誰かが歩いたこの道を照らす者に
暗闇沈んだお狐様 ふと上見ればきらきら太陽光ってる その光に手を伸ばせ 伝えろお狐様の物語 それはまだ終わっていない
(黙っちまった……。えっどうしよ。流石にあれか。一応元神様に説教はきつかったか……? これぞ仏に説法ってか。いやこの状況じゃ神に悟りってね! がはっ!)
こんな事を考えているがこの考えもあっちには伝わっているのだろう。呆気にとられた顔がちらちらと視界に入ってくる。
これだから神様は……難儀なもんだな。このまま笑ってさらに雰囲気壊してやろうか。
(雰囲気ぶち壊しちまった。まぁこういうのって作った張本人が積極的にぶち壊すもんだろ。いけるいける)
「……ごほん…………。さぁ君はどうしたい?」
「もう無理だ。そっち方面に持っていくのは」
「そこをなんとか、ね?」
「未来を掴む、か。お主の言う通りだ。わしは過去ばかり見ていた。それでは未来どころか今すら見えぬものだ。それこそお主がこんな無鉄砲で命知らずの愛すべき者だということを知らぬかったのだから」
(あっ、許されたっぽい)
「………………はぁ……。もうこれ以上話聞いていたらお主のボロが出て話が進まん。もう遅いかもしれぬが……。今からわしの口から発せられる言葉、これはわしが人知れず立てた誓いだ」
空狐は天を仰ぎ手を胸に前に置く。
見つめる空は霧に覆われ空は見えないが時刻は午前、もう太陽も昇っている頃だろう。
太陽光なぞ霧に阻まれ差してはこないが俺の目には確かに空狐に天からの光が見えた。実際にはそんなことはなくただの錯覚だが。
空狐が口を開く。その言葉は清らかな水を思わせるかのように澄んだ声色をしていた。
「わしはずっと過去を悔やみ未来を見ようともしなかった。だがわしは前を向こうと思う。勿論過去もしっかりと見つめてな。わしを信じてくれた者、いや、村の皆に恥じぬような妖生を送ることをこの森に誓おう」
今までほとんど見えなかった瞳が開きその墨で染まったかのような瞳が顕になる。
その眼光には決意がみなぎっていた。
「ちなみにこれは聞かなかったことにーってできんよ」
「何を言う。ここに人なぞ居らん。これは人知れず立てた誓いなのだから。ここには妖魔しかおらんよ」
「ふっ……ひでぇな。神様に騙されたなー」
「それは元神に対しての皮肉と捉えていいか?」
言葉とは裏腹に今俺と話している天狐の姿は今まで見た者の中で一番美しく晴れ晴れとしていた。
ちなみに、神になった時はこんな感じだったんかな……。って感想がよぎったのは内緒だ。
「さぁ、今までわしの話を聞いてくれた礼だ。今なら何でも答えてやろう。何が良い? お主が望むなら神をも恐れる力を手に入れる方法さえ教えても構わない」
「あーいや興味ないけ大丈夫。うん。それより今までお前が何をしてたのかと主になることにより何が変わるのか教えてくれ。眠りから覚めたのはいつとかな」
「断られるとは思ったがそんな軽く扱われる品でも無いと思うのだが……まぁ良い。」
いつものように呆れられた表情をしている。
あの表情がもはやデフォルトなのではと疑うほど何度も見てきた。
(なんか……今まで会ってきたやつら全員にあの表情させてる気がする。ま、気のせいだな)
「わしが眠りについた、という話は覚えているな」
「覚えとる覚えとる。任せろ」
「つい最近何かの拍子でわしは目覚めそれから力を取り戻そうとするが埒が明かなくてな。わしはどうにかして妖気を溜めようと近づいた者を呼び寄せた……それで来たのがお主だ」
「ということは……お前、俺を殺そうとしてない? 俺そん時魂だったし魂って言ったら妖気の塊だろ? 普通に死ぬ所だったろ」
「あぁ…………勿論そのつもりだった。ただの魂を吸収し力を少しでも取り戻そうとわしは思っていただけだ。だがお主はあろうことか、わしの御神体に触れたではないか」
そんな軽く言わんくても……。
あそこで命終わる可能性あったってことだよな。生きてて良かったわ。
「あー……うん。いや、拭かないよりマシかなーって思っちゃった」
布なんて物は無く葉で拭いた暁には何か禁忌に触れそうだと思い手で拭いたがやはり空狐の逆鱗に触れてしまったか。
神道を学んでいないただの学生にそこら辺を求めるのは辞めてくれ。常識の範囲内で考えることしかできないぞ。
「普通の者は触れぬどころか認識さえできぬのだ。それほどわしは存在が危うかったという証明だが。いや、今は話を戻そう。お主は無意識だろうがわしは確かにお主から妖気を吸った。そう命を刈り取ったはずだ。が、お主は何もないどころか逆に妖気を分け与えたではないか。あれによりわしは力を取り戻し、今お主の前に姿を現すことができた。その結果わしはお主の信徒となっておるがな」
「えっ知らんなにそれ怖」
「……? そりゃ妖気を分け与えたのだからそうなるじゃろうて」
ものすんごいそれが普通ですけど何か? てきな顔されて腹立つ。
ただでさえ主になったって言われて困惑してんのに。えっ……もしや。
「それが……俺が主となった原因か?」
「いや、それとはまた違う、お主は森そのものに選ばれたようだ。わしのときは天狐様にお役目を頂いただけだがお主は本当の主になった訳だ」
「何か違うのか?」
「うむ、わしは外部からの者からここを治めろと言われただけだ。森自体に認められてはいない。だがお主はこの森自体に選ばれた。つまり森に主をやれと直接命じられた訳だ。与えられる力もわしの時より遥かに強くなるだろう」
(ほう……それはそれは……。中々にええ条件じゃないか。面倒だが見返りがあるなら俄然やる気が出てくるというもんだ。そもそもこの役目から降りることはできんのだから骨の髄まで搾り取って利用してやろうか)
「お主……逞しいな。それほどの芯の強さがあればこれから先安泰だな。それよりお主、今から時間はあるか?」
「あー……夕暮れ近くになったら一度街に戻るが、それまでは特に無い。つか今何時」
その瞬間空狐は笑った。だが今までとは別の意味で怖い表情をしている。
今までの呪やら畏れの怖さとかではなく、そう……言うなれば部活でしごかれる直前のような先輩が見せるあの笑顔。
「ふふっ……そうかそうか。ならまだ時間はたっぷりあるな」
「え、えぇ……時間はありますね。あーいや、ですが少し用事を思い出しましたね。えぇ、たった今。それでは」
「お主は神に嘘をつけるほど技量がある者だったかのー? 嘘を付くならもっと術を磨いてからつけ。さぁ……付き合え。共に強くなろうぞ。大丈夫だ。その時に主になったことについても教えてやろう」
たった今、俺の安寧の時間は消えた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここで前回の小話を、空狐の威嚇ですがあれはレッサーパンダやアリクイの威嚇をイメージしてもらえれば概ねそのとおりでございます。
もしよろしければ評価もよろしくお願いします。読んでくれるだけで嬉しいのですがまた嬉しさで咽び泣きます。
それでは次回も是非読んでいってくださいね。




