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雨宮の主、ノロスボロシャはその眷属達と共に後処理で忙しくなったので見合いはお預けになり、僕達はそのまま暫く宮殿に留まることになりました。


眷属の皆さんの作業量が増えたこともあって、ミシュラさんは料理人として宮殿の厨房に入り大忙し!

チャパさんとテッシモさんは交代制で休んでる眷属の皆さんを笑わせたり、治癒の歌で癒したりしていました。


トンボさんは最初は作業中のノロスボロシャ、様と呼ぶべきでしょうね。ノロスボロシャ様に付いてずっとスケッチをしていたのですが、「こそばゆい。景色でも描いてるといい」と言われ、宮殿の魔除けの利いたポイントで日がなスケッチやクロッキーをしていました。


バミーは暇になって、よせばいいのに作業中にマリシャさんにちょっかい掛けた結果、2日程石化させられてしまい、以後、懲りて「賠償金の足しにする」と補修を手伝っていたタツゾウさんを誘って、宮殿の魔除けの利いたエリアで魔法素材収集をしていました。


マタキチさん達はマリシャさんの子分みたいな立ち位置で作業に加わっていましたね。


僕は怪我が酷かったり、蘇生できたけど後遺症のあった眷属の方々の治療に参加していました。

ノロスボロシャ様の同胞の、ラミアの患者さん達に凄い口説かれてちょっと困りましたが・・


そうして5日が過ぎ、宮殿はすっかり補修されました。


「お前達、よく働いてくれたね。褒美にまずは一晩纏めて相手してやってもいいよ?」


「いやっ、それは参りましたなっっ」


「そういうのはやってない方なんだがね」


「ぬっ、それらをクロッキーする、ということでは?」


「いや~、まぁ精のつく料理なら御用意致しますぞ?」


「オイラ、普通ので大丈夫だよ・・」


全員、気まずさ全開になってしまう愛人候補の皆さんっ。


「お前達っ! 姉様は纏めて相手して下さるというのに何をへどもどしているっ?! 己は只の棒切れと心得ろ!!」


マリシャさん、言い方。


「ふふ、まぁいい。そうだな、妙に慣れてしまったな。興が削がれた。・・今回の見合いは止すとしよう」


どよめく愛人候補の皆さん!


「褒美は取らす。スァクにも悪し様には言わん。帰りは宮殿の転送門を使うとよい。ただし、今夜は晩餐会とする。何も働かず、ゆるりとしてゆけ」


「よし! お前ら、ありがたく休めっ」


「あれまぁ・・」


思ってもみないことになってしまいましたね。


「見合いと言っても愛人だ。慣れ過ぎるってのもよくなかったのかもな。ま、帰りの護衛が無いなら、俺の仕事はしまいだ」


槍の柄を両肩に置いて筋を伸ばしたりし始めるタツゾウさんです。


晩餐会は結局、ミシュラさんとマタキチさん達は支度や接客に参加し、テッシモさんは変わった形の宮殿のオルガンを演奏。

チャパさんは、あまり客がしっかり話を聞いてくれる状況ではないのでコミカルダンスショーをしていました。


バミーさんとタツゾウさんはマリシャさんの絡み酒に付き合わされ、トンボさんは普段顔を隠しているその他のラミアさん達の似顔絵描きをしていました。


リーテ国内の有力な、理性を保った魔物の方々もチラホラ来てらっしゃいましたね・・


僕は昔のダメキャリアを生かし? 色んな来賓の方々等とボードゲームやカードゲームをしたりしていたのですが、相手が相手なのであんまりヒートアップするとロクなことになりそうにない、と、隙を見て遁走し、柑橘のカクテルを手にノロス雨宮の凍えた湿原の見える、少し奇妙で豪奢なベランダに出てみました。


