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人未満が行く化け物探し  作者: 猫烏
妖魔となりてこの世を見る
21/43

生きるか死ぬかの分かれ道

さぁさぁよってらっしゃい見てらっしゃい ここでは一世一代の大勝負 皆様に驚きをお届けいたします どちらが勝つのか分からない ただどちらが勝とうともその道先を 見るか見ないかは貴方次第でございます

(だがなぁー割ときついんだよな。普通にいい攻撃食らったら死ねるし。霧化できる隙ないし)


 「キェエェエエェ!」


 ──ブンッ


(おお……あぶねー、だが別に避けれる程度なんだよな。恐怖感はたぶんバグったままで特にないし。してどうするか)


 攻撃されても怖がらない俺に苛ついたのか少し攻撃が荒い。

 余計避けやすいがこちらからしても攻撃できる(すべ)がないからとりあえずチャンスが来るまで待つ。


(割と詰んでない? 俺どうせいっちゅうねん。んー……)


 やつの攻撃方法はクチバシで突くだけだ。

 これは俺がまだあいつに警戒されてないだけなのかそれともまた別に意味があるのか。

 このまま体力勝負に持ち込んでもいいが体格差的に無理な気がすることもまた事実。おっ……


 ──グアッ ガリッ


「ギェエェ!!」

(ふははっ! 一発あん時の借り(噛み)を返したぞ。俺のことを舐めてもらっちゃあ困るぞ! おもれー!)


 ─ブンッ


 俺の視界の隅から翼が見える。

 それは気分が高揚した俺の気持ちを落ち着かせるどころか死をもたらす一撃だった。

 そのまま翼は俺の体を直撃するはずだった。そう昔の俺ならば。


(だがそうは問屋が卸さねぇ! 俺だって苦労したんだぞ。半霧化!)


 ──ファッ゙ グンッ


(いってぇ……どこが痛いか分からんがなんか痛い。だが生きてはいる! うんおけ!)


 俺は体の下の方だけ霧になった。下半身は消え空気中に溶け込む。

 霧化ができないなら半身を犠牲にすればいいじゃない。泣くぞ……。

 こんなんでも下半身(?)の感覚はあるのだから不思議なものだ。だが今はこれがありがたい!


「キュッ キェャア……」

(どおれ敵が体の中に入る感覚は初だろ! 俺もまさか入るとは思わんかったぞ。そのまま窒息しとけぇ!)


 一部だけ霧化解除とかはできないのでそれは残念だが何かしら体積のあるものが一気に入ってくるのは辛かろう。

 バケモノはのたうち回って俺本体に爪を立てるが俺だって成長してんだからそう簡単には殺られない。だけど死ぬほどではないにしろ結構痛いんだが。

 本当はクチバシを閉じて欲しいがそれをしないのはこれまで生き残ってきた野生の勘を物語る。


「キェァア!」


 バケモノが急に洞穴の壁に俺の体を思い切り擦り付けてきやがり俺はたまらず逃げ出した。ズリズリと嫌な音と自分の身が削れる音が耳に響く。耳ないけど。

 このままやるとここ崩落するぞ。


(ぐっ……いてぇ……擦れたところじゃないぞ。えぐれたぞ。えぐれるもんはないが体積はたぶん減ったなこれ)


 ひとまずまだ体は動く。体が動くならどうにでもなるさ。

 だがどうする。相手はある程度体力は削れたがあくまで体力だ。外傷はほとんどなく倒すまでには至らない。

 それに対して外傷が酷い訳では無いが体積、つまり魂そのものが削れてある意味死が近くにある自分。体力面は問題ないが元々の体格が違うため有利という言葉は使えない。


(何か……何かないか)


 ─ヅンッ


 (ぐうっ……バカスカ穴を開けやがって……お前はもうちょい周りを見ろよ! ん、いやこれ使えるか?)


 ひとまずここだと場所が悪いから奥に逃げたいが……うん、逃げれそうだ。

 俺はバケモノを引き連れ奥に逃げ込む。急に逃げた俺を追いバケモノも釣られて奥へと進んでくれた。


(さぁここで運試し! いい感じの地形に着けるのかそれとも着けずに迷子になり、そのまま不利になった状態で戦闘を再開するか! 勝負の神様よ。俺に微笑んでくれ!)


