2人の不死身
「大丈夫かい。お姉さん」
俺は自分の知りうる最大級のイケメン風を吹かせて、目を覚ました龍騎士に声をかけた。
俺は彼女が起きるまでずっと横で座って待っていたのだ。
右膝を曲げて立て、左脚は伸ばして。
この座り方はドラマやアニメなんかでよく見る、俺が知る中で最もカッコいい座り方だ。
龍騎士は氷漬けにされていたサイクロプスを見て、明確に驚いていた。
「これは・・・お前がやったのか?」
俺は答えた。
「YES。」
信じられないとばかりに目を丸くする龍騎士。
俺は美女に見つめられ慣れていなく、恥ずかしくなり地面に目を向けた。
「最近知ったんだけど、俺、結構強いんだ。」
鼻の頭を少し掻いてみた。
「そうみたいだな。強い男は・・・かっこいいな。」
龍騎士は透き通った声で静かにつぶやく。
より照れ臭くなり言葉を考えていたが、結局なんていうべきか分からずに俺は少し黙り込んだ。
・・・沈黙の中、口を開いたのは俺だった。
「なぁ。あんた、名前はなんて言うんだ?」
相手はまるでナヨナヨした男のような声で答えた。
「僕はイシヤだ。ようやくお互いにゆっくりできたね。」
「なんか日本人っぽい名・・・」
言いかけて、改めて声の主が男だったことに気がついた。
俺は急いで龍騎士がいるであろう方向を見る。
しかしそこには彼女の姿はなく、代わりに「よろしく」と手を伸ばしている、あの時介抱してくれた男がいた。
「え、あれ?俺の龍騎士ちゃんは?」
「彼女なら向こうで安静にさせているよ。僕の召喚獣が羊でさ。その上なら負担も少なくなるし。」
ほら、と彼は背後を指差した。
「いつの間に来たんだよ。・・・第一なんでこんなところにいるんだ?」
「テガイ領主様に報告したところ、彼らを現場まで案内してくれと頼まれたんだ。」
"彼ら"と呼ばれた集団を見る。
フードのある黒いローブのようなものを纏った3人の人間のようだ。
奇妙なことに全員黒い仮面をつけていて、遠巻きから見ると全体的に黒一色に染まっている。
しばらく眺めていると、彼らのうちの1人が俺の方に向かってきた。
「きみ、名前は?」
中性的な声だ。
「お、オクダケイ・・・ですけど。」
俺が名前を名乗ると、黒装束の人物はぴょんと跳ねて喜んだ。
「わー!無事だったんだ。本当に良かった!」
どうやら俺を探しに来ていたようだ。
「あなた達は誰なんですか?」
俺はその人物に問いかける。
「ワタシたちは特殊部隊の回収班だよ。」
「回収・・・班?」
「そそ、戦争中に転生者が敵軍に囚われたら元も子もないからね。転生者の安否確認と可能な限りの回収をして回っているのです。」
「そうか。俺たちが取られたら困るもんな。」
「まぁ今回の要回収人物はあなたたち2人だから、既に仕事の大部分は終わったんだけどね。」
俺は聞き返した。
「2人?」
「そう、プラチナトロフィー所持者オクダ・ケイとSS級医療スキル取得者イシヤ・チリョウの2人だよ。」
・・・ん?
あいつ、そんなすげーやつなのか?
「で、でも回収まで考慮されているならなんで俺たちは前線に送り出されたんだ?転生者の性能アピールだっていうならもっと安全なところでいいはずだろ。」
黒装束は人差し指を立てて答える。
「死なないからだよ。」
え・・・?
「あなたたちは2人とも、何度斬られようと身体がバラバラになろうと死なないんだよ。」
黒装束は「あ、」と言って説明を補足した。
「正確にはいつかは死ぬけどね。」
俺は驚きのあまり、また言葉を失った。
瞬間的に疑問が浮かびすぎて頭の中がこんがらがっていたからだ。
イシヤについてもそうだが、俺が不死身なことをテガイが知っていたことには驚きだった。
黒装束はまた口を開く。
「ちなみにここだけの話、もしあなたたちが捕虜になっていたらあなたたちごと戦争区域まるまる破壊し尽くして回収する手筈だったよ。捕まらなくて良かったね!」
黒装束はそういうと、竜車の乗車口まで俺を案内した。
・・・テガイが「敗北はせんよ」と言っていた根拠はそれか。
ただ・・・もしそうなっていたら。
もし俺が捕まっていたら生き残った龍騎士や他の人たちは皆殺されていたのか・・・
・・・俺にそんな価値はない、よ・・・
「ともかく、さ。帰ろうか!」
黒装束は人の気も知らずぴょんぴょんと俺たち3人を順番に竜車へ載せていった。
手綱の振れる音とともに竜車はガタゴトと走り出す。
竜車に揺られている中で、俺はイシヤに話しかけた。
「お前凄いやつなんだな。驚いたよ。・・・初めて会った時はブダに囚われていたし。」
イシヤはそれに対して答える。
「僕は死よりも早く回復ができるだけで、不死身ってわけじゃないんだけどね。」
そしてイシヤはそのまま肩を窄める。
「それに戦闘に関する力は0に近いからね。」
イシヤはトホホと自身に呆れるフリをしていた。
「あ、ところで。」
即座にイシヤの顔つきが変わり、先ほどとは打って変わって冷たい目で俺を見てきている。
「きみ、彼女の骨折の手当なんんんんんっにもしてないでしょ。」
初めての長編小説となります。
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