魂の繋がりと肉体の蘇り
結ぶ者と結ばれる者 一度結べば繋がり強固 貴方が望めばどこへでも 走って飛んで見つけだす
「はぁ?そんなわけないだろ。その前に神に会ったことすら無……ぁー、もしかしてさっきの記憶かぁ?」
彼女は先程思い出した光景で誰かと話し何か約束をしたことを今の現象につなげた。
「(あれ、神様だったのか?そしてその時に信徒となった……そうだとしたら俺が覚えていないのも説明つくし何よりそうであってほしいな。また手がかりが増えることになる)」
「結ぶことができんかったし戻るかの……ふー、ちょっときついのじゃ。おっ、なんじゃ?思い当たることでもあるのかの?」
八咫烏は不思議そうな顔でこちらを覗いている。いつの間にか普通の八咫烏に戻っていた。
「あぁ…たぶん。なんかすごい断片的だが、どこか知らない場所で誰かと話したような気がする。神様だとしたらあれか?そん時に信徒にでもなったんか?」
すると八咫烏は驚き首を傾げ、こう告げた。八咫烏が動くたびに羽がふれ少し幸せな気分になるが抜け毛もとい抜け羽が少し散っている。
「はぁ?覚えてないじゃと?童が今繋いでいるのは強い結びつき……かなりの信頼関係を築いてないと無理なものじゃよ」
「えっ、そうなのか?というかさっき俺はただ返事をしてお前の信徒になろうとしたがそれは大丈夫なのか?」
「あぁ、妾のはただ童の肉体と繋ぐだけじゃからな。だが今童に繋がっているのは精神につないでおるの」
「……?それは何か違うのか?」
八咫烏はどこからか黒板とチョークを持ってきて説明しだした。よくあの羽で物が持てるな……獣の時物が楽に持てるようにならんかな。
「えー、まず妾が行おうとした結びじゃがそれは肉体……つまりその繋いどる者が肉体を捨てると繋がりは消える。ここまでは分かるな」
(んーー…?つまり死ねば解放されるってことか?)
彼女はイマイチピンときていない様子で静かに聴いていた。
「まぁ良い、続けるぞ。じゃが童が繋いでおるのは精神つまり魂に直接繋いでおる。」
突然彼女は手を挙げ質問をした。
「せんせー、魂ってなんですかー」
「いい質問じゃ!だが妾は先生ではない。ごほん、まず肉体とは魂を入れる器じゃの。そこに魂が入ることで初めて動くことができる。なんでまぁ一度魂がおらんくなれば基本的にはもう還ってはこぬ。」
八咫烏は眼鏡(そこには何もないが)をクイッとあげる動作をして
「植物状態と聞いたことはないか?あれはいっときの間魂が抜けておるだけなのじゃ。じゃから待っておれば魂は還ってくる。じゃがそれは大変危険な行為で器が見つからなくなり還ってこぬことが大半じゃ」
「簡潔に言うと?」
「つまり魂とはその個人を形成する物ということになるかの?」
彼女はよく分からないという顔をしているが八咫烏も少し微妙な顔になっている。
「せんせーよく分かりませんー」
「妾もよく分かってはおらぬ。そうそう、よく蘇りという言葉があるじゃろ?あれは正確には蘇りではない。もう完全に肉体の機能が停止しとるならば魂なんて消えておる。あれを妾たちから見ると器に違う魂を入れているのに過ぎんのじゃ。その方法を使うのなら蘇った後は性格が変わるはずじゃ。じゃから肉体は蘇るが魂は違うので蘇りでない」
(うーーん……まぁ…そんな感じなのか?もっと理解力を勉強しときゃよかった)
「そんで、結び方の違いってなんだ?」
「あっ…忘れておったわい」
八咫烏は羽を頭の上に置き頭を掻くような動作をしたが、ただ頭を撫でているような感じになった。また羽が散っている
