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人未満が行く化け物探し  作者: 猫烏
妖魔となりてこの世を見る
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おまけ 修行中のオアシスで

これは修行中のある一節のお話である。

「げぇぇー……疲れた! おい空狐! 提案なんだが少しくらい指導で手を抜いても罰は当たらんと思うがどうだ?」

「何を言う。模擬戦で手を抜いて何になる。これはあくまでお主の為にやっていること。ここで手を緩めるとお主の為にならない。とやかく言わず精進しろ」

「あー空狐がひでぇや」


 模擬戦を受け空狐からぼろぼろにされた所からお送りいたします。とりあえず鼠ってかなり手加減してくれてた事が模擬戦で分かりました。

 腹を上に向け草地に転げ、俗に言うヘソ天の状態になる。

 現在、狐に化けれるようになって数十時間経過……したように感じたが実際の空はまだまだ明るく太陽が照りつけ、多少雲はあるが太陽を隠す程はなく容赦のない日差しを一身に受ける。

 こういう時の時間の進みは遅いことを再確認する。楽しい時間と苦しい時間は絶対時間進み違うだろ。


「さぁ、しっかり休めただろ。修行を再開する。筋は……まぁ良い方ではあるが、体の動かし方が荒い。ひとまずの大まかな課題は、お主の小さい体格を生かす為に一つ一つの動きを最適化及び最速化。幻影狐ぐらいは無傷で倒してもらう。その後は弱化(デバフ)状態での体術方法。術方面を伸ばすとなれば……そうだな。お主は妖気を掴むことに長けている。今は周囲に広がる妖気操作が基本だが、後々他人の妖気を認識し操ることができれば戦いにおいて優位を取れる。それから………『あー待ってくれ。そういや俺、空狐に聞きたいことあったんだがいいな? おし、じゃあ話すからな』何も言うてないが」


 これ以上の地獄(修行)が確定する前に話を遮る。もうこれ以上地獄に顔を覗かせに行きたくない。

 といってもここで止めようとも空狐の修行内容が変わることはない。でも聞かなければそれが確定することはない。聞いたその瞬間に地獄が確定するのだ。まさにシュレディンガーの何とやらってやつだ。少し違うか。

 つらつらと文句を並べたがこれまでの情報を端的に話すとこれはただの現実逃避である。


(あー人とはなんと愚かなことだ。人ではないけど)


 さてここで問題が発生する。話を遮ったはいいものの話す内容を決めていないのだ。

 話を遮ってまで話す価値がある物を考えなければ即刻地獄に堕ちる。それだけは勘弁してくれ。

 体力面も勿論嬉しいが、休憩が長くなればなるほど修行が短くなる恩恵の方がありがたい。とにかく時間を稼がなくては。


「なんだ? 何もないならこのまま再開するが?」

「あーちぃと待ってくれませんかねぇ。うん、話の内よっ……ではなくてねー話の出たしを考えてるだけだから」


 いつの間にか俺の後ろで構えている幻影狐に警戒しながら頭をフル回転させる。


「あっそうそうそう。あれだ出会った時の空狐の口調! 初めて会った時は胡散臭さがやばかったがあれどこ行った?」

「あ……あー…………うむ……そ、そうだな。あれ……か」


 空狐は動揺していることが一目でわかるほど目が泳いでおり言葉も歯切れが悪い。

 暫くして覚悟を決めたようでこちらをじっと見ている。と思ったが目線が合わない。どうやら後ろの虚空を見つめているようだ。

 時間稼ぎのつもりだったが思った以上に面白いことになりそうだ。


「あれは……少し口調作った……な。おそらく威厳ある印象に見せたかったからだと……思うが。詳しくは記憶にない」


 そう言うと空狐は言い淀む。顔は赤くなっておりその額には脂汗をかいている。

 幻想狐も消え失せ元いた場所には煙が残るばかりである。


「威厳ねぇ……その割にはその皮剥がれるの早かったな?」

「……わしの過去を知り過去との決別を手助けしてくれた者に偽りなど必要ない」

「じじいのデレは助からねぇな」

「なっ……流石にその言葉はわしであろうとも傷つく。小っ恥ずかしい言葉を吐いたわしが悪いか」


 妙に納得した様子で頷いているがそれでいいのか元神様よ。


(そうか……何か違和感あるかと思ったがこいつ人間臭いんだ。今まで会ってきた奴らより断然)

「…………人間臭いとは……それが元神も務めた者に対する印象か……」

「だってなぁ、最初はわしは神ではないとか言っとったのに今でも神に固執しとる所とか。悪い方でそれっぽい。神はもっと切り替え早いもんだぞ」

「その偏見はどこから来たのだ……」

「そりゃ八咫烏じゃ……いや……でも八咫烏もそんなか? えっじゃあどっから来たんだよ」


 脳をどれだけひっくり返してもそんな記憶はない。

 ではこの偏見はどこから染み付いたのだろう? 

 いくら考えてもその答えが出ることはない。忘却の彼方に葬られた記憶。

 いつかこれを取り戻した時に俺の名や他の者の名も分かるのだろうか。それともそれを思い出す頃には忘れていたことすら記憶から消し去っているのだろうか。漠然とした不安が体を駆け巡る。


「わしに言われても知らん。わしはそれどころではない……人間臭い……か……」

「いやあれだからな。良い方もあるから。お前は喜怒哀楽が分かりやすくて人間臭いのもあるから。つかあれだ、今思うと俺に過去の話したのも愚痴聞いてもらいたいとかあったんだろ? 凄い人間臭いじゃねぇか」


 考えているうちに空狐が思ったより沈んでいた。

 悪い方で人間臭いと言われた事がそんなにき気にするとは思いもしなかった。


「お主……もう少し言葉の包丁は切れ味を悪くしたほうがいいぞ……それとわざとではないと思うがわしは人間臭いと言われた方が気になったのだが」

「やっべ別の方向から刺しちまった」


 さぁどうしましょう。もはや収集がつかなくなってきました。面白いですねー。

 現実から目を背けても何も起こらないので真面目に考える。

 と言っても、もう解決策はある。誠に遺憾だがこれを納めるためにはこれしかないだろう。


「さぁーて、しっかり休んだしそろそろ体動かしたいなー! あっはっは!」

「う……うむ? そっそうだな。お主からそう言うとは……よほどやる気があると見える。そうかそうか、ではそのやる気に応えねば無作法になるというもの……あい分かった。では始めるとするか」


 これからの地獄が少しでも楽になるようどこかの神に祈ります。アーメン。

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