雨の日こそ出会いはある
ポツンポツンと雨が降る それに紛れて誰かの声 人の温かさを思い出す 繋がりとは不思議なものだ
拝啓 顔も分からぬお母さん、お父さん。俺は今寝床だった木の洞がどこにあるか分からず迷子になっております。
現在の天候は晴れ時々曇り、時刻は昼過ぎでしょうか空は暗く陰り太陽が見えないため分かりません。そして今雨が降ったら普通に死ねます。
どうか俺が死なないように天国から見守っててくださいね。
(今勝手に殺すんじゃねぇよってツッコミが入った気がする。いやまぁこの歳になる、てか種族変わったけど……ここまで放置してる親側に責任あるだろ)
とまぁ、現実逃避もこれくらいにしてちゃんと現実を見よう。
現在の状況を簡潔に話すと迷子、曇り、屋根無し。という感じである。
普通の人なら迷子が怖いくらいだろうが俺にとってはこのまま雨が降られる方がだいぶ困る。というかしくじれば死ぬ。
昨日も雨降りましたよね。なんですか、今低気圧でもあるんですか。間が悪すぎだろ。
(この世に神か仏はいないのか……ごめん前言撤回、神いるわ。てか俺元神の使いだ)
俺がそんな感じでさ迷っていると。
──ポツン ポツン
ついに雨が降ってきた。今はまだそこまで降っていないがもうすぐ本降りになるだろう。音だけだと葉っぱに雨粒が当たり綺麗な旋律を奏でている。
(俺に取っちゃあ死の音色なんですが? 俺詰んだかもしれません)
今すぐにでも屋根を見つけないと行けない状況、俺は急いで辺りを歩き回った。だが見つからない。
霧ガチャでわんちゃんに賭けて瞬間移動するかと思ってい始めた矢先建物を見つけた。
田舎のバス停のようなドアが無く屋根だけが付いている簡素な作りだ。だが屋根があるだけでものすごくありがたい。
俺は急いでそこに入った。その時一気に雨が降ってきた。間一髪というやつだ
(ひぇっ、あっぶねぇ……間一髪じゃねぇか。死ぬよ俺。ほんと世知辛い世の中だこと)
今生きていることに感謝しつつ備え付けられていた椅子に身を預ける。雨の音を聞いていると俺はうつらうつらとしていた。
こんな体でも睡眠欲はあるのちゃんとしてるようで何もないと眠くなってくる。
「おい! お前誰だ?」
俺の意識は急に覚醒した。急に可愛らしい声が雨音に混じり響く。
目を開けると目の前に小さい子がいた。歳は四歳ぐらいだろうか。肌は焦げているのか茶色で髪は短く活発そうな印象を受ける。
「無視するな! 質問に答えろ!」
(すまんが俺、声だせないんだ。舌ないから)
「ん? お前化けれないのか? ふふん、俺はもうここまで化けれるんだぞ! すごいだろ!」
──ポンッ
自慢げだが今頭からは耳が生え後ろには尻尾が生えた。どうやら感情の起伏があると化けれないらしい。化け慣れてないとこういうことってよくあるのかね。
うん、可愛い。しかも気づいていないようだ。
「何上見てんだ? んあっ? やっべ耳生えてる?! なんでぇぇ!」
あっ気づいた。すっごいワタワタしてる。尻尾がすんごいデカくなってる。おっ尻尾の方も気づいた。めっちゃ顔赤くなってる。
──ボォンッ
(けむてぇ……目の前が真っ白なんだが。でも外には逃げれんしここで煙落ち着くまで待つしか無いやん)
しばらく経ち煙が晴れてきた。元々その子がいたところには何もいなかった。
だが足元の方を見ると子狸とバッチリ目が合った。
そのまま時間が経過していく。俺も固まってるしその子も固まってる。
傍から見たら魂と子狸が睨み合ってる感じになっているだろう。えっ俺大丈夫かこれ。退治されない? 俺何もしてないですよ。
「きゅうぅ……」
(すっごい不安そうな声したぞ。めっちゃぷるぷる震えてる。えっかわよ。でもこれどうしよう、俺子供の相手苦手なんだけど)
なんか罪悪感を感じつつ俺が子狸と見つめ合いながら考えていると子狸が口を開く。
「おっ……お父さんには言わないで……。絶対誰にも言わな……いで…………お願い……」
(ちょっと可愛すぎない? 元から言う相手もいないし大丈夫だよー。改めて声に出すと悲しすぎない? 声だして無いけど)
俺が同意の意味を込めて首を縦にふると子狸は急にぱあっと表情が明るくなり胸をなでおろした。
そのまま子狸が近づいてきてすぐ隣に寝転んだ。貴方は警戒心という言葉を知らんのか。
すぐ近くに肉体を持つ者特有の体温を感じる。俺とは違い温かい。その体温を感じつつ俺はいつの間にか意識を手放していた。
(んんーー……あれ? 俺いつの間に寝てたんだ?)
