね」
─カラン カラン
「はっ……俺は一体? 体いてぇな。ん、はぁっ? 今どういう状況だよ!」
妖華の前には先程とは打って変わって疲労困憊で傷ついたバケモノがいた。鱗は剥がれところ口からは血がポツポツと垂れている。
(なんで急に? 誰がやったんだ? てかなんか立ちづらい)
妖華が下を見ると傷だらけの体と前の片足が無く腹に牙の跡が残る自分だった。
「ヒュッ……アドレナリン切れたらやばそうだなー。いや冷静すぎんだろ」
(そんなことはどうでもいい。こっちもやばいがあいつも同じっぽい。最後の正念場だ)
「さぁ、命をかけた戦い、最後の一幕とくとご覧あれ!」
「ギシャアァァアア゙ァ」
─ドゴォン
バケモノが妖華に向かって突進をするがもう体力が無いのか先程より遅く回避しやすい。
だがそれはこちらとて同じこと。あと少しで戦いは終わりを迎える。
「おおっと、やっぱ足無いと動きづらいがあと三足あるし四足って便利なんだなー」
(やっぱリーチ差がきつい。だったら!)
─タッタタッダッタ
妖華はバケモノに向かって突っ込んでいった。
バケモノも向かってくる馬鹿者に口を開け牙を向ける。
─グアッ
─バリッ バサッ ビュッゥ
─ガリッ
バケモノが噛みついた場所には何もいなかった。周りにも何もいない。
「ガッハッハ! 上だぁ! こっちを見ろ!」
そこには太陽を背にした一匹の八咫烏がいた。
背後の太陽で目がくらみバケモノは怯んでいる。その一瞬の隙を逃すほど妖華は甘くない。
「疑似太陽拳ってかぁ! そこだ!」
─チリン
「ぐぅあっ、ひゅっう……あ゙ぁ゙あぁああ!!」
─ズブッ ガリュッ
「ギシャア゙アアア゙ァ゙アァァ゙」
空高く飛んだ烏は獣になりバケモノの目を貫いた。
そのまま獣は地面に落ちていく。もう何かをする気力は残されていなかった。
「ははっ……着地考えてなかった、な……」
最後まで読んでいただきありがとうごさいます。
擬音って難しいですよね。
それでは前回の小話を、最後生き残ったあの男は口調を妖華よりゆるくしています。
それでは次回も是非読んでいってくださいね。