不死身の兵士
「うおおおおおおお!」
・・・勝鬨の声が響く。
「水龍隊歩兵部隊、指定ポイント到達!指示まで待機します!」
騒乱とした空間だ。
音を聞いているだけでもドタバタと忙しなく、目が回る。
「飛龍隊空挺部隊、目標地点上空にて停滞!指示まで待機します!」
そんな中俺、オクダケイはわけも分からないまま竜車に揺られていた。
やがて竜車が止まると、操舵者が声を上げた。
「地龍隊特別部隊、魂兵団を指定ポイントに配備します!」
操舵者が荷台の扉を開く。
魂兵団と名付けられた俺たち、転生者が荷台から降りていく。
一時間ほど密閉されていたからか、外の光が目に染みる。
ほぼ瞑っていたその目をジワジワと開くと、そこでは戦争が起こっていた。
・・・俺はテガイ領主の言葉を思い出す。
「たしかに其方は緊急時における敵国への贈品としての使用が認められている。だがまぁ人身売買を進んでできる不届者は我が城には居らぬ。そこで此方は王に提案をした。」
俺は唾を飲んだ。
「贈品でもある転生者を戦闘に投与してみてはどうか、と。そして王は承諾し、正式にその旨の勅命を出した。」
「それはつまり俺たちが戦争に参加するってことですよね。」
「そうなる。まずは転生者を我が国の国力として見せつけるのだ。もしその戦争に敗北した場合でも敵国は転生者を相場より高く評価し、転生者を贈呈した際は喜んで受け入れるだろう。」
回想している今白状すると、この時の会話は半分ほどしか理解できていない。
「何故なら、敗戦国となった我が国の国力はますます減り反乱のリスクを低下させられる。反面、転生者を受け入れた敵国はより国力を増強させられる。」
「・・・ようは俺たちの価値を示して、釣り上げていけってことか。」
難しい話を要約するのは俺が社会人の時に学んだ術だ。
「そうだ。そして、もし仮に圧勝せしめればそもそも贈品を送る必要もない。転生者は丸々此方の国力として認識される。国内でも転生者を手放さんとする思考が根付くだろう。」
「・・・つまり、勝てば官軍って事だ。」
「負けたら贈品だがな。要するに、利用される道具で在りたくないなら、自身の価値は自身で定めろ、ということだ。」
そしてテガイ領主は続けて言う。
「もちろん此方は全力でサポートする心意気だ。安心しろ。敗北はせんよ。」
どわはははは!と地鳴りを響かせると、俺の背中を叩き去っていった。
「ちなみに、この案を提案したのはあのショギョウ公卿だぞ。」
・・・なんだかんだ良いやつなのかもな。と思いながら、俺は剣を持ち、目の前の騒乱に飛び込んでいった。
「まずは1人目!!」
俺はその剣で目に入った敵の首を思いっきり叩いた。
バキッ!!とした剣の音と共に敵兵が吹っ飛ぶ。
よし!イケる!!
・・・しかし、敵兵は少ししてむくりと起き上がると、剣を構え直し、こちらに突っ込んできた。
なっ・・・不死身とかなのか・・・!?
戸惑う俺だが、答えは直後に判明する。
ないのだ。俺が持っている剣の先が。
木なのだ。俺の持っている剣自体が。
何故か、木刀だったのだ。この騒乱の最中、俺が持っている剣のみが。
「・・・あのやろう・・・」
俺は眼前に迫る敵兵をショギョウ公卿に置き換えて思い切り殴り飛ばした。
初めての長編小説となります。
是非ブクマやコメント、評価などをお願いします。
また、参考にするためにもダメ出しやアドバイスなどリアルな意見だと嬉しいです。