霧の中の景色はどう映る
自信を持ち誇りを取り戻し貴方を取り戻せ さすれば次なる道は開かれよう
(んんーー……やっと晴れた)
俺は伸びをし凝り固まった体をほぐす。その体は凝り固まるなんて概念はないけど。
結局あの後丸一日雨がやまず木の洞にずっとこもることになってしまった。もっと広いとこに行きたいがなんだかんだここが落ち着くのだから変なものだ。
雨の中やることも無くぼーっとしてた身からすれば久々の太陽だ。時間があれば日光浴でもしてみたいものだ。
(ま、そんな時間も安全もないんだがな)
不本意ながら時間ができてやりたいことを整理できた。一応目を瞑って、集中……
(霧化!)
──ブワッ
俺が目を開けると元々半透明だった体が透明になった自分だった。完全に透け地面が見えている。
これを見ると本当に死んでしまったような気分になる。
(やっぱこの感覚にゃ慣れんな。とりあえず……はっ……!)
疑問その1、霧はどこまで伸ばせるのか。
ひとまず目に見えないとこまで伸ばしてみる。
どこまで伸ばせているかは分からないがいつまで経っても止まらない。これはどこまでも伸ばせると言って大丈夫だろう。
(これちゃんと戻るんだよな。えっ、体が返ってこずに小さくなったら悲しいぞ)
ちょっと不安になったから早めに切り上げ次の案に移る。
疑問その2、霧の瞬間移動。
霧状態だとこの霧は全部俺なんだからどこからでも出現できるのではないか。
(感覚はいつものパーツ移動と同じ……こう…………ぐっ、と。うん、できん。流石に適当にやるだけじゃ無理だよな)
この霧も体の一部なのだからできる気がするがなぜできない。
仮説としては魂を作る面積が足りない。もしくはまとまった妖気が無いと魂が作り出せないとかだろうか。いずれにしてもやってみれば分かることだ。
こういうときどうするべきか俺は少し前にどうするか学んでる。
(端っこの方に新たに霧の塊を作る……そしてそこに意識ごと移動できるよう願う!)
──ボンッ
俺は気がつくと先程とはまったく違うところにいた。
近くにあったはずの木と川の音は聞こえなくなりその代わりにもう見たくもない小さな祠があった。そこだけ光が差し込み幻想的な雰囲気を醸し出している。
(……成功でいいのか? いやまぁここどこか分からんし出来たんだろうな。…………そんでもう祠には近づきたくないんだが駄目ですかねぇ、あっはい駄目ですか)
意識とは裏腹に俺の足は祠の方に向いていた。そのまま祠に吸い寄せられるように足は祠の方に歩いていった。いやー不思議だなー……。まじで辞めて欲しい。
観念して調べてみると祠はかなり古臭く扉は外れてておりそこに落ちている。中の台座は傾き台座上の像は今にも倒れそうだ。屋根は崩れかかっておりこれでは雨が降るとびしょぬれだろう。
正直言って舎弟の祠の方がきれいだ。今なんか誰かから怒られた気がするから言わなかったことにしてくれ。
(わざわざ呼んだってことはそういうことだよな。はぁ…………分かりやしたよ! 掃除すりゃええんでしょ)
こんな短期間で祠を二回掃除するとは思わなかった。
正直もう関わりたくなかったがこれで帰ったほうがやばいことになる気がするからやる。この世は理不尽なのだ。
まずは祠の修理を……工具なんてないんだが。
とりあえず俺はそこら辺にあった葉っぱで砂埃を掃く。
次に台座を直して像を戻……結構像汚れてるな。
(こういうの見たら綺麗にしたくなるよね……どうしよ、水で洗っていいもんなのか。なんとなくここから離しちゃいけん気がするからやめとくか)
ひとまず俺は手で拭いておくことにした。相当罰当たりな気もするが拭かないよりマシだろう。
(ここにゃ布なんて無いからな。すまんがこれで勘弁してください。これで怒られたらまじで泣きます)
おし、修理は流石にできないができるとこまではできた。
祠はまだボロボロではあるが砂埃は無くなり像も綺麗になった。
俺の手の届く範囲ではあるが先程よりかはマシになったのではないか。
こっちの世界に拝む風習があるかは知らないがせっかくきれいにしたしとりあえず俺は拝んどくことにした。
(これでいいっすかね。どっかの神様。俺はもう行きますね)
俺はそう願いながらその場をあとにした。ご利益は……願っていないと言えば嘘になる。
帰るときふと後ろを振り返るとその祠は霧に巻かれたように忽然と消えていた。不思議なこともあるもんだ。
あそこから離れた俺は霧状態に慣れるため霧となった。ついでにいつもの木に戻って……場所分からん。
いや、こういう時の霧化だろ。とりあえず霧を広げて意識だけを霧の中に溶け込ませる感じで。
──ボワッ
うん、成功したようだ。景色が頭の中に流れ込んでくる
だがもうやめたい。なぜかって? これ頭が馬鹿痛いん…………いやまって洒落にならんぐらい痛いぞこれ。いっでぇっ頭が割れる! まじで割れる! 獣になるときより痛いってこれ! やめだ! やめ!
──シュッ
(はぁ……はぁ、いやきっついぞ。なんか一気に風景が流れてきた。頭割れるかと思った。死ぬわ)
考えてみたがそれはそうだろう。
霧がどこまで広がっているのかは分からないがその霧がある場所の情報が全て一気に入ってくるのだから頭痛くなるのは当然だ。
俺は大馬鹿者です。
(できることもないし今日の飯獲りに行こ……そろそろ腹も減ってくる頃だしちょうどよかったな。いやぁ良くはないな。あんな痛みは二度と味わいたくない)
俺はそのまま狩りへと行くついでにいつもの木を探した。
これがいつもの日常だ。能力を試すついでに狩りをし飢えをしのぐ。いつもの平和とは言えないが変わらない日常。
だがこれで良いのだろうか。このままいつまでもあいつに怯え誇りを取り戻さないで良いのだろうか。
俺は少し疑問に思う。いつまでこの生活を続ければいい。いつになったらあいつに勝てると自信がつく。
その決意ができるまでもうしばらくかかりそうだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
それでは次回も是非読んでいってくださいね。




