怒り喰らうは暗闇に
怒りをぶつけ喰らう これが獣と言わず何と言おうか 彼の者 妖魔の世に馴染み生き抜き 死んでいく
「がっはっは! さらば苦い思い出たくさんの森! いざゆかんある意味我が故郷の都!」
木の葉から勢いよく飛び出し都の方へ全速力で空を駆ける。
視界の空の星は尾を引き後ろに流れまた前から星が来る。その空はさながら流れ星が流れる星空のようだ。
「……思ったけど急に飛び込んだらあぶねぇし八咫烏にわんちゃんばれるくね? …………ストップ! ストップ!」
─ギギッ……ビタッ
「あぶねぇ……これこそ危機一髪! いや俺が勝手に危機に陥ってるだけだかな! がはは! うん……ふぅ……落ち着け。いったんテンション戻れ。これは深夜テンションか。妖魔にも寝不足ってあるのかな。いや今考えても仕方がないことだろ俺、頭を冷やせ」
こんな真夜中に森とは言え大声出して少し罪悪感があるがある程度頭は冷えた。焦りは禁物、すぐに足元をすくわれる。この森で散々身にしみたことだ。
一応周りを警戒するが周りには暗闇が広がるだけで特に害のあるものはいなそうだ。森に戻りこれからの方針について考える。
「……どうすっかな。ひとまず足を一本隠せばいけっかな? ただのカラスは都中にかなりいた。まぁこの妖魔界にいる時点でただのカラスではないんだろうけど……うーん……どう隠すか」
足を畳んで隠すにしても限界がある。実際畳んでも少し足の先が見えるしずっと足を畳むのは流石に骨が折れる。
「どうしたもんかなぁ……八咫烏に見つかったら何をされるか……十中八九連れ戻されて良くて軟禁、わんちゃん一生太陽の光見れんかもなー、あはは」
笑い事じゃないと思いつつ考える。
考えてみて少し思ったが今までは隠すことに執着していたが隠さなくてもとにかく足が三本に見えなければよいのだ。つまり他の部位に擬態することができればバレないのではないか?
「でもそんな都合がいいもんなんて……あっあるじゃん」
魂時代、といっても肉体を手に入れて一日も経っていないのだが。
霧化により俺は多少白いが透明と言っても差し支えない体を手に入れそれを幾度もなく使ってきた。
もしこれが魂であれば使える術ではなく俺自身が使える術だった場合今も使えるのではないかと。
「元々この術は舎弟も使っていた。だとすれば俺だって使えるだろ。舎弟、俺が取り込んじゃってんだし。それじゃあお久しぶりの霧化!」
──ブワッ
暗い真夜中の中、俺の肉体は空中へ溶け込んでいく。夜のヒヤリとした空気を体全体で感じ取る。
成功だ。仮説の通りこれは俺自身が持っている術のようだ。
舎弟の術をこの体に譲り受けていたことを改めて感じ嬉しく思う。
「おっとっと、これでも都に潜入できはするがバレた時に敵だと思われて大変そうだな。ということは……」
また八咫烏の姿に戻り今度は三足の真ん中の足だけを霧化させる。
うん、ぱっと見は違和感はないはず。だが多少違和感はあるな。
「だとしたら……この足を尻尾の方に移動させて…………うん大丈夫そうだ」
少し肉体を弄り霧状態の足を尻尾に付ける。
これではたから見れば尻尾の先から煙が出ているように見えるはずだ。
妖魔界には電気出す獣やら毒出す蛇……etc。まぁ色々いるし、尻尾の先から炎を出す烏だっているだろ。
「おーし色々したがそろそろ行ってやろうか!」
──バサッ
空を飛び現在都の上空滞空中。
上を飛んでいるだけで都の人々の息吹がひしひしと伝わってくる。音を聞き匂いをかぎ久しぶりに人の営みを肌で感じる。
「ほんと……この都を見たのはあの一瞬だったけどなんかいいなぁ……すげーワクワクする。ある意味お預け食らったようなもんだったもんな」
──タッ
一応見つからないように路地裏に着地する。
そこは暗く湿っており埃っぽい。あまり使われていないことは一目瞭然だった。表通りのきらびやかさとここの暗さに目が少し眩む。
「今はこっちのほうがありがたいがなんか情報ねぇかなー……」
──ピクッ
何か気配を感じる。かなりガタイの良い男で殺気が漏れ出ている。俺が烏だからか何の警戒も無しに近づいてきているのだろう。
(おめーそれを森でやると狩りなんてする前に逃げられるし格上から気付かれて狩られるぞ。狩る側こそ気配消しは練習しとけ)
(おっ近づいてきた。足音は消せるんだな。関心関心。このまま後ろを振り返らずに……)
──ギラッ ──ブワッ
男はナイフを振り落とした。だがナイフ空を切り霧が男の周りに纏わりつく。
うん、ぱっと見た感じは普通の人間とそう変わらない。だが頭に小さいが角があり人間の中でもかなりガタイがいい方ではないか。さすが妖魔。
「はっ? なんだ?! なんだこれ?!!」
「うるせぇ奴だなぁ……喰うぞ(情報聞き出したら喰うけど)」
「は?! お前は誰だ! どっから見てやがる!」
「どっから……うーん、お前の周りの空気かなぁ。この暗闇じゃほとんど見えんだろうけど今お前の周りを漂っとんな」
「はぁ?! 何が目的だゴラァ!」
そういい男は手に持っているナイフを振り回そうとするが俺がガッチリガードしてるので動けていない。
肉体を持ったことにより霧化時も実体がちゃんと物体として干渉できるようになった。もちろん前のようにあまり関われないが体積だけはそこに存在している状態にすることも可能だ。
戦闘方法が広がったぜ。やったね!
