その目に希望は映るのか
貴方の瞳はギラリと光り ある一点を見つめてる 自分が何であろうとも その瞳だけは離さない
「すまんかった……妖華。妾がちゃんと確認せんかったばかりに……お主をこんな目に合わせてしもうた。恨んでくれて、呪ってくれて構わない。本当にすまんかった……」
妖華は少し肩を震わせているようだ。
この事態に嘆いているのか。そんなことを八咫烏が思っていると。
「ふ、ふははっ……あっはっは、はっは!」
「よっ妖華どうしたんじゃ?! どこか壊れたか? まずいのう。精神は治せんのじゃが……どうすればいいんじゃっ」
妖華の心は壊れた。
と思っていたがどうやら違うようだ。その獣の目には確かにギラリと光が灯っている。
「何度目だよ、自分を見失うの! いや、精神的にじゃなくて物理的に! 俺どんな数奇な人生送ってんだよ。もはや何も思わんわ!」
八咫烏はポカンとした顔で妖華を見つめている。だが次第に笑顔が出始め手を叩いて大笑いしている。
「はっはっはっ! そうか、そうか! お主はそうよな、どこまでも楽観的の大馬鹿者。だがそんなところが愛おしいと思うのは事実なのじゃ。これだからお主は面白い!」
“そんなところが愛おしいのです”
「……? なんだ今の記憶? あんなことあったっけな」
その時妖華の頭に流れたどこかの記憶。
気のせいかと思うほど一瞬の情景だったが頭に焼き付いて離れない。これは確かに体験した記憶だと妖華は実感した。
「妖華、どうしたんじゃ? どっか痛いとこでもあるのか?」
「いや、何かよく分からん記憶が? それはそうとして俺をこっから出してくれませ……」
妖華はその先の言葉を紡ぐことができなかった。一瞬にして部屋が黒く、暗く変わり八咫烏自身も黒い霧と化した。黄色い目の光だけが妖華の目に映る。
「出ると? お主そんな体で出れると思うたのか? ふふっ、お主よくこれまで生きてこられたな。もはや尊敬の域じゃ」
「……いや、俺は別に混じることは気にしちゃいないからよ。だから出してくれねぇか?」
「ふはっ……お主はそう言うと思うたわい。その希望、おおいに結構。じゃがそれが許されるほどここは優しい世界ではないのじゃ。お主の命は妾が握っておる。分かるな?」
妖華は四肢が動かないながらも八咫烏に向かい合いその藍色の目を黄色い目にしっかりと向けた。
その目には迷いなど微塵もなくギラリと光輝いでいる。
「そんなこと知らねぇ。俺は俺だ。この思い、気持ちだけは誰にも譲らねぇよ。魂が違っても今の俺は俺だけだ。こんな退屈なところで終わる気は微塵もない」
「そうか、そうじゃな…………ふふっ……その思いの強さ、妾の負けじゃ」
「だったら出してくれるか?」
「これだけはしたくは無かったが……仕方ないのぉ」
──バリッ タトッ
八咫烏が獣人型に戻り足を鳴らした。
その音は空間に広がっていった。小さく、だが鮮明にその音は伝わっていった。
──パラッ
妖華を縛っていた縄がほどけその身を縛るものは何もない。だが
「っがはっ……ごぇほっがふっ…………」
瞬きもしないうちに妖華は苦しみだした。その黄金色の腹には赤く爛れた皮膚が見え始め血溜まりのようにそれはどんどん広がっていく。
まるで時間が無いぞと急かすようにその侵食の速さはどんどん上がっていく。
──タトンッ バチッ
八咫烏が足を鳴らすとまた縄が妖華を縛りその症状も治まっていった。
「がはっ……ふぅぅ……がぁうぅ…………」
「これがお主の現状じゃ。今は縄のおかげで進行は抑えとる。だが一度縄が無くなると」
八咫烏は再び足を上げ
「ひゅっ……ちょっ、すいませんでした! 危険性はものすごく分かりました! ですのでそれだけはご勘弁してくれないでしょうか……」
「とまぁ、こうなるわけじゃ。お主の命は妾が握っておる意味が分かったか?ふふっ、一応毒を残しといて良かったわい」
「これ、お前のせいかよ。性格わりぃ」
八咫烏はニヤッと口角を上げ妖華に近づいて行った。
「お主は仏と相手してるつもりかの? 神は強欲なものじゃ。欲を満たすためならば何をしても構わない。なんてったって神じゃからな。その毒はお主が打ち負かしたバケモノのものじゃ。呪うなら其奴にお主を行かせた妾を呪えー」
──シュッ
八咫烏が一瞬にしていなくなると部屋は静寂に包まれた。
「さぁて、こっからどうすっかな。出ようにもあの毒あるし縄もある。さらにはここがどこかも分からない。うーん……詰んだな」
言葉と裏腹に妖華の顔はニヤリの笑いどこか楽しそうだ。
「ふははっ! いいじゃん、面白い……さしずめ‘’神の間からの脱出‘’といったところか。八咫烏が強欲だというのなら、俺も強欲でいこう。俺は負けず嫌いなんだよ」
[ソレでこそワレを倒した我が主だ]
どこからか声が聞こえてくる。だが周りには誰もいないどころか何もない。あるのはただの虚空だけだ。
どうやら頭の中に直接声が響いているらしい。
[ワレは我が主に打ち負かされた祠のモノだ]
「ほーん、んで我が主ってどういうことだ?」
[自己紹介もしていないのにナマエを呼ぶのは失礼かなと……]
「なんか変なところで律儀だな」
声の主は妖華のことを我が主と慕い敬っている様子だ。今のところ敵意はない。
「して、そんな俺をこんな状況にした張本人さんがどうしたんすかー」
[ワレはワレを打ち負かしたモノに付いていきたいだけだ。あのまま地獄に堕ちるところを助けていただいたご恩もある。我が主が望むのならばアナタの為に命をかける覚悟でごさいます]
「いや、お前命ないだろ」
[こう言ったほうが格好がつくと外界にて学んだ]
「それを教えた人はさぞかし大層な人なんだろうな。して、お前は俺に何をくれる? 何を施してくれる?」
祠のモノは少しの沈黙のあと、こう告げた
[ここを出る力と元に戻れる方法だ]
最後まで読んでいただきありがとうごさいます。
それでは前回の小話を、前回の白い部屋はTRPGでよくある部屋を参考にしました。
それでは、次回も是非楽しんでいってください。