 右に左に突き進む。根拠など無い。だがただ自分の運だけを頼りに命を賭けて進みゆく。

 暗い暗い洞穴の中感覚で進むとふと光が見えた。気がしただけで光ってなどいないが己の野生の勘が叫ぶ。


(勝負の神様は微笑んでくれたようだ)


 長い長い通路を抜けるとそこは、入ってきたところ意外に逃げ道など無い狭くはないが窮屈な部屋だった。


「キェャキェエェ!」


 そして今バケモノが入り込み出口を塞ぐ。これだとこの無駄に広い限られた場所で戦わないといけず相手に自分のやることを見破られやすい。先程までは狭いからこそあの戦法が取れたが広いとそうもいかない。

 もしここに観客がおれば俺の負けを見越してブーイングの嵐だったところだろう。俗に言う八方塞がりというやつだ。


(傍から見れば、な! ひとまず地面ギリギリで避けまくれ!)


 ──ヅン ヅゥン ヅッヅッ


 頑張って攻撃を避けまくる。時々来る翼に注意しつつ次の避ける場所を確保しつつ避ける。あまり早く避けすぎると次に来る一手のタイミングがずれるから一定のテンポで。

 だがこれ結構きつい。頭も使うしきつい。


(いや、死ぬってこれ! くそぉ……けど結構いい感じではある。どんどん地形が変わってきtあっ……まっずい避けみすったぁあ!)


 ──ドォォォオン


(ぐふうっ……まっ……たく俺に血が通っ……てなくて良かったな……そうだとしたら今頃ここらに赤い絨毯(血溜まり)が広がってるぞ。避けみすって壁に近づきすぎたぁ……出口完全に崩れたぞ)


 クチバシが体にぶち当たり俺の魂はたぶんミリほどだろう。まだ体が保ててるからこの世に居ていいんだろうけど。

 それはそうとして出口は崩れ洞穴内はボロボロになっている。だが目的は達成した。


 ──ゴォォオン ゴン


 目論見通りバケモノは自分で地盤を緩くした場所に体重をかけそのまま開けた穴に落ちた。

 それはもうきれいにそこだけくり抜かれたかのようにきれいに。


「キェッ! ギェェエ!」

(いよっしゃぁあ! 落ちたぁ! ざまぁ! 噛み殺してやるわぁ!)


 このまま窒息させれば? という声もあるでしょう。ですがこれには理由があり、もうすでに体が小さすぎてちょっと厳しいです。たぶん俺の方が死にます。

 とにかくもうあいつは動けそうにない。体がピッタリはまっている。ちょうどいい感じにはまるように頑張って掘ったからな!

 それにこっちも体力が無いがあいつも俺を追って体力が無くなっているしこれはいける。


(死にさらせぇ! そして俺の血肉となれ!)


 ──グワッ ガブ ブチリィッ


 俺は奴の体を噛みちぎり咀嚼する。奴からは血が吹き出し地面と俺の体を赤く染める。

 まだ生きている? そんなの関係ねぇよ。こちらとしても死にかけなんだ、ちゃんと締めてたらこちらが死ぬ。

 動けぬ奴を噛みちぎる。羽が邪魔だが喰えない程ではない。

 声が聞こえる。悲痛な叫びだ。ちゃんと俺の耳には届いているがそんなことは意識の外。右から左に抜けていく。


「ギ……ギェェ…………ギィュエエェエ゙ェ゙エァ!」

(……?!)


 だが俺はある失態を犯した。ある程度削ったらちゃんと奴を締めればよかったと。喰うのに必死で頭まで獣になっていたようだった。

 俺は自分で自分の首を絞めていた。


 ─ドォォォオン ビュンッ


 (がっ……があぁぅ…………あ゙っ……いってぇ……いや痛くない。えっこれ前もあったぞ)


 穴をぶち壊し這い上がってきたバケモノの翼をモロに喰らい俺は吹き飛ばされた。

 だが不思議と痛みはない、だが体はもう動かない。これは……たぶんもう死にかけで感覚器官が動くほどの力がないんかな。いや俺感覚器官あるか知らんけど。

 そんな現実逃避も今終わりを迎えそうだ。目の前には息も絶え絶えだが立っているバケモノ、対して地面に伏せもう動けない俺。

 もう勝負の行く末は決定したようなものだった。

 俺は諦め目を瞑る。視界が暗くなりどうなっているのか分からない。

 最後の最後まで足掻いたがどこか詰めが甘い。だが迷惑かけた八咫烏に顔向けできるくらいには頑張れたかな。ここで死んでも神様に会えるかどうかは知らないが。


 (あれ……もう辞世の句は読み終わったんだけどいつになったらお迎え来るの?)


