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ブルーレとオクダ・ケイ


「死刑。」


・・・え?


俺は大男の口から、聞き捨てならない単語が聞こえたような気がした。




いやむしろ聞き捨てて、恥もへったくれも全部捨てて逃げるべきとも言える。




大男は俺を指さす。




「死刑。」




そして大男はメイドを指さす。



「死刑。」




突如として告げられた死刑宣告に世界が止まっているようだった。




俺も、メイドも。




そして、大男の従者のような人々も。




「どわはははははは!!」




グラグラと揺れるシャンデリアは、ほぼ逆向きともいえるほどまでそり返していた。



なんだ、今度は地鳴りか?




いや、眼前の大男が笑い声をあげたのだ。



地鳴りをあげた山は笑うのをやめた。




「いや冗談だ。すまない。客人だ。求刑するはずがない。」




俺はほっと胸を撫で下ろした。




メイドもさぞ怖かったろうと目を向けるも、最初から分かっていたかのように汗ひとつ書いてない。



周りの従者も同様だ。




さては、こいつら皆分かってた。




しかし、とにかく王様らしき人物と出逢えた事だ。



メイドの言っていたこととイメージこそ異なるが、そんなものどうでもいい。



俺は片膝を着き、その大男に質問をした。




「お会いできて光栄です。一つお伺いしたいのですが、何故俺・・・いや私はここで寝ていたのでしょうか。いや、何故私はここに召喚されたのでしょうか。あ、いややっぱり何故私たちは処刑されなかったのでしょうか。」



いや、やっぱり・・・などと言っている間に大男は笑いながら口を開いた。




「疑問が多いのも分かるが、いっぺんに質問をするな。まず私が覚えていることから答えてやる。」




俺は膝をついたまま男の話を聞いた。




其方(そち)がここにいたのは此方(こち)がその魂を呼んだからだ。」




リセマラをされている時に耳に入った、降魂とやらの事か。



俺は引き続き静聴する。




「何故呼んだかについては、具体的な情報を明かせないのだが戦力増強の為だな。」




「戦争をする為の人柱ということですか?」




「いやいや、言い方が悪かった。国力の増強だ。」




王様は事細かに説明をしてくれた。



どうやら召魂して呼んだ人材はスキルを有していることが多く、優秀な人が多いらしい。



そして優秀な国民の分母を増やして国の繁栄を目的として適宜(てきぎ)見合ったところに配属させるようだ。




「さて、最後に何故処刑しなかったのか、だが・・・」



俺は生唾を飲んだ。



「逆になんで殺されると思った!どわはははははは!」



俺は先ほどのメイドを指差して言う。



「え?でも・・・そ、そこのメイドさんが・・・」



「メイド?ああ。ブルーレの事だな。ブルーレは色々あって先代から長くこの国で女中をしている。悪政時代の禁忌として語り継がれてきたルールを未だに厳守しているのだ。」



肩の力が抜ける。




「どわははははは!本気で殺されると思ったのか!」




「そりゃもう。死のメッセージ"D"が使われた時くらいには。」




俺も笑いながら答える。




「・・・しかし。」




大男の目付きがハッキリと明確に鋭くなった。




「この国の王だけは未だ悪政を続けている。王の耳にだけは気をつけろ。」




あれ・・・?王じゃなかったの?

え、そんな悪王がまだいるの?




困惑しながらも俺は大男に尋ねる。



「ここでは蔑んだ事を言っても平気なんですか?」




大男は答えた。




「ここは海の近くにある辺境の城だ。王都とは歩けないほどには離れているからな。王はおろか、その従者ですら中々来ることはない。」




来ても私が守るが、と大男は笑って言った。




「さて、身体も万全になったようだし其方(そち)もどこかに配属する必要がある。本来なら軍事状況や経済状況のバランスを見て配属させるんだが、其方の配属場所はもう決まっている。ブルーレ、案内なさい。」



大男はメイドを指差し、メイドは頭を下げる。



「かしこまりました。」



そしてブルーレに連れられて謁見室から外に出ることとなった。



「なぁブルーレさん。あの人は誰なんだ?」




「あの方はこのハナヤ海峡から、反対の山2つまでを()べる領主、テガイ様と言います。」




淡々と返答するブルーレに俺は距離を感じながらも、話を続ける。




「俺はどこで働くことになるのかな。」




「あなたはショギョウ公卿(くぎょう)が指揮を執っている軍隊に配備される手筈です。」




・・・結局軍隊かよ・・・




「到着いたしました。」




ブルーレは一つの扉の前で立ち止まると、その扉を軽々と開いた。




扉はぎぎぎと重そうな音を立てているというのに。




「お待たせいたしました。ショギョウ公卿。こちらが(くだん)の・・・えっと、男です。」




確かに自己紹介してないな。




ショギョウ公卿と呼ばれた人物は何故か面をしている。




「初めまして。今日からお世話になります。オクダ・ケイです。」




ショギョウ公卿は女性的な声で冷淡に言い放った。




「名前がダサい。お前は今日からプーだ。」



「え?」




「聞こえなかったか。お前の名前はプーだ。(こうべ)を垂れろ。プー。」




こうして俺はハニーハントされることとなった。






初めての長編小説となります。



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また、参考にするためにもダメ出しやアドバイスなどリアルな意見だと嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ブルーレとオクダケイがシンプルに面白かった [気になる点] 特になし [一言] 1話に引き続き読みやすさがあります パロディやネタも嫌味にならずにほどよいです
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