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人未満が行く化け物探し  作者: 猫烏
妖魔となりてこの世を見る
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鬼畜狐が鞭振るう

黄色い狐と白い狐 師匠と弟子とはまた違う 名をつけられぬこの関係 心地良いことには変わり無い

「はぁ……ふっ……勝手に殺すなクソ野郎」


 だが実際あのまま八咫烏の状態だったら潰されていただろう。ぺしゃんこなんてまっぴらだ。

 八咫烏の体長はあって普通のカラス程度。対して今の体長は中学生ぐらいはあるのではなかろうか。一気に目線が上に上がり少しぐらつく。


「かっかっか! いいなぁお主。これは兄者が気に入るのも分かる。危機に陥ろうともそこから最善の一手を掴み取り命をかけて実行する。その心意気や良し。鍛え甲斐がある」


 先程の邪悪な笑みとは打って変わり心底愉快そうな表情を見せる。

 初めて会った時のあの不審者感はどこに行ったのやら。


「ははっ!! やってやったぞ空狐!! これで充分だろ。そろそろ寝させろ! 過労で死ぬ」

「? 何を言う。まだまだこれからであろう」

「は?」


 空狐は心底不思議そうな顔をするがその顔をしたいのはこっちだ。しかもこっちは絶望の顔もプラスされるぞ。

 空狐が口を開く。もはやその先の言葉聞かずとも俺の地獄は確定しているがしょうがない、覚悟を決めよう。


「何故わざわざ幻影を鼠にしたと思っている。狐ならば場合即座に始末できる鼠。これは同族の修行に良くてな。兄者が得意だった技の一つだ。……おおっと話がそれた。さぁ……」


 空狐の後ろに狐の幻影が姿を現す。

 目があるべき所はぼんやりと赤く少し揺れるだけで赤い光が後ろに尾を引いている。その姿は一目見ただけで先程の鼠とは体格の良さが段違いだということが分かる。

 こちらが大きくなった分あちらも体長を合わせているようで、幻影と対峙した時の体格による圧はさして変わらない。

 そしてその前にはいつものあくどい表情を携えた空狐がこちらをにやりと見つめている。


「我が後継者、共に舞を踊り狂おう」


 元より休憩など無いことは感づいていた事だがこれからのこれだけは言わせてほしい。


「もはや天丼だろぉぉ!!」







「はぁ……うっ……うぇ……ぐえっ……あ゙ー俺生きてる?」

「生きているから安心しろ」


 修行という名のもはや鬱憤晴らしに近いものが一段落し草地に寝転がる。途中から絶対楽しんでたなあいつ。

 久しぶりに見上げた空はいつの間にか空は赤く染まり、かなりの時間が過ぎたことを嫌でも実感する。頬を撫でる風が上昇した体温には冷たく、肌寒ささえ感じるほどだ。

 いつの間にか自分の姿は黄金色の狐ではなく、小さく黒い烏の姿になっており、それは化けれるほどの体力さえ残っていないことを現していた。


「ちとやりすぎた。すまない」

「ほんとだよ。これから仕事の初出社なんだが。これどう落とし前つけてくれんだ」

「うむ、ならば……ほいっと」


 ──パチンッ


 心地良い綺麗な音が聞こえた途端、体は一気に軽くなる。

 どうやら何かの術をかけられたようで外からじんわりと温かくなる。


(助かったけど元々こいつのせいなんだよなぁ……なんだかなー。いやそのまま置いとかれるより断然いいけど)

