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君はまだその感情の名前を知らない
「何故、泣く?」
「──えっ、あれ、」
頬を触って初めてそのことに気がついたように、なんでだろうとこぼし笑うその姿に、胸がざわざわとする。身体の奥がちりちりとして、俺自身の息も重くなる。……心拍数がまた上がっている。こいつと居るときは何故かその頻度が高い。わからない。こいつの表情ひとつで何故こんなにも焦燥感を覚えるのか、ただ「泣くな」と言うのは違うだろう。そう考えた俺自身に首を捻る。他人の感情をどうこうするなんてできるものではないはずなのに、何故だろう、何かをしてやりたくなる。
「えっと、なんで抱きしめられてるの?」
「わからん。
だが……ハンカチ代わりにでもすればいい」
胸の辺りがびしょびしょと濡れて冷たいが、腕の中では抑えきれぬように目尻を下げて震えている。ああ、そうだ。お前はそうして笑っているのがいい。