 なんとなく耳に意識を向けるとバケモノの声が聞こえる。心なしか声が苦しんでいるようにも感じる。


「キェッ……? ギッ……ギエュェッ……?」

(あ……やはり俺に勝負の神様はついてくれたようだな)







 時は梟に連れ去られる少し前、雨降る地でのお話である。


(はぁ……毒出す器官無いと意味ねーじゃん。せっかく攻撃手段増えると思ったのに…………)


 その頃俺は自分の毒への耐性の存在に気づき自分も毒が使えるかもとルンルンになったのも束の間肉体が無いせいで毒が使えずどうしようもないことに気付き落ち込みまくっていた。


(ちょっ……どうにかしてできねぇか! 毒なんて便利そのものじゃん。俺味覚無いし毒きかんし味変わっても分かんねぇよ!)


 その時ピコンと天から天啓が降ってきた。そこでアイディアを閃くこの俺よ。

 肉体がないなら自分の体に毒を染み込ませれば相手が毒を吸い込んでくれるのでは、と。


(俺天才か? よーし早速獲物捕まえ……いんやこんなところに密閉空間ねぇよ。せめてそんぐらいはあったとしても罰は当たらんだろ……泣くぞ。泣けんけど)


 その日はそのまま諦めお試しも何もしないまま実践に入ってしまったがうまくいったようだ。

 毒がどんくらいで効くかもそもそも纏えてるかも分からないかなり勝算の低い賭けだったからこの作戦には乗りたくなかったが勘でいけたようだ。実際俺は今この毒に助けてもらっている。

 これ少しづつ体小さくなるからあんまりしたくなかったぞ。流石に勝算低いから少しでもあげるために賭けを開始したがきついぞこれ。







話は洞穴内、苦しむバケモノを目の前にしているところに時間軸を合わせる。

 もはや体を内側から壊されバケモノは白目をむき泡を吐き動かない。俺が喰らったところから血が流れ俺が倒れ込んでいる場所に流れ込んできている。

 誰が見ても死んだことが分かるほど分かりやすい死に方だった。

 俺は今どうしてるって?流れ込んできている血を飲んどるわ。飲みづらくてしゃーないわ。


(しゃーないだろ体動かんし何か喰わんと死ぬからこれ喰うしか命繋ぐ方法ないしこっから入れる保険はこれしかないんだよ)




 しばらく飲んで這いずれるくらいにはなったがまだ普通に死ねる。

 というわけで殺し合いに勝った唯一でありながら一番の報酬であるバケモノを喰う。いやー勝者の特権だなこりゃ。


 ──ブチッ グワッ バクッ ゴクン






 どんくらい時が経った? 洞穴の中は当然陽の光など届かず時間なんて分からない。

 元から日付なんて分からないから丸一日経ってても分からんけど。

 バケモノを貪り気付けばバケモノは見る影もなくなるほど原型をとどめていない。肉はほぼ無くなり骨も所々消えている。えっ俺骨まで食ったの? 怖っ。

 だがお陰で体力は回復し命の危機は一応去った。もう動ける。体も見た感じ元の大きさを取り戻した。


(だが疲れたな。そりゃずっと動いてたもんな。ほんと化け物で良かったわ。人だったらとっくの前に死んどるだろうよ。疲れたなぁ……)


 出口は瓦礫で塞がれこのままだと俺が出る隙間もない。


(霧化…………。んー……できねぇな。不思議だな体力は回復しきってるはずなのに……だが困ったな出れねぇよこれ……でてぇなぁ)


 だが何か空気の流れを感じる。出口の方では無くもっと奥の方。

 そっちの方を覗くと何か壁に亀裂が見える。うん、力を込めれば壊せそうだ。

 たぶん戦いの中いつの間にかこの洞穴自体にもダメージが入っていたようだ。


 ──ヅ ヅゥン……


 手で少し押すと思ったより簡単に開いた。鈍い音を立て別の部屋が姿を現す。少し冷たい風が頬を伝う。

 俺はその先を目指す。何かあることを確信して。


(ん……おぉ…………凄いなこれ)


 通路の先は青く光る湖だった。どこからか光が差し込み綺麗に光が反射している。

 だがどこか不思議な気配もありふと目線を逸らせば消えてしまうような幻想的な感じもまたこの風景の異質さを刈り立たせる。


(はぁ……疲れた…………きれー……水飲めるかな)


 俺が覗くと同時に黒い物体が湖に映る。それにはでかく牙の生えた口と瑠璃色に光る目がついている。少なくともこの風景には似合わない物体だ。

 だが俺が手を挙げるとそれもまた手を挙げ体を起こすとそれもまた湖から体を起こした。


(あぁ……これ俺だ。ふはっ……そういや俺この姿になってから自分の姿見てなかったな。初めまして俺)


 俺は意識を手放した。


 ──ポチャン……


 そこには黒い物体など無く何か居たのかも分からない。ただ一つ湖に波紋が広がるだけだった。

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