「ふっ、懐かしいな。この術は初めてわしが人の子の為に力を使った時のもの。それが長い時を経て今度は妖魔の者にかける事になるとは……」


 しみじみと語る空狐をよそに俺は程よく成長した草に座り込む。

 昔の話をしてはいるが苦しそうな顔はどこにもない。それは過去の事に踏ん切りがつけたことを表情から物語っている。かもしれない。

 そもそも誰かさんのせいで全然休めてないがその誰かさんのお陰で体力戻った。

 ものすごい複雑な気持ちなのは変わらないがひとまず動けるようにはなった為、空狐を怒るに怒れない。


「へいへい。じゃあそろそろ俺は行くな。もうそろそろ暗くなりそうだ」


 赤いはずの空はいわゆる薄明と呼ばれる日の入り後の空模様となっている。もう暫くすれば星も輝き始めるだろう。

 今日は雲もなく良い星が見れそうだ。


「足を隠して……っとこれから先何があるか分からん以上隠せるもんは隠したほうがいいだろうな」

「では行く前に霧を元に戻せ。そうすれば森も何も言うまい」

「えっ森の霧って標準装備なんだ。だったら俺あそこまで頑張る必要あったか?」

「先程まであった霧は妖気の濃さが調節されてすらいない、もはや妖気の塊。そんな物に晒されて何事もないわけない。それとあと一つ……」


 そう言うと空狐は苦笑したような表情になる。


「普通は此処のようなただの森には名をつけない。勿論ここも名などなかったのだが…………かなり前の森の主殿が霧の使い手でな……自分の力を誇示し世界に広める為かお役目を頂いて霧を配置した後、ここは迷霧の森と政府の連中に宣言しよった。それからその名に矛盾が生じぬようその後の主は霧を配置せざるを得なくなった。どっかの過去の者(バカ)のせいで未来の者が苦労するいい例よ」

「イメージの為にねぇ……まぁええか」


 妖気を吸い込むのではなく薄く広く妖気を隅々まで広げる。少し霧が偏っている所があればそこの霧を薄い所に持っていく。

 霧はできるだけ均等に森中を駆け巡り落ち着いていく。まるで元よりそこが居場所とでも言わんばかりに素直に広がる。

 丁度いい妖気の濃度など分かりもしないが出来るだけ薄く、だが色の濃さは出来るだけ上げる。

 一寸先も見えない霧って良くない? 俺は好きだ。少しぐらい自分の要望を叶えても文句は言われないだろ。


「ふぅ……これでいいか? 初めてにしちゃうまくいっただろ」

「うむ、充分だ。霧の濃さも申し分ない」

(こいつも俺と同じ事考えてないか)

「おっほん……では行ってこい。我が後継者、八咫烏よ。この地でお主を待ち続けよう。」


 彼の言葉はここが俺の帰る場所と認めてもらえたようで嬉しくなる。

 今すぐにでもここを出発するべきだが、一つ聞きたいことがあったことを思い出した。


「そういや……なぁ空狐」

「どうした」


「夢を操る犬科の神様って知っとるか?」


「犬科っちゅうのは狐や狼、犬それに狸もか? そういえば天狐様の付き添いとして異国へ行った時アヌビス様がおられたがあの方も確かジャッカルという生き物が元のはずだ。だが……夢を操るというより夢枕に立つのはわしでもできていたが……それにしても犬とは……さすがに多いな」


 空狐が黙ってしまった。

 ということはそれに合致する者が多いのだろう。流石神様だこと。


(ある程度位の高い神様は夢枕に立てるのか……。手がかりが一個消えたな。だがあれは神様が夢に入ってくるというより俺が夢に招待されたって感じだった。そっから辿ればまだあるか?)

「すまない。また会うときまでには該当者をまとめておこう」

「あぁ、ありがとうな。助かる。それじゃ」


 ──ザッ バサッサッ


「手がかり無し……か。まぁ今は目の前のことを済まさんとな」







「犬科の神様……か。わしは眠りについてから今の情勢なぞ何も分からぬが兄者は今も健在か? だが後継者殿から感じた気配……てっきり信徒かと思っていたが……どうやら何も知らぬ様子。ふぅ……わしが思っているよりこの世は狂いつつあるのかもしれないな」

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 ここで前回の小話を、実は窓無いの方のネタを入れたかったのですがどうしても入れることができず諦めました。

 もしよろしければ評価もよろしくお願いします。読んでくれるだけで嬉しいのにまた嬉しさで咽び泣きます。

 それでは次回も是非読んでいってくださいね。

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