体を心を取り戻す
貴方は誰だ? 俺は俺だ 少しずつ俺は俺の形を取り戻す いつまでかかるか取り戻すまでは分からない だが必ず元に戻る 約束を破らない為に
(ん? 俺どうなっt……ガブッッ! えっ待って死ぬ!」
──バッ ザバァ
「ぜぇ……ぜぇ……死ぬかと思った……えっ俺どうなったっけ?」
俺が目を覚ますと水の中を漂っていた。意識が覚醒すると同時にまた意識を手放し今度こそ死ぬとこだった。
「あの激戦のあとまったく関係ない死因は流石に嫌だわ。溺れる前に意識戻ってきて良かったぁ……」
どうやらいつの間にか湖に落ちていたらしく体はびしょ濡れだ。
周りは最後の記憶とまったく同じで青い水と石の壁が視界に入ってくる。だが逆に言えばそれしか無くコケや蜘蛛の巣など生き物の息吹は感じない
と言っても疲れすぎて記憶がおぼろげすぎて何が何だかほとんど覚えてはいない。
「あー……死にかけたが疲れ……この声は何だ……」
(敵か? そういやあの石の壁そのままだったから出入りし放題じゃねぇか。いやそんなことよりも敵影が無いことのほうが危険だ。どこにいる)
少し呆けていた意識が一気に戻ってくる。急いで周りに意識を集中させ辺りを警戒する。
周りを確認するも何もいない。それに生き物の気配も無い。
魂系かと思ったが魂であっても何かしら空気は動く。だが今は俺の周りには無いも感じない。
(どこだ? どこにいる。今迂闊に動くのは危険だ。声がするということは相手からしたら俺のことが見えていない可能性が高い。下手に動いて相手に位置を知らせるほうがまずい……)
だがやはりどこにも何もいない。可能性とすれば俺よりかなりの格上かそれとも俺が知らない未知の存在か。
少なくとも何かしら良くないことが起こっていることは確かだ。相手を感じ取るまでは周りの警戒を緩めることはできない。
(声がした……えっ待って声がするということは知性がちゃんとある生物じゃね……。ん? …………あーっと……今すんごい嫌な仮説が浮かんできたんだが。いや別に合っていれば嫌では無いんだけどね)
「ぁ……、あ……、あーー、アメンボ赤いなあいうえお…………すぅ……はぁ……すぅ……声が出せる……まじ……? これ俺の声?」
声が石の壁を反響する。
久しく聞いていなかった自分自身の声。体をなくし、話す感覚さえ消えもはや俺自身も忘れていた自分の声。
──ポツン
「あ……? ははっそりゃさっきまで水に浸かってたんだから水滴も落ちるわな…………あっまた垂れてきた。何か……しょっぱいな。ここの水は淡水のはずなんだがな」
舐めると不思議なことに体を伝う水はしょっぱい。まだまだ水滴は落ちていく。
それは本当に湖の水なんだろうか。それとも。
──ポツン ポツン ポツッ
「あぁぁ……良かった…………俺、ようやく元に戻れたんだ。良かったぁ……」
目を閉じ上を向いて涙がこぼれないようにしてもとめどなく涙は流れていく。たった一人の空間で泣き続ける。泣き飽きるまで泣いて少し目を開け天井を見上げる。
だがその時異変に気づく。目と目の間に何かある。しかもそれは俺の意思で動かせる。
(…………ちょっと思った俺の元の体はぎりぎり人だったよな? つか声が出た方に気がそれたが体黒くね? えっ今俺の体どんなの?!)
俺は急いで湖を覗く。今度は落ちないように力をセーブして、今度こそ落ちたら助かる気がしない。
覗き込むとそこには黒い羽毛で覆われた物体がいた。腕をを挙げると翼が動き下を見れば足があるがそれは鋭い爪が生え、それがそれぞれ三つある。
「あっ……ふふっひっさしぶりに見たなぁ。そうかぁちゃんと俺八咫烏から貰ったもの手放なさずにこれたんだな」
そこには一羽の八咫烏の姿があった。体は少し小さい気もするが八咫烏に刻まれた時と変わらない姿がそこにいる。
それだけでたったそれだけで感極まってまた涙が出そうだ。
(いや俺どんだけ泣いてんだよ。涙腺ぶっ壊れたか? 涙腺は元からあるだろ。涙腺だけバグったか? はぁ……泣きつかれた、そろそろ行くか。洞穴の外へ)
俺は外へ歩を進める。自分を確認できた湖に別れを告げて。
しばらく何もない石畳の通路を進むと急に光が差し込んでくる。
常に一定だった風、温度が打って変わって風が吹き暑い気温が頬に体に伝う。
「あぁ……うーーん…………はぁっ。外だ! 俺は帰ってこれたんだ!」
天気のいい晴天の下俺は体を伸ばし空気を目一杯吸い込む。
この行動自体はたまにやっていただがこれまでの感覚とは圧倒的に違う。緑の匂い、獣の匂いが鼻を刺激する。
「いいねー! 体があるって。いや本当に……。くぅ…………。んあ? 何か森とは違う変な匂いすんな?」
久しぶりの感覚を楽しんでいると何やら不思議は匂いがする。香ばしい何かが焼ける匂い。
「これは……! 料理の匂いだ!! いや待ってそうだよな。森にこもりすぎて忘れてたが俺が中心部らしき所からちょっと時間があれば行ける距離にこの森あったもんな」
俺は中心部を目指すため頑張って匂いを辿りその方へ進んでいく。
これで迷子にならず無事辿り着けるかは俺でも分からない。ただ今は久しぶりに使う感覚に身を任せるだけである。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
久しぶりに声が書けて嬉しいです。
ではここで前回の小話を、バッタの記憶は実際に体験した自分の記憶です。暇つぶしには丁度いいんですよね。
それでは次回も是非読んでいってくださいね。




