闇を切り裂く瑠璃の色
ここは霧隠れの森 用心して入るべし 幼子入ろうものならば 一生会えぬと思うべし
「んぅ……どこだ、こっちか? あーもうひっさびさに使う器官を当てにするもんじゃないな。分かんねぇ」
──バサッ バサッ
今俺は空を駆けている。飛ぶと歩くより圧倒的に速いし楽である。一応体を得てすぐのはずだが難なく飛べた。
野生の本能として備わっているのか……これはただの仮説だが俺は考えの部分は心は人であるだろうが体や行動原理は動物に近いのかもしれない。
周りは木に囲まれどこまで行っても景色は変わらない。時々風向きが変わったりしてあれよあれよと迷子に。
「あ゙ぁどこだよここ! あー……迷子った。そろそろ文明の風を感じさせてくれやせんかね…………あっ……いいこと思いついた!」
俺には空高く飛べる黒い翼がある。現在空は赤く染まっておりもうすぐ星だって見え始めるだろう。
覚えている限りだと都はかなり発展していた。だとすれば夜になると明かりだって灯るだろう。空高く舞えばここからでも見えるほどには。
「そうと決まれば時間ができたしひとまず狩りかな。腹減った……あーあ、あんなに喰ったはずなんだが。まぁこの短時間で狩れたらラッキーぐらいで思っとくか。」
「…………おかしいよな、これ」
俺の目の前には山盛りと言っても差し支えない量の獲物の山があった。
特に何もせずいつもの感じで狩りをしたはずだったのにいつの間にかこんな量に。
途中で辞めようかと思ったが狩った次の瞬間には次の獲物が現れるものだから本能というかなんというかが働いてしまった。
「いやー食い溜めせんといけんって思っちゃって……なんでかねー…………はぁ……どうしよこれ」
──バッ バサ バサッ
「俺の家はどこだ? つかここどこだよ。運ぶのきちぃよぉ」
今はいつもの木の洞を目指しさ迷い中。
空は雲に覆われ暗く星どころか月さえ見えない。いわゆる真っ暗闇と言える状態だが人だった頃より夜目が利くため危なげなく空を飛べる。
月明かりなど無い空の下、黒い烏が空を飛ぶ。他から見ればそこに何もないように見えることだろう。普通に飛んでいればな。
ある程度は懐にしまっているがこの体じゃそこまで入らない。三つの足の初めての使い道が荷物運びとは締まらないな。
八咫烏ならこの量を一気にしまえたと思うと変な話だが格の違いがひしひしと感じる。
「それはそれとして迷子なのはいけ好かないな。流石に狩ったものは最後まで責任を持つのが筋だと思うんだが、いかんせんこんな真夜中に食べ物持って移動するのは危険すぎる」
そのまま都に行くつもりだったから何も思わなかったがあの洞穴結構木の洞と近かった気がする。
「軽い気持ちで狩りなんてしなければ良かった。あんぐらいの腹減り我慢すればこんなことには……俺ミスったな。ふっ……くそが」
─ピクッ
その時俺の耳が何かに反応した。何か、水が流れるようなそんな音が耳に届く。これは川か?
「川……川といえばあの木確か川に近かったよな? えっまさか一周して帰ってきた? 今は俺の方向感覚のなさに感謝するわ。いや、やっぱ普通に帰れたほうが楽だろ。感謝はするが許しはしねぇよ」
俺は急いでその場に向かう。方向にして二時の方角。
たぶん合っているはずだ。合っていないと困る。
「あっ……あったぁ! いつもの川だ! いやー良かった良かった。ここがどこか分かったんならあとはいつもの通りに獣道を辿れば……」
いつもの場所に帰ってこれたことを噛み締めるために少し高度を落として飛行する。
それにしてもいつもの道にしても何かおかしい気がする。
元々整備されていた場所とはいえなかったが更に木々がでかくなっているように感じる。葉が多く下の方を飛ぶと暗い道が更に暗くなったようで少し見づらい。
その時急に前方の視界が開いた。
視界が広くなり少し驚きはしたがそれより今俺の視線を釘付けにする物が目の前に高くそびえ立つ。
「でっけぇ…………えっ場所間違えたか? でも川周りの探索は全て終わらせたよな。そん時にこんな目立つもんがあったら流石に気づくよな?」
目の前にはこの森の主、いや世界樹と言っても差し支えないようなとにかくでかい木があった。
木の周りは不思議と高い雑草があまりなく寝転がるに丁度いいぐらいの芝生が広がっている。そして心なしか淡い光で包まれている。
幻想的な風景だという感想しかでないほどには綺麗な景色が俺の目の前に広がっていた。
「わぁ……きれー…………いやーほんとこっちの世界に来てからというもの色々あったが綺麗なもんもいっぱい見てきたなぁ……おっとはよこいつら喰って出発するか」
─グァ ングッ ゴク
「ふぅ……あー喰った喰った。あっそういや都目指す途中だったな。どうしよ取り敢えず森の上目指すか。この木伝えば行けるだろ」
飯を喰い休憩するまもなく羽を羽ばたかせて宙に浮く。
── バサ ガサッガサ
木の枝を避け空を目指す。葉にぶつかりはするが飛ぶのに支障がないくらいには葉全体が柔らかい。
さっきは文句を言ったが今は体が小さいことに感謝する。俺の手のひらは回りまくっているところだろう。今俺の手は翼だかな。
─ガサッ バッ
葉を抜けるとそこにはまだ暗い空とある一角の地上で光り輝く街の灯りがあった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
それではここで前回の小話を、皆様は“上を向いて歩こう”という歌を知っていますか? 前回はその歌の一部を入れています。
次回も是非読んでいってくださいね。




