表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/12

敗戦濃厚・・・?



倒れ込んだブダを背に、俺は一言決め台詞。



「終わりがないのが終わり。それが・・・」




しかし俺が一番好きでイケてると思っている台詞を、男の声が遮った。




「なあおいアンタ。大丈夫か?」




先ほどのブダに捕らわれていた男だ。




「見ての通り余裕さ。」




男は心配そうに口を開く。




「それにしてはあんた、膝が震えているが・・・」




俺は自分の高速振動する脚を見るや否や、疲労感にどっと襲われ崩れるようにしゃがみ込んだ。




「ふっ。心配ご無用。俺は天下の・・・プラチナ・・・と・・・ろ・・・」




俺の記憶は一旦ここで途切れることとなった。






次に目を覚したのは、男が俺のことを(ゆす)り起こしたからだ。




「おいあんたもそろそろ起きた方がいい。撤退命令が下された。」




「・・・看病してくれたのか?」




「僕は医学にも精通していてね。・・・それより、ほら逃げるよ。」




寝ぼけ眼で目を擦っていると、大砲のような音ののちに目の前に飛龍が落ちてきた。



撃ち落とされたのだ。




飛龍と共に落ちてきた、兜を被った龍騎士はぐったりと項垂れている。



龍騎士の腕にはアスタリシアの国章があった。




男が龍騎士の元に駆け付けると、ポケットから緊急医療用の止血テープを龍騎士に貼り始めた。




「大丈夫か、あんた。」




すると龍騎士は男と俺の方を見ると、女性的な声で震えながらに答える。




「逃げ、ろ・・・。そして、テガイ様かショギョウ公卿(くぎょう)に伝えろ・・・。アスタリア軍は壊滅的、だ・・・。飛龍隊空挺部隊、全滅。地龍隊特別部隊も混乱で戦況不明だが、確認できる範囲で重傷者、死者多数。ハナヤ海峡最西地点まで、前線後退・・・」



俺はやっぱりちんぷんかんぷんだった。



「おい、伝えてやりてえのは山々だが全然覚えらんねぇ!お前は歩けねえのか?」




俺が叫ぶと、龍騎士は手当をしてた男を指差しながら言った。



「・・・お前には言ってない。そこの男だ・・・。」




俺はまた悲しくなった。




「ああ。分かった。止血は終わったが、右腓骨が斜骨折している。僕は行ってくる。プラチナ君、添木をした上で杖の代わりを探してやってくれ。」




プラチナ君と呼ばれた俺はやはり訳わかめだった。




だが、その男の勇ましい表情を見ると聞き返すことはできなかった。




「わかった。ここは俺に任せろ。・・・死ぬなよ。」




俺は男に親指を立てた。




「馬鹿かお前らは。私は2人ともに逃げろと言ったのだ。敵はバケモノそのものだ。お前のような新参者では太刀打ちできるはずがない。」



そして龍騎士は一拍ほど置いて、弱々しく俺に言った。




「私を置いて今すぐに逃げろ。」




俺は男の方を見る。




男は親指を俺に立てた。




俺もまた、それに返答する如く親指を立てる。




男はアズ・アスタリア城の方角であろう方向に走り出した。




俺は・・・



少し恐怖で泣きそうになりながらも龍騎士の方を向き、上服を丸めた枕に寝かせた。




「お前、なにをやってる!なんで逃げない!」




龍騎士は叫ぶ。




「うるせー。逃げたいわ。・・・でも、なんか偶々俺つえーみたいだし、だったら今ならなれるかなって思ったんだよ。誰かを救うヒーローに・・・。」




その後恥ずかしくなって、人中の部分に人差し指を置いた。



「なあ、俺治療の仕方とか分からねえ。龍騎士さん、指示してくれ。」




しかし龍騎士は左脚を使い起き上がると、もたれかかりながら言った。




「分かったフリをしていたのか?よう分からん人間性だな。だが、いい。どうせ斜骨折だ。脚に体重を掛けたら添木が有ろうと貫通する。」




「・・・でもじゃあどうやって歩くんだよ。」




龍騎士は静かに答えた。




「ふっ。私は行かないよ。お前が私を守る為に残るなら、私はお前を守るためにそれを振り払う。」




そして兜を外し、紫がかった美麗な目を細めて笑うと、俺にありがとうと告げた後に呪文を唱え始めた。




(あま)御心(みこころ)を抱える始まりの竜よ。我はピリチュアの血。我が全ての生命霊子を捧げる。交わされた契約によりその身、ここに具現せよ。高次元竜・ケシァマガドウ」




彼女の前方には魔法陣が描かれ始めた。




その緑に輝く魔法陣はとても巨大で、立っている場所からでは全貌が見えないほどだった。




魔法陣が出来上がっていく。




俺は龍騎士の方を向いた。




「すげぇ・・・けど、これで逃げたら良かったんじゃない?」




龍騎士は眉をひそめて言った。




「無理だ。この契約は召喚時に私のエネルギーを全て譲渡するというもの。この召喚が終わると同時に私は死ぬのだよ。」




「・・・じゃあ・・・」




「あわよくばと思っていたが、お前に助けられて考えが変わった。私のこの命と引き換えにこの戦争に勝利する。」



「じゃあ・・・」




「すると勝利をもたらしたのは、お前だな。」




「じゃあ!死ぬってのか!?」




「さっきからそう言っているが。」




俺は手を握ると足元にパンチを放った。




地面が割れ、魔法陣の一部が崩壊する。




「馬鹿か!お前の命だけじゃない!この戦争に関わるアスタリシアの人間の命も賭かっているんだぞ!」




「俺はっ!!あんたも含めて全部を救うって、言ってんだ!!」




俺の声が響く。




「お前にできる訳がない!敵は本物のバケモノだ・・・!!」




この時、突如として地面が大きく揺れた。




まるで何か巨大なものが近くに降ってきたかのような音だ。




「ボグァボグァボグァ!あれだけ大きな魔法陣を描けば、見つけてくれと言っているようなもの!」




俺と龍騎士は声の方を見る。




「探したぞ女。龍騎士を全滅する契約だったんだ。給料が減るからよぉ・・・今度は逃げるなよ。」




そこには額に一本のツノの生えた単眼の、まるで山のような男が立っていた。




背丈は俺の5倍程度はある。



テガイ領主よりも更に大きいように見える。




龍騎士は唇を噛み締めた。




「・・・サイクロプス風情が・・・!」





初めての長編小説となります。



是非ブクマやコメント、評価などをお願いします。


また、参考にするためにもダメ出しやアドバイスなどリアルな意見だと嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