「魂に直接繋ぐということは結論から言うと死んでも逃げられないということじゃ。ずっと現世でも来世でも繋ぎ続ける。ずっと消えることのない、もはや呪じゃ……」
彼女は身震いをした。なんでそんな物が繋がっているのか…それを覚えていないのはなんでだ。
など質問がどんどん出てきたが今一番思うのは誰かに見られている気がするということだ。
呪という言葉を聞いてから一気に強くなり動くことができない。
(この感じ……なんか前にもあった気がする……八咫烏ではない、また違うもっと首元を直接触られているような鋭い感覚が)
「おい、大丈夫か?何をそんなに怯えておる?」
(……?八咫烏には分からないのか?ということは隠れるのが非常に上手いか…それとももっと上の存在か……?だがなぜ急にこうなった)
「なんじゃ?妾には分からないとは。ん……?童ちょいと首元見せてみぃ?」
─バチッ
「うおっ…!!」
八咫烏が首元に触れた瞬間、先ほどと同じように羽が弾かれてしまった。だが急に威圧感がなくなり
「ヒュはっ……はぁっはぁっ…………はぁ……」
彼女は倒れ込み深く速く息を吸った。まるで先ほどまで首を絞められて息ができなくなっていたかのように
「童、大丈夫か?!どっどうすればよいのじゃ?ちみっこいやつの世話なんてしたことないし……どうすりゃよいのじゃ?!」
八咫烏はあわてふためき境内をドタバタの歩きまわっている。ところどころ頭をぶつけたり羽が抜けまくっている。その間に彼女は息を整え座りなおした。
「おい、俺はもう大丈夫だ。それよりお前、ぶつけたところは痛くないか?羽も散ってるぞ。大丈夫か??」
「童……!お主優しいのぉ!先程まであんなことになっておったというのに!妾の心配とは!すごいのぉ!」
八咫烏は彼女の声で落ち着きを取り戻し、彼女を羽で包みこんだ。胸毛と羽毛で包まれもふもふしていた。
「ふへっ…もふもふ……へへっ」
何を隠そう彼女、大の動物好きである。幼き頃から動物を怖がらずどんどん近づいて行くような子だったようだ。
時間も忘れて抱擁し気づけば外は真っ暗闇だった。
「なっ!おい童起きろ!もう夜更けじゃぞ!こら、起きんか!」
「ふへっ?んなっ!えっ…?俺何してた?……あー…………どうかこのことは忘れてはくれないでしょうか?八咫烏様」
彼女は顔を伏せそう呟いた。少し見えにくいが耳や顔が真っ赤になっているようだ。
「なんじゃあ、急に様なんて、気色の悪い。まぁ良い今日はひとまず童の家に送ってやろう。感謝するが良いぞ!」
八咫烏は自慢げに話少し仰け反っている。もう少し行ったらこけそうだ。
「ハイ、アリガトウゴザイマス」
「ほんとにどうしたんじゃ?なんだか調子が狂うわい」
八咫烏と彼女は境内を出ると空を見上げた。もうすっかり夜が更けり、星が眩いでいた
八咫烏が彼女を乗りやすいように少し屈んでこちらを見た。
「ほれ、はよう乗れ。ちゃんと捕まらんと落ちるぞ」
「ごほん……はーい、」
「それじゃあ、また明日迎えに行くからの。旅の準備でもしておけ。」
「はーー……いや急すぎねぇか?!」
「もう夜が深い……それは明日詳しく話をしてやろう。さぁ、ちゃんと捕まっていくのじゃぞ!」
最後まで読んでくださりありがとうございます。
今回の話は説明話になってしまって申し訳ない……自分でも速く話を進めたいので頑張って書きます。
それでは前回の小話を、本当は八咫烏の有名な神社にする予定でしたが今は10月ということで島根県の多鳩神社に来ていただきました。
それでは、見てくださりありがとうございました