「いやいやおめぇが先に攻撃してきたんだろ、正当防衛だこの野郎。いたいけな小烏に手を出しよってそんなんだからモテないんだぞー」
「ただの悪口じゃねぇか!」
「お前モテんのか? お前を選ぶとは見る目がねぇな。まぁそれだったら謝るわ」
「うるせぇ! ぶち殺すぞ!」
「おーこわこわ、んで」
──ギリッ
「かっ……かはっ、あっ……」
「何が目的だ? 返答次第では、ね」
「いっ……言ったら生かしてくれんのか?」
「あぁ、正直にいやぁ逝かせてやるよ」
男は消え入るような怯える声で話し始めた。暗い夜道の中正体が分からぬ者に拘束されるのは恐怖以外の何者でもないだろう。今なんか矢印で刺された気がする。
正直聞き取りづらいがここで殺すわけにはいかんので我慢する。
「……今烏族の種族価値が桁違いで上がってんだ。表向きはこの都の警備の強化とかで集めているが本当は神の、つまりこの都の長様が依頼を出しているんだとさ。なんでも墜ち神を食った奴が居てそいつが今もまだ逃げているから烏を集めて見つけ出し妾の元へ持ってこいって噂さ」
(………………これ俺かぁ……ということはこの状況は周りに回って俺のせいか、うん、うん…………んで墜ち神って舎弟だよな……元より帰る気はないが顔も見せれんくなったなぁ)
目をつむり悲観にくれていたが怯えていた声が止まった。どうやら話し終えたようだがまだ話すことはあるよな。
「それで話の続きは? まだ話すことはあるだろ? 俺を襲った本当の理由は?」
「えっ……いやこれが全ての理由だ……」
元より暗かった路地裏が更に暗く、沈んでいく。息がしづらいのか男は息が上がっている。
だがそんなことは関係ない。今はただこいつから情報を搾り取る、ただそれだけだ。
「ふはっ嘘をつけ、お前はさっき烏の種族価値と言った。おかしいだろ警備の為に集めてんなら傷つけて持ってったりせんし価値を決めるもんじゃない。まるで商品だ。お前さぁ人身売買でもしてるんじゃないか? 十中八九烏が居なくなる前に烏を買おうとする奴が増えて需要が上がったんだろ。さぁどうだ? 当たったか?」
男に重い圧をかけ言葉を引き出す。
今までの神やなんやらに圧をかけられたのが役に立つとは。まさか圧をかける側になるとは思わなんだ。
あいつらとは比べられるほどでもないが今はこれで充分だろ。
(あぁ……思い出しただけで顔が青くなる……怖ぁ)
「あ…………はい……そのとおりでございます。私は人身売買に加担し烏族を売っていました。私はもう二度とこのようなことに加担しません……ですのでどうかお慈悲を……」
「おぉそうだな。全部話してくれたしもう用はない。ありがとうな」
「なっ、なら!」
「ちゃんと逝かしてやるよ。ほら口開けろ」
男の顔が一気に青ざめる。どうやら今回はちゃんと意味が分かったようだ。
俺がお前を逃すことは無いと。
「やっ! 約束が違う! ちゃんと生かして帰してくれる約束だろ!」
「おぉまだそんな元気があったんだな。それはお前がただ勘違いしただけだろ。それに」
首を締め付け無理やり口を開けさせ中に高濃度の毒を流し込む。
「烏族を捕らえる時命乞いがなかったわけではないだろ。命乞いを聞き入れなかったお前の主張をなぜ俺が聞く必要がある? 同種族には何の思い出もないが何も悪くない奴が危険な目にあってんのは少々気に障るんだよ」
「そ……んな…………っ……」
男は眠るように死んでいった。毒素の中に前に見つけていた眠り草を入れておいたおかげだろう。せめてもの慈悲というかなんというか。
初めて会話ができる生き物を殺したわけだが不思議と罪悪感は感じない。
「森での経験か、それとも魂が混ざって倫理観が消え失せたのか……まぁ考えても仕方がねぇな」
──グアッ ゴクッ
ある鬼の男と一匹の烏がいた路地裏は何事もなかったかのように静かに誰にも知られずそこにあり続ける。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここで前回の小話を、意見をすぐに変えることを手のひらドリルといいます。でもそれが翼だったら……というくだらない小ネタです。
もしよろしければ評価もよろしくお願いします。読んでくれるだけで嬉しいのですがまた嬉しさで咽び泣きます。
それでは次回も是非読んでいってくださいね。