「寒っ、ウォーム唱えようかな?」


「わらわも頼もう」


「え?」


振り返ると、ロングレッグ族の姿のノロスボロシャ様でした。


「じゃあ・・(ともしび)を」


僕はノロスボロシャ様と自分にウォームを掛けました。


「おっかなびっくりで、甘えたような魔法をしている」


「していません!」


「ふふっ」


ノロスボロシャ様は僕と並びました。


「町に戻ればまた婚活か?」


「うっ」


知れ渡っていますね。


「いえ、冒険者に戻るかどうかはわかりませんが・・」


実は普通に治療院の仕事に戻るだろうな、ぐらいしかさっきまで考えてなかったのですが、口が、違うことを話しています。


「母の墓参りにゆこうと思ってます」


「そうか、それもいい」


ノロスボロシャ様はそれ以上は話さず、自分の支配するダンジョンを見詰めていました。


愛人候補達を帰した後、ノロスボロシャは物見の球で町長のスァクと話していた。


「寝起きに見合いを勧めてくると思ったら、お節介だよ」


「自覚は無い? 君は前回の休眠明けの時点で随分力が衰えていた。本来なら、今回の流れ者に取って代わられていたさ。必死さが違うからね」


ノロスボロシャは苦笑した。


「かもしれない、か」


「ノロス。君のダンジョンはもう完成してしまったんだ。完成したダンジョンは環境の異変がない限りもう成長しない、主と共に衰えるばかりだ。この地での君の仕事は終わったんだよ」


「手厳しいな。しかし、そうなんだろうね。多くの娘達をもうけた。上手く巣立てた仔は少なかったが、成体のラミアとして、わらわは役割を終えたか」


「お疲れ。ボクが町長をしている内に君を見送れてよかった。ほら、君って寂しがり屋だし」


物見の球を見詰めるノロスボロシャ。


「では、お前がわらわの最後の夫になってくれるかい?」


「これだよ! 何百年の友情を簡単に反古にしちゃう。君達ラミアのそういうとこ、嫌いだっ!」


「ふふふふ、わかった。ごめんよ、小さなスァク。わらわの友でいてくれて、ありがとう」


「いいってこと! おかげで町長に成れたしねっ」


2人は笑って、永い年月について、語り合っていた。


町に戻って、すっかり友達になった皆ともそれぞれ別れを済まして、仕事の整理もつくと季節は真夏でした。


リーテの夏は比較的涼しいですが、それでも蝉は鳴きます。


僕は馬を1頭借りました。昔の仲間から色々誘われたり「まだ独身かよっ」と手紙でツッコまれたりしていますが、今の目的は1つです。


スァクの町を出て、魔除けの利いた街道を進みます。

あまり急がず旅をしましょう。冒険者ギルドに正式に復籍もしています。


道が、緑の濃い、草いきれの強い、林の側に入って暫くすると、


サァアアァ・・・・


そんな風に吹いて、僕は日除けの、耳カバー付きの帽子を被った頭を上げました。顎紐から汗が1つ、鞍に落ちました。


木陰に1頭、馬が止まっていました。フードを被ったスタイルのいいセクシーな両のロングレッグ族の女性が乗っています。


女性は街道まで馬を進めると、夏用の風抜き穴のあるフードを取りました。であるのですが、この方っ、


「ノロスボロシャ様?!」


「うむ。ダンジョン主を妹に譲ってきた」


「ええーっ?!」


「あの子は未熟だ。創造の余地がある。何も心配は無い」


「そう、ですか・・」


どう理解したらよいやらっ。


「ロディ・サマーファンといったな、わらわはいよいよ暇になった。お前のことをふと思い出したのだ。旅の、案内をするといい」


「いやっ、墓参りにゆくだけですがっっ??」


「それで構わない」


馬を横に並べるノロスボロシャ様。


「マナの薄い所でも大丈夫なんですか?」


「このネックレスに、ラミアとしての力の大半を封じた。ただのロングレッグ族であれば、問題無い」


ノロスボロシャ様は蛇の形のネックレスを深い谷間から取り出してみせました。しまい方っ。


「そう、ですか・・あの、ノロスボロシャ様。特に面白いことはないと思いますが、お好きに、どうぞ」


「ふふふ、わらわのことはボロシャと呼ぶといい。目立たぬ方が良い」


まず、服装をもう少し控え目にされた方がより目立たないかと思われますがっ。


「はぁ。では、ボロシャ様」


「様はいらない」


「ボロシャ、さん?」


「いいだろう」


いいんだ。


「ボロシャさん。じゃあ、行きましょう」


「うむ。馬の旅というのもいい」


「はぁ」


困りました。何の気紛れでしょうか?


でもまぁ、いいか。長い生涯です。こんな方と旅をした時間もあってもいいのかもしれません。


「・・わらわの寿命はあと150年程しかないのだ」


ん?


「えーと、僕の残り寿命も大体そんなもんですが?」


「奇遇だな」


「はぁ」


何だか改めて独特な方ですね。


入道雲の下、大体僕が死ぬくらいまで生きてるらしい方と、旅を始めることになりました。

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