苦い思い出甘い味
人の心は誰に学ぶ 人の心は人から学べ 人と関わり考え示せ
──ンクッ
「うっ、まじぃ…………味覚手に入れて最初の食事がこれとはついてねぇな……」
口に入れた瞬間広がる油っぽい…というかしょっぱいというか……とにかくものすごい不快な味。
どうせなら初の食事はもっと別の物を食べたかったが。
もっとこう……あのいい匂いの物食べたかった。
「くぅ…………ん? ぐっ……うぉっ、なんだぁ?」
体からこんこんと湧き出し広がる森の妖魔を喰ったときと比べられないほどの妖気。一瞬視界が歪むがすぐに立ち直す。
だが疑問が残る。森の妖魔とさっきのやつは何が違うのか。括りとしては同じ妖魔だがやはり種族の差か?
こいつ強さとしては森のそこらにいた妖魔と左程変わらないし何か理由があるのか。
「なんてな、こんなこと考えても意味ないって分かってんだろ。行くか」
──バサッ
「というのがさっきまであったことなんだがこれで良いですか?」
「ううん……まぁ嘘はついてないようだしな。ええんじゃないか?」
「だかなぁ経歴が経歴やし、それに親無しは一応色々聞くんが決まりや。あ、こっちの話やけ烏の君はもうちょお待っててなぁ」
「そうそう、あっ飴食うか? そこらで買った黄金糖だが味は保証する。美味いよ」
「あ、貰いまーす」
(俺はなんでここにいんだろう)
時は奴を喰い翼を出した頃に巻き戻る。
「……思ったが普通に犯罪じゃねこれ……喰っちゃったから証拠ねぇしええか。たぶんあいつ犯罪者側だし。さぁってそろそろ都観光行くか」
──ピリッ
「っ……誰だ?!」
「あっ……やべっあっ…………えーとぉーハロー」
そこには赤い髪、というより炎のような色と揺らめきを持つ着物を着た女性、
「おい! おまぁあれほど気配消しやっとけって言うたやろ!」
それと一人、物陰に隠れているが白くて長い何かがちらりと見えている。
「あーあ……こんなちみぃ子に痛いことしたくないんやが、おまぁのせいやぞ、カエン!」
諦めたみたいで物陰から姿を現したのは兎の頭を持ち首元がすごいモフモフした女性だ。
えっすごっ……。
「ええじゃろ別に! どうせこいつを連れて帰ればいいんだからよ!」
彼女らの目が変わる。目は鋭くなりすわっている。
俺はあの目を知っている。森で散々見た標的を見つけた獣の目だ。
(やはり狙いは俺か。平和的な解決は望まんようだなぁ!)
──ドンッ
「あれ? 当たったと思ったんだが君速いな!」
「ひぃ……はっや見えんかった……」
先ほどまで俺がいたところに拳が見える。赤い手袋が黒い地面によく映える。
「見えへんのによぉこいつの攻撃避けれたな」
避けたところに白い耳が舞う。
それを認識した頃には胴を正確に狙った一撃が直ぐ側まで迫っていた。
「勘っすね! 霧化!」
──ブワッ
「うわっ前が見えんやないか! お前多才やなぁ。ほんとにただの子烏か?」
危機一髪で避けれたものの攻撃により多少体積が削れた。あとの事は後回しだ。今動ければ問題はない。
この霧は俺だ。この術は相手の視界は防ぐが俺からは逆に良く見える。
「どこだ〜烏君。おい雪うさぎ分かったか?」
「うーん、この霧どうやら子烏君本人ぽくってな。やから気配がありすぎて分からん」
上手くいった。今は霧の範囲を狭くし濃度を濃くしている。初の試みだが上手くできたようだ。
「だかなぁ大人をなめちゃいかんよ君ぃ!」
──ダンッ
「っ……」
カエンと言われていた女性は足を大きく振り上げ勢いよく下ろしその衝撃で霧を散らした。そのまま霧は夜の一部に消えていく。
(足を振り下ろした力だけで散らすのはおかしいだろ!)
おかげで烏に戻っても小さい体がさらに小さくなってしまった。
「お! おったな。んーなんか小さくなったな」
「これはあんたらのせいなんですよ! ばかすか削りやがって」
「それはすまんかった。でも君が素直に来てくれないから、ね。そんで一緒に来てくれる?」
「はっ! そんなナンパじゃ誰もついて行かんよ。お断りだ」
(というか少し思うがこいつらの方からいきなり殴りかかってきたよな? なんだこいつ)
「残念だ。なら……すまんね」
──ゴッ
一応危機察知能力、というか野生の勘は育ててきたつもりだ。そうでもしないとここじゃ生きられない。
もちろん今も気は張っていた。張っていたはずなのに。
「なっ…………いつのま……にっ」
「ごめんなぁ……一応規則なんや。分かってくれへんか?」
視界が傾き薄れゆく意識の中思ったことと言えば白い体と赤い髪が暗闇に綺麗に映えているとかいうどうでも良いことだった。
そして現在、時は黄金糖を貰った時に戻る
(それで、なんでこんなことになってんだよ)
黄金糖の袋を取りながら今の状況を冷静に傍観する。困惑って一周回って冷静になるんだなー。
「だぁかぁら! 菓子と言っちゃあ元祖屋だろ! あそこのつぶあんを食べたら他の所のやつは食えんくなるね!」
「いいや! 本家屋やろ! あそこのこしあんはすげー滑らかで舌触りが凄いんやぞ! こればかりは譲れへん!」
「お前にいつ、何を譲られた! ずっとうちがあんたのわがままに付き合ってんだぞ!」
今は二人の菓子喧嘩を見守り中。
この黄金糖を買った所で揉めてるっぽい。正直言って帰りたい。帰るとこは一応あるし帰りたい。
(帰れるところがあるって素晴らしいんだな。〇〇無いけどネタが一個消えたけど)
ここはどこかの休憩室、らしい。目が覚めるとそこの座敷で寝かされていた。そんで今はソファに座っている。
(まったく、いつになったら終わるんだ……)
──パクッ
黄金糖を口に放り込み一舐め……うっま。
素朴な味というか果物とかの甘みじゃなく砂糖本来の味でほんとに味が口の中でふわっと溶けて馴染んでいく。
(うまぁ……これが初めての食事で良かったぁ。あの男?あれは証拠隠滅のためなんで食事ではない。食事じゃないから)
「おっ、ええ顔しよんな! そんな美味かったか。じゃあこれもやんよ。羊羹ゆうてなとにかく美味いから飴食った後に食べてなー」
白い雪うさぎと言われていた人から竹皮に包まれた羊羹を渡された。
「あっありがとうございまーす(やった)」
「あー、すまんなお前さんほったらかしで……それで一つ提案というかお誘いなんだが……」
「うちらの仲間にならんか?」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここで前回の小話を、眠り草といえば皆様何を思い浮かべるでしょうか? 自分は水色のイメージがあるのですがたぶんモンスターを狩るやつの影響ですね。
もしよろしければ評価もよろしくお願いします。読んでくれるだけで嬉しいのですがまた嬉しさで咽び泣きます。
それでは次回も是非読んでいってくださいね。




