素性隠しの取り調べ
臆さず言葉を紡ぎ情報学べ されど踏み込みすぎることなかれ その一言が貴方の妖生左右する
「どう生きてきたかぁ……」
(やっべどうしよ。異色の経歴すぎてどう言っても嘘と思われんだろこれ。なんだよ少し前まで人でやってきたのに気づいたら妖魔なっててついに種族まで変わるっておかしいだろ! しかもこれだいぶ端折ってんだぞ)
何も答えずに考え込んでいるからかすぐ目の前まで白目のない暗闇のような瞳が近づいていることに俺は気が付かなかった。
「なぁ……そこんとこどないなっとんの?」
「うぉっ……そっ……そう言われてもな」
さぁどうする。もう猶予はないようだ。
できるだけそれっぽい嘘を並べるか、それとも包み隠さずすべてを話すか。
嘘を言うにしても俺はこの地の常識を全く知らない。言葉の選択を間違えた場合もはや言い訳は通用しないだろう。
すべてのことを言う、これは絶対もっとやばいことになるから論外だ。
(実は元神の信徒で力を身に着けてそれが残ってたので生きられましたってこの状況で信じられると思ってんのか! 俺は信じねぇよ。無理に決まってら)
雪うさぎの黒い視線が体を貫く。じっと動かず俺の言葉を待っている。万事休すか。
雪うさぎが口を開けたその時、視界の片隅でカエンが動く。
──パンッ
「はい、この話は終わり! すまんな烏君、こいつ魔物種のことになると根掘り葉掘り聞く性格なんだよ。ほんと困ったよ。こちらからも謝罪をする。部下がすまなかった。これはうちの教育不足だ。怖がらせたんだからお前もちゃんと謝れ」
小気味良い手の叩く音が部屋に響いたと思うと雪うさぎが少し罰が悪そうに離れた。
「すまない……てっきり言葉が話せぬ術でもかかっておるのかと……」
「阿呆それで怖がらせて警戒されたら聞けることも聞けないだろ。こういうのは話してくれるのを待つのが一番だ。すまんな何かあったか非常に気になることではあるが君のペースでいいからな」
結局カエン自体も俺のことは気になるようだが今はこれ以上干渉してこないようで一安心だ。
これから言い訳を考えんといけんかな。だがそのためには情報が必要だが今のところ情報源はここしかない。
(ならば聞くしかなかろうて。一番のお宝は……)
「すいませんが俺はこの世界のことを何も知らない、だからできるだけの範囲でいいので教えてくれませんか……?」
(どうだ……俺はまだ子供だ。少しというかかなりおかしい状況ではあるが何とか情報を聞き出せないか……これ以上ややこしくするのはごめんだ。これ聞いたことで更に怪しまれるってことは置いとこ)
──ポツッ
「ううぅ……今までよぉ頑張った。生きててくれてありがとうな……もう大丈夫だから安心せぇな」
「えっ……泣いちゃった」
「あぁ……また始まった…………こうなると長いんだよな。重ね重ねごめんな。こいつも親無しでな。うちの師匠に拾われて今はうちの補佐をしてもらってんだが拾われる前に……な。だから同じような境遇の子の話聞くとこうなるんだ」
そう話をする間にも雪うさぎは大粒の涙を流し手からこぼれた涙が地面にしみを作る。
どうやら疑問には思われなかったようで一安心だが俺のような境遇の子が多いことに少しもやっとする。やはりどこでもこの問題は蛇のように絡みつく。
「さて君は何を知りたい? 一般常識ぐらいは持ち合わせているから話せるよ。大丈夫君のことは一切考えないことにしとくから」
少し考え口を開く。
「ではこの世界のことについてお聞かせ願います」
「はは……はっはっは! そうかこの世界か。流石に範囲が広いがまぁ少しずつ話そうか。まずこの世はここ妖魔界そして人間界が主な世界だ。まぁあとは閻魔界という閻魔様が直属で管理してる妖魔なれない死者の国があるがこれは置いておこう。んで人間界で死んだ者は基本は閻魔界で罰もしくは賞をあたえられそれに準じる。なら妖魔界の役割とは、これは人間界で死に恨みや強い後悔など前世に未練を持った者の受け入れだ。だがまぁこんな奴が来るのは滅多にないがな」
情報をまとめると俺が思っていた死後に行く世界である天国や地獄は閻魔界ということになりここ妖魔界とは全くの別のものということになる。
「じゃあ妖魔界の住人はどこから来るのかというとそれは人間界と大体同じ、世代交代で技術や妖術を受け継ぎこの世は回っている。まぁうちのようにただの炎が年月を経て妖魔に突然化けること起こるがな」
つまり基本的に人と変わらないがそこは妖魔、自然現象が命を持つことで発生することもざらにあるようだ。
(あれ……?)
「ということはカエンさんは何歳なんですかっ…………すぅ……」
その言葉を発した途端周りの空気が一気に重くのしかかる。まるで周りをセメントで固められたように指一本動かない。
どうやら地雷を思いっきり踏んだようだ。
(そうだよな! 女性に歳を聞くのは失礼だもんな! 流石に距離感見誤った)
時間にすればたった一瞬であろう。だが呼吸をも許されない緊張感が間を駆け巡る。
緊張でのどが鳴る。ただ俺はカエンが次にどう動くのかを見守る。これが俺が今できるたった一つのことだった。
「と、威嚇してみたものの今回はこのことも話さないとか。いつもなら許さんから気をつけな」
(ふぅ…………どうやら許されたっぽいな)
「何考えてるかはうちには分からんが次は無いからね」
(あっ駄目だったぽい。ちゃんと怖い。つか何で分かるんだよ。神かよ)
「さて年齢の話が出たしそれについて話そうか。とっ、雪うさぎは……うんまだ駄目っぽいな。じゃあ先にうちからだな。早速だけどうち、何歳に見える? 世辞とかはなしで」
見た目的には20代前半、もしかしたら10代の可能性もある。それほどに綺麗、だが幼いとは思えないほどの魅力もある。
「20代前半、もしくは10代後半といった具合ですかね……(年齢当てるの苦手なんだよなぁ……)」
「ふふっ……20代、ね。残念はずれ。やっぱり君がどうやって生きてきたかみっちり聞き出したいよ。正解はね」
そこで俺は一瞬耳を疑うほどの衝撃を食らう。
「うちは今年で230歳、ちなみにあそこの雪うさぎは210歳だったかな。さぁここで問題が生じる。君は何歳って言ったかな。確か……15歳だったかな。ふふっ、君に対しての興味が尽きることはないようだね」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここで前回、いや前々回の小話を、和菓子屋の元祖屋と本家屋。これはある妖怪のゲームからですね。ちなみに自分は本家でした。
もしよろしければ評価もよろしくお願いします。読んでくれるだけで嬉しいのですが嬉しさで咽び泣きます。
それでは次回も是非読んでいってくださいね。




