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「よく来た! ロディ・サマーファン先生っ」


町長はわりとレアケースな、小妖精(ピクシー)族の方です。

執務机の上にもう一つミニチュアの執務机やソファが置かれています。

ピクシー族は背中の羽根を出したり消したりできるからか、椅子等には普通に背凭れがありました。


「はい、まぁ・・お初に御目に掛かります。あの、スァク町長(この町はこの方がただの野営地だったこの地で始めたポーション屋が始まり!)。何か御用ですか?」


「うむ、君の話はおおよそ聞いている」


急にミニチュアの執務机の椅子に座り直し、羽根を消し、机に両肘を置いて、手を組み、深刻な顔を作って見せるスァク町長。


ちなみにピクシー族は長命種(500年程生きます)で、寿命が尽きるまで老けるどころか思春期くらいの風貌まで育つとそこで固定されるので、そんなに重厚な感じにはなりません・・


「君は、婚活の達人らしいね?」


「ん?」


何? え??



2日後、僕はスァクの町の東の湿地帯にある不完全な迷宮(ダンジョン)、ノロス雨宮(うきゅう)に来ていました。


魔力(マナ)の強い湿地帯が中途半端にダンジョン化した所に主だけはしっかり納まって、そのまま安定化してしまったやや珍しいパターンのダンジョンですね。


雨季の為、多くは湖や沼になっている湿地には巨大な霜柱のような物がいくつも露出しています。

氷の魔力触媒になるアイスジェムの原石を中心に湿地の水分が固まった物です。


冷たい小雨の中を、僕達は桟橋に似たスァクの町とダンジョンの主との契約で維持されている魔除けの細道を歩いています。


細道の材質はまちまちですが、生きている木の根、蔓、土、岩、氷等で、場所によっては相当大雑把に設置されていて、総じて苔むしたり湿ったり凍ったりで歩き難い代物です。

上位の魔物が契約でおざなりに行っていることなのでこんな物でしょう。


「・・・」


久し振りに重く通気性イマイチな冒険者活動用のローブを着ています。その上からレインコートも着ているから嵩張ること嵩張ることっ。

以前は何とも思ってなかったのですが、一回普通の生活に戻ると違和感結構ありますね。


レインコートのフードにハーフエルフの耳用の横穴カバーも付いているのですが、ハーフエルフやエルフの耳って立てたり寝かせたりと結構動くんですよ。

ここに耳を入れると動かし難くて、ムズムズしてきます。

穴空きの耳栓をしないと撥水革に雨が当たる音がうるさ過ぎますし、したらしたで、音は聞き取り難いですし、市販品なので耳栓のサイズがイマイチ合ってない気がしますしっ。


言っても魔物の出る野外で優雅に傘は差せないワケですが・・


僕には6人の同行者がいました。


「婚活先生よ、解放型のダンジョンでもこんな環境の内部に郷なんてある物か?」


「ええ」


本館で番人をしていたワーリザード、タツゾウさんが護衛として付いてます。土地勘が無いようですが。


「いい雨音ですね! 婚活先生っ。ラララ~」


音楽家のロングレッグ族、テッシモさん。凄い額の借金持ち。日報紙との契約でいらっしゃってます。手記を書くんでしょう。


「これだけあちこちぬかるんでると、スベり放題だね! 婚活先生。アハハハッ」


道化のフェザーフット族、チャパさん。スァクの町の貴族会の宴席で盛大にスベッて主宰の貴族に大恥をかかせて道化ギルドからクビにされています。

貴族会のペナルティかな・・


「いい、やはりいい! 普通の景色に飽き足りてしまっていたんだ、婚活先生」


画家のノーム族、トンボさん。元売れっ子でしたが美術サロンの重鎮達と揉めた挙げ句、高価な古典絵画を蹴破って、収監されていました。

特赦と引き替え、とか?


「おお、あこそにも、いやあっちにもっ、婚活先生、珍しい食材モンスターがあちこちにいますぞ?」


料理人の猿人(ワーエイプ)族、ミシュラさん。特段の理由は無く、料理のアイディアを求め参加。チャレンジャーですねっ。


「よりにもよって蛙人(ワーフロッグ)族を頼るとは・・婚活先生、含む所があるワケではあるまいね?」


結婚詐欺師の蛇人(ワースネイク)族、バミーさん。普通に職業犯罪者ですが、成功率を上げようと、参加させることになったようです。何だかな、と。


それなりのメンバーで、案内がいるというワーフロッグ族のダンジョン内郷を目指し進んでいました。


僕達の目的は、


ダンジョンの主の期間限定の愛人候補を紹介すること!


はい、下世話です。が、雨宮とスァクの町との取り決めで、友好契約の一環のようですね。定期的に行われているようです。


というかですねっ、


「その婚活先生、はやめてくれませんか?!」


僕は僧侶としてのサポート役兼、今回の愛人紹介ミッションのサポート役も担わされていました!


断れなかったっ。住んでる部屋も町の公舎ですし・程無くノロス雨宮の外周部のワーフロッグの方々の拠点の1つ、メジハ郷に着きました。


「水上郷か」


雨季ということもあって、メジハ郷は縄で結ばれたいくつもの浮島に別れた状態で、やはり縄で固定された小さな浮島の上に蔓を束ねた物を敷いた道が最低限度は通されていました。

ワーフロッグの方々は跳躍力の高いのでやたら屋根等に登っている方が多いです。

壁に張り付いてらっしゃる方もそこそこいます・・


タツゾウさんはそんな様子を珍しそうに見ています。ワーリザードも種族によっては水辺を好むはずですが、どうやら陸生種のようですね。と、


「ゲッコォーっ、いつかはどうも! サマーファン先生! うわっ、ワースネイクの方もいらっしゃるのですね・・」


通路の浮島に突然水中から1体のワーフロッグの方が飛び出してきました。

申し訳無いのですが、ワーフロッグを見分けるのは正直難しい所ではありますが・・革製の袖無し&短パンの服のデザイン、体色、声でなんとなく把握できました。


「マタキチさんですか?」


「正解! メジハ郷青年団長兼自警団団長のマタキチですっ! ゲコっ」


僕は治療院の新人研修という名の適性試験の一貫で、ノロス雨宮外周部の郷を一通り回診していました。

新人研修といっても僕1人だったので、今思えば計画的に育成、選抜されていたのかもしれませんね・・


「今日は暖を取って、皆、休ませてもらいたいですが、明日からの案内、よろしくお願いします」


「任せて下さいゲコ! 宿も陸生種用のがちゃんとありますからねっ」


良かった。彼らと同じ基準の所ではちょっと厳しいとは思っていました。

タツゾウさんとバミーさんはともかく、他の愛人候補の皆さんもホッとしてらっしゃるようでした。 早朝、出発です。雨季ですがこの環境の朝です。(みぞれ)が降っていました。


チラっ、と愛人候補の皆さんを見ます。

囚人のトンボさんとバミーさんには位置を把握する魔法道具マーカーチョーカーが付けられています。

皆さんワケありなのですが、どうなんでしょう?


ここのダンジョン主、虹蛇(ラミア)族の愛人というのは簡単なことではないと思うのですが・・

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