気がつくと雨は止んでいた。夕方だろうか空は綺麗なオレンジ色に染まっている。
「んあ? 君だーれ? あっ晴れてるー、やったー」
まだ寝ぼけてるのか子狸はぽやぽやしている。目をこすりながら辺りを見渡し晴れになっていることに喜んでいる。
(俺はただの魂、悪い魂じゃないよ。だから警戒しないでねー)
「あ、君かーおはよー。んーーよしっ、晴れたし俺、そろそろ帰るねー。あっ!」
ん? 子狸は急に声を上げ空を見上げて固まっている。
何か不都合なことが起きたのかと思ったがどうやら違うようだ。子狸の目はキラキラと輝いている。
「ね! こっち来て! 早く!」
(なんか呼んでる……これは行ったほうがいいな。すんごい可愛いな)
俺は急いで子狸の元へ向かった。
そこで俺が見たのは空いっぱいに広がる虹の橋だった。数は一つ二つどころではなく何重にも重なっている。
(すっごい……ははっ…………これはこっちの世界でしか見れん光景だよな)
つい数週間前まで幸せとは言えないが普通の中学生として過ごし化け物になり命の危険に晒され続け帰りたいと思ったこともある。
だがこの世界には知らないことだってたくさんある。生きてていいんだ。生きていけるんだ。
「お前泣いてるのか? どうした、いたいいたい?」
子狸に言われて気づいたが俺の頬には涙が伝っていた。
舌や鼻は無いのに涙を流す器官はあるのだから不思議なものだ、本当に。
──ペロッ
(?!?!! へっ? ほっぺたこいつ舐めたぞ)
「ふふん! お母さんが泣いている子は涙を拭いてやれって言ってた! だから泣くな!」
(こいつかっこよすぎないか? 可愛いとか言ってすいませんでした)
「ははっ! 驚いてるー! じゃあ俺帰るなー!」
赤くなる顔が無いがたぶん赤くなってる俺を置いて子狸は遠くに歩いていった。まぁもう夕方だから妥当だろう。
と思ったら近づいてきた。
「そういや俺のこと何も話してなかった! 俺は化け狸! これからすっごいやつになるんだ! これからもよろしくなー!」
(ん? これからも?)
俺が不思議そうに首を傾けると子狸改め化け狸も不思議そうに首を傾け。
「俺らもう友達だろ? これからも会うに決まってるじゃんか。あ、そっか」
──ポンッ タッ
化け狸は人形になってこちらに手を差し出した。
「ん! お父さんがこれからよろしくってときは握手しろって言ってた! だから手出せ」
俺が小さい手を出すと化け狸はぎゅっと手を握りニカッと笑った。
「俺はお前に俺のこと話した! だから今度会ったときはお前のこと教えてもらうからなー。それまでに化けれるようになってろよ! 約束だからな! それじゃーなー!」
化け狸はそのまま手を振って走って帰っていった。
俺はその背を見守りながら化け狸が木の陰に姿が隠れても手を振り続けた。
いつかまた会える日を夢見て。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
久しぶりにちゃんとした会話を書けて嬉しいです。
ここで前回の小話を、前回の霧化の頭痛はある蜘蛛の設定を参考にしました。よく漫画には探知系スキルがでてきますがそりゃ頭に直接膨大な情報入れたらやばいよなって思いました。
それでは次回も是非読んでいってくださいね。




